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子どもの心とからだの健やかな成長をめざして- 心を癒す名人になるワザ -

2015/11/26

第34回 愛教組女性部養護教員研究集会

 愛教組は、県内養護教員と単組(支部)の女性部長の参加のもと、愛教組女性部養護教員研究集会を開催しました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-心を癒す名人になるワザ-」をテーマに基調提案・意見発表・講演会を行い、学習を深めました。

内容

 

基調提案:「養護教員をとりまく情勢と取り組みについて」

 

講演会
【演題】「心で聴こう子どもの言葉、心で観よう子どもの姿~豊かな人間関係を築くコミュニケーション~」
【講師】Kids Firstカウンセリング代表 中本久美さん

基調提案「養護教員をとりまく情勢と取り組みについて」

 子どもたちの心身の多様な健康問題に対し、複数配置校では、養護教員が役割を分担し、状況に合わせて効果的な対応をすることができたという例が多数報告されています。

 養護教員が子どもたちによりきめ細かな対応をするためにも、複数配置の拡大と養護教員にかかわる制度の拡充にむけ、今後もねばり強く取り組んでいきます。

 

 講演会
【演題】「心で聴こう子どもの言葉、心で観よう子どもの姿 ~豊かな人間関係を築くコミュニケーション~」養護教員研究集会
【講師】Kids Firstカウンセリング代表 中本久美さん

 

「むかつく」ってどういう気持ち?

「むかつく!」

 子どもたちはよくこの言葉をつかう。しかし、この言葉に込められた「怒り」とは二次的な感情である。この「怒り」の下にどんな一次的な感情があるのかということに、わたくしたちも、子どもたち自身も、まず気付かなければならない。

 「いやだ」「苦しい」「悲しい」「辛い」「切ない」など、これらの一次的な感情に子ども自身が気付かないことが、自分の感情をコントロールすることを妨げる原因となっている。そのために、わたくしたちは、子どもたちが自分自身の気持ちに気付けるように話を聴く必要がある。

 

まずは、「安心感」をもたせる

 子どもたちに自然な愛情と優しさを注ぎ、一緒に過ごす時間を大人も楽しむことで、「安心感」をもたせたい。

 そのためには、言葉による言語的コミュニケーションだけでなく、身振りや手振り、アイコンタクト、表情、あるいは食事や遊びなど一緒に何かをするといった、非言語的コミュニケーションが欠かせない。安心感があるからこそ、はじめて人の話に耳を傾けることができるようになる。

安心できると、自分を表現できるようになる。

 

「どうせ言ってもむだ!」どう返事をする?

 自分を表現する方法は多様である。否定的な言葉で自分を表現する子どももいる。

 子どもに話しかけたとき、「どうせ言ってもむだだ!」などと否定的な返事をされた場合には、次の順で言葉をかけていくとよい。

 一 繰り返す

  「言ってもむだだと思うんだね」

  子どもの言葉をそのまま繰り返す。

 二 言い換える

  「話したくないんだね」

  子どもの言葉を、同じ意味の別の言葉で表現する。

 三 気持ちを汲む

  「わかってくれないって思うんだね」

  発言の奥にある子どもの感情を子どもに示す。

 この三つを「能動的な聴き方」と言う。子ども自身が自分の問題を見つめて解決することにつなげる聴き方である。子どもは、こちらからの言葉がけに応じることによって、自分の気持ちを客観的に振り返ることができる。

自分自身の気持ちに気付くことで、自分の問題を見つめることができ、解決にむかって考えられるようになる。

 

「わたしは」を主語に

 子どもたちに、こちらの気持ちを伝えるためには、安心できる場で、ある程度時間をかけることが大切である。そして、どんなときも気をつけたいことは、「わたしは」を主語にして話をすることである。

 「あなたは」を主語にすると、「あなたは遅い」など、問題が子どもにむけられる。そのため、子どもは「叱られた」「馬鹿にされた」と感じてしまい、こちらの気持ちが正しく伝えられない。しかし「わたしは」を主語にすると、「わたしは、あなたが遅いと心配なんだよ」と、相手に自分の思いを伝えることができる。

 相手が自分を理解してくれると思うことで、もっと理解してもらいたい、もっと伝えようという気持ちになる。

 

子ども自身が「わたしっていいな」と思えるように

 「何かあったら言ってね」ではなく、何かあったときに、いつでも何でも言えるような関係を築いておくことが大切である。

 こうした安心感のある関係の中で、自分の気持ちを表現していくことで、自分自身を理解し、受け入れられるようになる。また、「できないことがある自分はいけない」と思わせないようにすることも大切である。

できること、できないこと、全部を含め、「あなたっていいな」と伝え、肯定的な自己理解の形成を促すことが必要である。

 

自分を大切だと思う子は・・・

 自己肯定感があって、はじめて他者を受け入れることができる。他者とのかかわりの中で、自分が必要とされていると感じると、自分は価値ある人間だと思えるようになる。

自分を大切だと思っている子どもは、周りの子も大切だと思える。

 

この子の力を信じる

 子どもとのかかわり方を理解してはいても、いつもうまくやり取りができるとは限らない。しかし、常に、どの子も大切な存在であるという思いをもち、そして「この子には力があるのだ」と信じて、話を聴くことが重要である。

だれもが大切な存在であると認識しつつ、子どもの可能性を信じ、「能動的な聴き方」で話を聴くようにしていくことが大切である。そして、聴くことによって子どもたちが安心でき、自分自身で問題解決の方法を見つけられることにつながるのである。

 

 

 

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子どもの目は輝いていますか -第65次

2015/10/18

 特別集会では、早稲田大学文学学術院教授の喜多明人さんを講師としてお招きし、記念講演、参加者との意見交流を行いました。
 喜多さんからは、「子どもたちの健やかな成長をめざして 子どもの目は輝いていますか -子どもにやさしいまちと学校づくりのこれから-」と題してお話をいただきました。本集会を通して、子どもたちの健やかな成長のために、学校・家庭・地域が連携して教育活動を推進していくことの重要性を改めて確認し合うとともに、今後のめざすべき方向性についてご示唆をいただきました。

 記念講演
 意見交流 

記念講演:  子どもたちの健やかな成長をめざして
    子どもの目は輝いていますか -子どもにやさしいまちと学校づくりのこれから-
講   師:早稲田大学文学学術院教授 喜多 明人さん

子どもの目の輝き 

 わたくしは以前、フィリピンからの帰国子女である女子学生の「日本の子どもたちの目は、輝いていない」という発言に大きな衝撃を受けたことがあります。講師喜多先生

 彼女がフィリピンからの帰国後、転入した公立中学校での掃除の時間、みんながきれいなところで快適に過ごせるよう一生懸命に掃除をしていたところ、周囲の子どもたちからの視線が少しずつ変化し、よそよそしくなったそうなのです。その原因を聞いてみると、周囲の子どもたちに「掃除を一生懸命やること」が「内申点稼ぎをしている」と思われていたからだそうです。フィリピンでは、多くのストリートチルドレンが、生活は苦しくても日々の生活をよくするために、いきいきと今を過ごしており、そのような姿を彼女はみてきたとのことです。彼女が「日本の子どもたちの目は輝いていない」と感じた理由は「ストリートチルドレンの目は生きていた。『自分で生きる』という輝きがあった。でも、日本の子どもたちの目は自分自身で生きているという感じがしなかった」からだそうです。

 そこからわたくしは、「子どもたちが『自分自身で生きている』という目を本当にしているかどうか」という視点を、日本の子どもたちの現状を考える出発点にしようと考えたのです。

 

 

自分に自信のない日本の子どもたち資料

  【資料】で示した内閣府の「子ども・若者白書」からは諸外国と比べて自己を肯定的にとらえている日本の子どもたちの割合が低いことがわかります。欧米諸国では自己を肯定的にとらえている子どもたちの割合が八割を超えているにもかかわらず、日本の子どもたちは五割以下になっています。とりわけ、日本の子どもたちの自己肯定感は、2000年を越えて急激に落ちてきているようです。日本の子どもたちの自分に対する自信のなさというものが、この統計にはよく表れています。

 

 先日、ある小学校の学校行事を見学させていただきました。教員と保護者と子どもがともに一年間の総括を行うという授業をしていました。その中で気になったことは、教員や保護者の子どもたちに対する評価は九割近くが「よくがんばった」ととらえているにもかかわらず、肝心の子どもたちは、この一年間でがんばって力をのばしたと実感している割合が五割を切っていたことです。大人が思っている以上に、今の子どもたちは、自信をもって生きていないということがわかります。大人と子どもとの間で、なぜこんなにもとらえ方に差が生じているのでしょうか。

 この問題を考えていくヒントがOECDの生徒の学力到達度調査(PISA)での理数系の結果にあります。当時、日本の学力は低下しているのではないかという議論のきっかけとなった調査です。わたくしが注目したいのは、数学や理科の順位が多少低下したことと学力をむすびつけるといった観点ではなく、この調査を行った参加国の中で、日本の子どもたちの意欲がとても低かったということです。「理科が好きですか」などという単純な質問結果と照らし合わせることで「日本の子どもたちは意欲はないけど、結果は出す」という特徴がみられました。

 わたくしが教えている早稲田大学の学生も同じように自己肯定感が低く、その割合は60%程度です。早稲田大学に通う学生は、学力調査などでは高い得点をとってきているはずですが、自己肯定感については平均よりは若干高い程度で、欧米諸国には届かないという現状です。つまり、日本の子どもたちは意欲がなくても、親などの周囲の期待に応えてがんばってしまっているということです。

 以上のことから、「周りのためにがんばって身についた力」というのは、自己肯定感に結びつかないということがわかります。自己肯定感というのは、本当に自分のやりたいことを目一杯がんばって、何か一つのことを達成したという経験によって身につくものだと考えます。早稲田大学の学生のアンケート結果からも、自分のやりたいことをこれから見つけたいという学生が圧倒的に多く、やりたいことを一生懸命やってきたという経験が少ないという現状があるようです。自己肯定感が低下している問題が、日本の子どもたちの「自分自身で生きていく力」の向上につながっていかないということが、今の日本の課題であると考えます。

 

自己肯定感と「子どもの参画」

  わたくしは、その課題を解決するための手がかりとして、川崎市の取り組みに注目しています。2002年に川崎市の11歳から17歳の子ども4500人に調査を行ったところ、自己肯定感が高い子どもの割合は、72.9%という結果になりました。これはわたくしにとってたいへん大きな衝撃でした。これだけ高い割合で、自分に自信をもっていることはとてもすばらしいことではありますが、自己肯定感が低いという日本の子どもたちの中で、どうして川崎市だけ、このような結果であったのか、その理由をしっかりと調べる必要があると考えました。

 川崎市は、これまで「子どもの参画」を支援していく事業にたいへん熱心に取り組んできた地域であることがわかりました。川崎市の条例によって、「子ども会議」で考えられたことが市長への提言もすることができるようなしくみもつくられているとのことです。さらに、市の「子ども会議」の下には七行政区ごとの「行政区子ども会議」があります。また、学校単位でも、「学校教育推進会議」というものがあり、学校教育に子どもたちを参加させるしくみがあります。このように「子どもの参画」を学校や地域、自治体などが連携し、全面的にすすめていくことが、子どもたちの自己肯定感を高めていくことと非常に深い関係があるということがわかってきました。

 わたくしは、今の日本の子どもたちには自己肯定感を高めていくことが必要であり、そのためには「子どもの参画」を推進していくことがとても大切であると考えています。

 

エデュケーションの意味

  ある先生から「エデュケーションを『教育』と訳したことは誤訳だった」との話を聞いたことがあります。教育、つまり「教え、育む」と訳したところから、日本の教育が大人主体になってしまったというのです。エデュケーションの本来の意味は、「引き出す」ということだそうです。つまり、子どもが生まれながらにもっている「生命力」や「自己形成力」を引き出すことが本来のエデュケーションの意味になるのです。

 教育はよく植物に例えられます。植物は、同じように水や肥料を与えても、どれも同様に育ちません。それぞれの特性に合わせた育て方が必要なのです。これはエデュケーションの考えに近く、子どもたち一人ひとりに応じて、それぞれの子どもがもっている力を引き出すことが大切なのではないでしょうか。

 わたくしは、今の日本の教育の現状として、指導することに重きが置かれ過ぎている傾向があり、子どもたちは本来もっている力を発揮しにくくなっているのではないかと考えます。これを改善していくためには、「子どもの参画」をすすめることが必要であり、子どもの意思で行動することをわたくしたち大人が支えていくことが大切になってくると考えています。

 

学校を子どもに返そう

  「子どもの参画」をすすめるためには、これまでわたくしたち大人と子どもたちとの関係を、「教える」「育てる」といった指導的なとらえ方をするのではなく、子どもたちが本当に自分の意思でやりたいことを目一杯やれるようにするために、子どもたちへの「支援」や「サポート」を中心としたものに変えていく必要があると考えます。

 北海道の十勝にある札内北小学校は、この考え方をもととした実践に取り組んでいます。この学校では、「子ども参加型」の学校づくりを推進しており、学校の基本的な目標を「子どもたちの自己肯定感の向上」としています。教職員のみなさんは、子どもたちの自己肯定感をいかに高めていくかということに真剣に向き合っています。なぜなら、自信を失い、受け身で自分から動こうとしない子どもたちの実態を何とか変えていかねばならないと、最優先に考えたからだそうです。そして、新たな学校づくりの標語として考えられた言葉が、「学校を子どもに返そう」というものです。「本来、子どもたちには力があり、学校のさまざまな活動は子どもたち自身の力で行える」という考えにもとづき、子どもたちが、自分たちの学校だと心から思えるような活動を増やしていこうという取り組みが始まったのです。

 

「待つ」ことの大切さ

  札内北小学校では、子どもたちの力をどのように引き出し、子どもたちによる能動的な活動をどう支えていったのでしょう。そのキーワードは「待つ」ということでした。しかしながら、親も教員も、「待つ」ということが苦手です。とりわけ、教員は子どもたちにどれだけ指導することができたかということへ意識がむきがちです。そこで、札内北小学校では、子どもたちが自ら考え、活動を始めるのを「待つ」、そして、それを支えていくという実践に取り組んだのです。

 子どもたちが考えた活動を行うために、子どもたちの代表が朝の打ち合わせに参加して教員にさまざまな提案をするそうです。例えば、一見問題のありそうな紙飛行機飛ばし大会などの企画でも、臆することなく提案をしていたそうです。はじめてこの学校に転勤してきたある教員が疑問に思い、他の教員に聞いてみると、「教えられるよりも、失敗から自ら学んだ方が子どもたちにとって本当の力になる。問題の多い企画であっても、子どもたちをサポートしていこう。そこから得るものは大きい」と言われたそうです。この学校の教員のすばらしいところは、問題のある企画であっても、失敗から学ぶことの大切さを重要視して「子ども参画型」の取り組みをすすめていることです。

 このように、子どもたちの意見をできるだけ実現していくことで、「意見を言えば学校が変わる」ということを子どもたちが身をもって実感できることが大切なのです。教員が子どもの意見をその不十分さから簡単につぶしてしまえば、子どもたちは意見を言わなくなってしまいます。子どもたちが自分のやりたいことに対する思いをしっかり言うことができるようになると、自己肯定感の高まりに期待できるようになるのです。そもそも、教えたいという欲は、親も教員もたくさんあります。その欲を我慢することによって、子どもたちが自分から動き出して活動することにつながります。何か困ったことがあれば、相談にのり支えていけばよいのです。しかし、当然失敗も覚悟しなければいけません。「失敗させたくない」「失敗によって傷つけたくない」という思いが強くなると「待つ」ことができなくなります。子どもたちに失敗させないよう常に先を読んで安全な方向へ手を出し過ぎてしまうことで、今の子どもたちの自己肯定感が高まっていかないという状況になっているのだということを考えていかなければならないのです。

 

失敗から学ぶ

  今の子どもたちは、失敗とかつまずきにものすごく弱く、別の表現をすると、打たれ弱い世代とも言うことができるのではないでしょうか。大人にとっては、ちょっとした失敗のようなことだとしても、今の子どもは、自分ではどうしようもない問題に直面したかのようにとらえ、自分で自分を見限ってしまう傾向があり自分自身を守れないのです。守るべき自分が育っていない現状があるとも言えます。この話題については、さまざまな議論になるかもしれませんが、わたくしとしては、子どもたちは、小さい頃からいろいろな経験を通して、多くの失敗をし、いくつもの壁を乗り越えていくことが必要だと考えます。多くの子どもたちが、周りの大人によって過剰に守られ過ぎている傾向があるのではないかと考えます。そのために、子どもたち自身で身につけていかなければならない「生命力」をのばしきれていないと考えます。守るべき自分というのは自分自身で育てるしかなく、それが「自己形成力」であり、その子がもっている「生命力」なのです。やはり、そこを引き出して育てていく、そうした機会を大切にしていくべきなのだと考えます。

 わたくしが各地の教育研究集会などで必ず提言させていただくことがあります。それは、「こう教えたら子どもたちがこんなにのびたという実践報告ではなく、指導を我慢することで、子どもがものすごくのびた、自己成長したという実践報告があってよいのではないか」ということです。教員は「教える」ことが何よりも大切だと思う傾向がありますが、「教える」ことによって子どもの自己成長の機会を奪ってしまうこともあるという観点にも目を向けていただく必要があると考えます。「子どもには、物事を成し遂げる力も意志もある」という認識が大切です。子どもたちがさまざまな問題解決に取り組むときに、どうしても教員は、子どもが失敗することを心配して指導しがちですが、そこをぐっとこらえて「待つ」ことによって、子どもたちが自分たちの力でその問題を解決していくことにつながっていくのです。子どもたちが自分自身の力で解決することができれば、それが「達成感」につながり、「自己肯定感」の向上へとつながると考えます。教員は、困ったときにわかりやすく「教える」プロであると同時に、それを抑えることも一つの役割なのではないかと考えています。

 子どもとともに学校づくりをすすめる札内北小学校の保護者の声を紹介します。この取り組みをはじめた頃は、子どもたちに対する甘やかしだとか、「待つ」支援は教員の単なるサボタージュだなどの声があがったそうです。例えば、子どもたちが自発的に運動会をつくりあげたときにはすごく時間がかかり、「教員が介入した方がよい」との声もあったそうです。しかし、子どもたちだけでいろいろな行事をやりきるという実践の意味がしだいに保護者へも伝わり、理解が示されるようになってきたそうです。「自分たちで、四苦八苦して道をつくってすすみ、夢を大きくもった方が、子どもにとってもよいのではないでしょうか。いろいろな面で今の時代は恵まれており、考えて行動するよりも、親や先生の指示通りに失敗せずにすすみ、困った時にも親が助けてあげることが多いような気がします。子どものためには自主性を尊重し、意見表明や参画をすすめるやり方がとても大切だと思うのです」という感想が寄せられるまでになりました。実はこの感想は、世界でも活躍する、ある女子スピードスケート選手を育てた保護者のものです。その方の教育方針は、子ども自身が自らの意思で自分らしく育っていく、それを周りの大人たちが支えていくと、子どもの力は無限にのびていくというものです。

 わたくしは、世界で通用する人材を育成するためには、「子どもの参画」という考え方はとても大切だと考えます。今の子どもたちは、いろいろな評価のしくみの中で「自分はこの程度だ」とあきらめてしまう傾向、自ら限界をつくってしまう傾向にあります。そういう生き方ではなく、自分が本当にやりたいことを目一杯やっていくことで、さらに力は発揮されるのであり、そうした子どもたちの活動への支援が今こそ求められている時代ではないかと考えます。

 

教員支援・学校支援

  わたくしは、今後の教育のあり方を考えていく上で、「子ども支援」という視点をもった教育論が必要な時代になると考えています。また、そうした「子ども支援」と同時に必要なことが、教員が全力で取り組むことができるようにするための「教員支援」であり、「学校支援」です。子どもの力を引き出すだけではなく、教員の力を引き出し、学校の潜在的な能力を引き出すことは、たいへん重要だと思います。

 一方で、今のいじめ問題や暴力問題に対する学校の対応能力の限界というものも知っておく必要があると思います。今の子どもたちが抱えている家庭環境や生活環境はたいへん複雑化しているといえます。そのような部分に教員がどこまで対応できるかということを考える必要があると思います。こうした問題に対しては、福祉の専門家などと協力・連携しながら、本人への調査や、家庭内の状況も含めて柔軟に対応していく必要があります。しかし、教員の傾向として、問題を抱え込むということがあげられます。子どもたちにかかわる問題を解決するための手段の一つとして、「専門性を開く」という考え方もあるのではないでしょうか。そういう意味からも、福祉や心理の専門家などと協力して、子どもたちへの対応をはじめとした学校づくりをしていく時代になってきているのではないでしょうか。

 わたくしは、川崎市を含め、いくつかの市町において「子ども支援」のシステムをつくるための条例策定にかかわらせていただきました。そうした中で心配に思うことが、「子どもの権利条約」を学校側がどうとらえているかということです。外圧的にとらえていないかと心配しています。学校としても、「子どもの権利条約」などの外からの風を受け入れ、異種専門職との連携・協働をしていくことも視野に入れて考えていく必要があるのではないかと考えます。

 最後に、名古屋市の天白区にある冒険遊び場「プレイパーク」を紹介します。わたくしはまちづくりの原点は子どもたちが一番やってみたいことを実現する場所づくりであり、冒険遊び場のようなところだと思っています。関東にも冒険遊び場はたくさんあります。わたくしも学生を連れてフィールドワークに行くと、子どもたちの目の色の違いに気付かされ、「子どもの目は輝いていますか」というわたくしの今回の問題提起を思い返させてもらう機会となります。冒険遊び場の子どもたちの目を見たときに、自己肯定感を高めることはこういう子どもたちを支えていくことであると再確認させられます。

 現在の学校の中では、子どもたちが自らやってみたいことを支えていく、すなわち「子どもの参画」をすすめていくことは難しい状況かもしれません。しかし、地域からも学びながら、これからの学校づくりにぜひ生かしていただきたいと考えています。

 

意見交流

○ 保護者
 中学生の子どもからは、やる気はないけど結果は出さないといけないという姿勢が感じられることがよくあります。学校の工夫については、いろいろあることがわかりましたが、家庭で何かできることはないのかと考えさせられました。ついつい小言を言ってしまいますが、それでは何も変わりません。家庭でできることでよいヒントがあれば教えてください。

○ 教員
 教員として自分は教え過ぎているのではないかと思いながらお話を聞かせていただきました。教員としても、一人の親としても戸惑うことがあります。それは、子どもが「やりたいことがない」と言う場面です。その場合は、いろいろな機会を与えて、様子を見る方がよいのか、何もしないというのも含めて、自分が好きに使える時間を与えていくのがよいのか、教えてください。 

○ 喜多先生
 やりたいことが見つからない子どもへの対応や、家庭でもなかなかやる気を出すことができなかったり、やる気はないけど結果は出していたりする子どもたちへの対応をどうすべきかという質問をいただきました。その答えとしては、やはり「待つ」ことを原則とすることです。そして、その子の力を信頼するということが大切だと考えます。実際には、個人差があるので、その子が本当にやる気を出したり、あるいはやってみたいことを見つけたりする時期は、それぞれの子どもによって違いがあるとは思います。わたくしは「子どもたちは待てば必ず動き出す存在だ」と思っています。だからこそ、子どもたちのやる気を引き出していくような支援やサポートを中心にすえ、学校でそして家庭や地域においても、そうした居場所や環境づくりをすすめていくことが大切であると考えます。 

 

 

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第65次愛知県教育研究集会

2015/10/18

 愛教組は、10月17日、第65次教育研究愛知県集会を、約2000人の教員や保護者、働く仲間の参加を得て開催しました。

 全体集会の後には、「子どもたちの健やかな成長をめざして」をテーマに特別集会を行いました。特別集会では、早稲田大学文学学術院教授の喜多明人さんを講師としてお招きし、「子どもの目は輝いていますか -子どもにやさしいまちと学校づくりのこれから-」という題目で記念講演をいただき、参加者との意見交換を行いました。

 また、27の分科会では、子どもたちを中心にすえた実践報告と活発な討論が行われました。

 

基調報告より

 

  • 分科会(各科目についての報告は下の表からご覧下さい。)
1 国語教育 文学その他
作文その他
2 外国語教育
3 社会科教育 小学校
中学校
4 数学教育 算数
数学
5 理科教育 物理・化学
生物・地学
6 生活科教育
7 美術教育
8 音楽教育
9 技術教育
 

 

10

 

家庭科教育

11 保健体育 体育
保健
12 自治的諸活動と生活指導 小学校
中学校
13 能力・発達・学習と評価
14 特別支援教育
15 進路指導
16 教育条件整備
17 過密・過疎、へき地の教育
18 環境問題と教育
19 情報化社会の教育
20 読書・学校図書館
21 総合学習

基調報告より

  現在、各学校では子どもたちの健やかな成長を願い、日々教育活動に取り組んでいます。

  これまでの64次にわたる教育研究において、わたくしたちは夢と希望あふれる教育の創造をめざし、子どもたちを中心にすえ、それぞれの学校・地域の特色を生かした、自主的・主体的な教育研究活動を着実に積み重ねてきました。また、保護者への意識調査を実施し、今日的な教育課題を明らかにするとともに、各地域で教育対話集会などを行い、保護者や地域の方々と意見交換をする中で、子どもたちの「生きる力」を育む取り組みについての合意形成をはかってきました。

  さて、現在、国が推しすすめるさまざまな教育改革の波は学校現場にも大きな影響を与えようとしています。とりわけ、次期学習指導要領改訂にむけて検討がすすめられている小学校5・6年生からの英語の教科化については、評価を伴うことなどからも、中学校英語の前倒しや知識の習得そのものが目的となることが危惧されます。また、年間授業時数を70時間とし、現在行われている教育課程に週一時間の英語を追加するなどの方向性も示されていることから、子どもたちへの負担増が懸念されます。今後、子どもたちに求められる力は、単に「英語力を身につける」ことだけではなく、自ら課題を見つけ、考え、判断し、行動することのできる「生きる力」であり、その育成が何よりも重要ではないでしょうか。そのためにも「生きる力」をゆとりとふれあいの中でじっくりと育んでいかなくてはならないと考えます。 

  わたくしたちは、あくまでも学習指導要領を大綱的基準としてとらえ、未来を担うすべての子どもたちのために夢と希望あふれる教育を創造する取り組みを継続し、学校現場からの教育改革を推進していかなければなりません。そのためにも、基礎・基本の確実な定着はもちろんのこと、子どもたち一人ひとりが学ぶ意欲をもち、自らすすんで取り組む質の高い学びを大切にするとともに、人・自然・文化などとかかわり合い、地域に根ざした体験活動を中心にした学習を構築し、学校・家庭・地域の連携をよりいっそう強化し、地域ぐるみの教育を推しすすめていかなければなりません。

  今次の教育研究活動においても、ゆとりとふれあいの中で「わかる授業・楽しい学校」の実現をめざし、「学びの質を追究するとともに、子どもたち一人ひとりの意欲を大切にし、学ぶ喜び・わかる楽しさを保障する教育課程編成活動をすすめる」「学校・地域の特色を生かし、人・自然・文化などとのかかわりを大切にした創意あふれる教育課程編成活動をすすめる」の2点を研究推進の重点として提起しました。わたくしたちがすすめる教育改革は、日々の教育実践を積み重ね、その中で成長していく子どもたちの姿で示すべきものだと考えます。各分科会においては、実践研究の報告をもとにして、活発な議論を展開するとともに、その成果を各単組・各分会にもち帰り、還流をはかっていただくことを大いに期待します。

   また、本日の特別集会では、子どもたちの現状や最近の教育をめぐる情勢をふまえ、「子どもの目は輝いていますか -子どもにやさしいまちと学校づくりのこれから-」と題して、記念講演を行います。子どもたちが自分らしくいきいきと地域社会の一員として生活していくことの必要性や、子どもたちを支える地域に開かれた学校づくりをすすめるために、学校・家庭・地域がいかに連携していくかについて、参加者のみなさまとともに考え、共通理解をはかる場にしたいと考えます。 

  最後になりましたが、この教育研究愛知県集会が愛知の教育のさらなる推進のため、そして何よりも目の前の子どもたちの健やかな成長のために、実り多いものとなることを祈念し、本集会開会にあたっての基調報告といたします。

 

 

分科会    

国語教育(文学その他)

 説明的文章3本と、文学的文章22本のリポートが報告された。目の前の子どもたちの実態を見つめた地道な実践が多く、どのように読む力をつけるべきかについて、報告されたリポートをもとに討論が展開された。 

国語教育(作文その他)

 作文(綴り方)の教育23本と、言語の教育5本、音声表現の教育16本のリポートが報告された。目の前の子どもたちの実態を見つめて、どのような子どもを育てるのか、文字言語・音声言語のよさを生かして、どのような力を育てていくのかについて討論が展開された。 

外国語教育

  「小学校外国語活動」「表現する力を育てる活動」「わかる・楽しい授業」の3つの討論の柱ごとに、小グループによるリポート発表と討論が行われた。その後、各グループで設定された「全体への問題提起」をもとに、全体で討論と意見共有が行われた。
 3つの小グループでは、ポイントカードを利用して英語に慣れる活動を行う小学校の実践や、教科書の基本文にオリジナルの文章を加えてスキットを暗唱する実践などが紹介された。英語で表現したいという思いをもたせるための環境づくりの工夫や、練習の機会を確保するためのICT機器の有効な活用方法についての討論が展開された。 

社会科教育(小学校)

 身近な地域の産業や事象を教材化したり、学習活動を工夫して子どもたちの追究意欲を高めようとしたりした実践が報告された。また、社会に主体的にかかわっていこうとする主権者意識を高めることに取り組んだ実践も報告された。
 討論では、根拠をもとにした対話能力を育成するための具体的な手だてや、社会のさまざまな問題を主体的にとらえる子どもの姿とはどのような姿なのかということについて、熱心に話し合われた。 

社会科教育(中学校)

 子どもたちが主体的に取り組む学習活動のあり方について、歴史上の出来事と現代社会とのつながりをとらえることで学ぶ意欲を高める実践や、世界のさまざまな地域の課題解決を考えることを通して社会参画の意欲を高める実践が報告された。また、身近な地域素材を教材化したり、言語活動を通して、社会に対する見方・考え方を深める実践が報告された。
 討論では、子どもたちが主体的に学習に取り組むための教材化の工夫や、社会参画の意欲を高める学習活動のあり方、社会科で行われるべき言語活動について、熱心に話し合われた。 

数学教育(算数)

 「思考力・判断力・表現力の育成」「わかる・できる指導の工夫」「学び合う力の育成」の3つの柱立てで、実践の報告や討論が行われた。
 子どもが意欲的に学ぶことができるよう問題提示や学習形態を工夫した実践、どの子どもも見通しがもてるようにワークシートを用いたり、○つけ法やヒントカードを取り入れたりした実践などが報告された。どの報告も目の前の子どもを中心にすえ、子どもの力をのばしたいというねらいを感じることができるものであった。

 数学教育(数学)

 「確かな学力の定着」「思考力・判断力・表現力の育成」「学習形態の工夫」「自ら学ぶ力・意欲の育成」の4つの柱立てで、実践の報告や討論が行われた。自ら学び、主体的に取り組む子どもの育成を主眼とした実践をはじめ、グループ学習やペア学習などの学習形態を工夫した実践、数学的活動を通して子どもの自主性を引き出した実践など、多岐にわたる実践が報告された。 

理科教育(物理・化学)

 「子どもの発達段階をふまえた教育課程編成のあり方」「自然概念形成に有効な教材・教具の開発、指導の工夫」「単元における『ものづくり』の扱い方」「基礎・基本の習得と評価のあり方」「子どもたちに理科の有用性を実感させる指導のあり方」の5つを柱立てに、27本(小学校11本、中学校16本)の実践にもとづき、参加者で活発な討議が行われた。

理科教育(生物・地学)

 身近な自然に目を向けさせ教材化する実践、飼育・栽培活動を継続的に行う実践、モデルを取り入れることによって子どもたちに空間概念を養わせる実践、条件や視点を明確にし、共有することで考えを深める実践などが報告された。
 討論では「子どもの発達段階をふまえた基礎・基本を重視するカリキュラムのあり方」「身近にあふれる素材の教材化」「子どもの視点に立った教材・教具の開発」「子どもたちに理科の有用性を実感させる指導のあり方」などについて活発な意見が出された。その中で、科学的な事象を理解するためには、科学的な用語の意味を理解することと、それらを使って表現する力を養うことが重要であることが確認された。また、他領域とのつながりを意識させて、総合的な見方を育てていくことが大切であることも確認された。 

生活科教育

 異学年交流や幼・保・小連携の活動を通して子どもたちの思いや願いを実現していく実践や、遊び活動やおもちゃの制作を通して気付きの質を高める実践、家族の中での自分の役割を考えよりよい生活をつくり出そうとする実践、探検活動を通して地域の自然や人々とのかかわりを深める実践、栽培活動を通して、対象への愛着や自分自身への気付きを深める実践などが報告された。
 子どもたちがいきいきと活動する様子がよくわかる実践が多かった。また、対象と繰り返し対話をしながらかかわることで、対象や自分自身への気付きの質を高める実践も多く報告された。
 生活科を通して子どもたちの自立の基礎が養われていく確かな実践がすすめられていることが感じられた。 

美術教育

 「美術教育を通して子どもたちに伝えたいこと」をテーマに実践報告や討論がすすめられた。
 総括討論では、教員が感じていることや、子どもたちの実態をふまえ、図工・美術教育から何を学ばせるのかという論議を通して、本年度のテーマを深めることができた。
 制作活動中に子どもが感じる不安や悩み、「うまくつくりたい、表現したい」という子どもの思いを受け止め、教員がどのように支援するべきなのかという点について話し合われた。また、子どもたちの将来を見据え、義務教育として小・中がどのように連携し、子どもの表現力を高めていくのか、美術教育では、将来にむけてどんな力を育んでいくのかという論議などを通して、わたくしたち美術教員が常日頃考えなければならない課題を再確認することができた。 

音楽教育

 「音楽表現を高めるためのコミュニケーションのあり方」「子どもの思いや意図を表現に生かすための指導の工夫」をテーマに討論をすすめた。音楽の学習を通して互いのよさを認め合う実践が多く報告され、義務教育九年間を見据えた音楽教育によって培われる「生きる力」について深く考えることができた。
 午前中は、DVDによる実践報告を行った。どの報告も、めざす子ども像を明確にし、教員の工夫を凝らした手だてによって変容していく子どもたちの様子がよくわかるものであった。 

技術教育

 知識や技能を習得し、生活に生かす実践が多く報告された。材料と加工では、ブリッジコンテストを題材とした実践や、加工精度が求められる三枚組みつぎを使った製作活動に取り組んだ実践、地域性を生かし間伐材活用した実践、両刃のこぎりの構造に着目した実践が報告された。また、中学校三年間を通じ、切削原理を追究した実践、模型を使って構造を考えたり、練習材を使って加工技術を何度も体験させたりした実践、問題解決をする際に解決への見通しをもたせ、問題解決能力を育むことをめざした実践が報告された。エネルギー変換では、単元構成を工夫し基礎技能や知識の習得をはかった実践、風力発電装置のプロペラの製作を取りあげた実践、体験的な活動を軸とした授業構想を立てた実践が報告された。生物育成では、校舎の屋上を利用しピーマンの栽培に取り組んだ実践が報告された。情報と技術では、センサーカーを用いて計測・制御の学習に取り組んだ実践、汎用基盤を利用したプログラミング学習などに取り組んだ実践が報告された。技術教育全般では、学習規律の徹底とICT機器の有効活用を意識した実践、他教科との連携を取り入れた実践が報告された。 

家庭科教育

 多くの実践において、子どもの実態を教員が正しくとらえ、子どもたちの生活の中から課題を見つけるということから学びをはじめており、子どもたちが自立していくために必要な能力を育成しようと考えた実践ばかりであった。その中で、現代的課題を解決していこうとESDや防災の視点を取り入れた実践や、最適解にたどり着くためにコミュニケーション活動を取り入れた実践、衣分野において子どもの製作意欲を高めよりよい物をつくるための工夫を追究した実践、食分野において栄養教員と連携したり地域食材に目を向けたりした実践などが報告された。これらをもとに、活発な討論が行われた。 

保健体育(体育)

 「体育でどのような子どもを育てるか、自ら考え行動する子どもをどう育てるか」を大テーマに、次の点を研究主題として、発表・討論が行われた。
 (1) かかわり合いを大切にした授業づくり
 (2) 学年に応じた体力向上と技能習得
 どのリポートにも、仲間とのかかわり方や学年に応じた体力向上と技能習得に関して、さまざまな工夫のある実践が報告された。
 討論では、かかわり方を系統的に見て、それぞれの学年で習得していくべき内容について活発な意見交換がなされた。また、技能習得のためのよりよい指導法などについて、活発な意見が出された。 

保健体育(保健)

 「子どもが生活の主体となるための健康教育」をテーマに、さまざまな健康課題に対応するため、教材・教具を工夫した実践、子どもの主体的な活動を中心とした実践、話し合い活動を取り入れた実践などが報告された。報告を通して、健康に対する意識の高まりや健康課題の解決にむけての実践力が着実に育ってきている様子が感じられた。 

自治的諸活動と生活指導(小学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマとして、活発に討論された。
 子どもたちのよりよい人間関係を築くために、学級や学年、異学年交流を通して活動する実践が多く報告された。また、子どもたちが自分自身を見つめ、自ら課題を見つけて取り組むことで、達成感や成就感を味わい、豊かな人間性を身につけていく実践も報告された。さらに、学校と家庭、地域社会が連携して一人ひとりの子どもを支援していく実践なども報告された。
 これらの実践報告をもとに、子どもたちの活動のあり方や意義、子どもたちの実態のとらえ方、それらをふまえた教員の支援のあり方について熱心な討論が展開された。 

自治的諸活動と生活指導(中学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマに、活発に討論された。
 人権について考える実践や、子どものやる気を引き出すために自己存在感を大切にしている実践、学校行事を生かしながら、個と集団の力を高める活動や生徒会活動、家庭・地域と連携した活動を通じて、子どもの成長をめざす実践が報告された。
 これらの実践報告をもとに子どもたちの実態をふまえた支援のあり方について議論が深められた。  

能力・発達・学習と評価

 わかる喜びや主体的な学習態度を育むための手だてとして、ユニバーサルデザインの視点を取り入れた実践や、タブレット型PCや電子黒板を効果的に活用した実践が報告された。
 また、友だちの意見をよく聞いたり、自分の考えを表現したりできる子どもの育成をめざして、協働学習やグループ学習の場を設けた実践や、キャリア教育を充実させることで子どもの学習意欲を高める実践、地域学習で課題設定や振り返りに思考ツールを取り入れた実践が報告された。

特別支援教育

 「豊かに生きるための力を育む」というテーマのもと、21本のリポートが報告された。
 子どもの教育的ニーズを的確に把握し、学習意欲を高めるような教材・教具を工夫した実践や、子どもの現在や将来の生活に直接結びつく力を身につけさせるための実践、人とかかわる力やコミュニケーション能力を高めるための実践などが報告された。 

進路指導

 基礎的・汎用的能力の育成に重点を置いた、キャリア教育の実践が多数報告された。小学校では、キャリア能力を視点に掲げた防災教育の実践を学年に応じて継続していくことが、子どものキャリア発達に効果的であることが確認された。中学校では、修学旅行や職場体験学習の中で、基礎的・汎用的能力を高めていく手だてが多数報告された。事前・事後指導、系統立てたカリキュラムを作成することが、子どものキャリア発達に効果的であることが確認された。また、各教科・領域の中にキャリア教育の視点を取り入れた実践も報告され、キャリア教育の有効性や汎用性が確認された。 

教育条件整備

 「子どもの学習権の保障のために」を主題に、防災教育にかかわる条件整備や学校におけるユニバーサルデザインにかかわる教育環境整備、教育相談活動の充実にむけた教育条件整備についての実践が報告された。
 地震に対する備えや対応マニュアルの問題点をアンケートによる調査からまとめた実践や、学校の施設・設備に関する実情をアンケートによる調査からまとめた実践が報告された。また、スクールカウンセラーの活用状況と課題についてまとめた実践も報告され、熱心な討論が行われた。 

過密・過疎、へき地の教育

 少人数だからこそできるきめ細かな支援を随所に取り入れた算数や理科の授業実践や、コミュニケーション能力を高めるための実践、地域素材や人材を積極的に活用した実践など、4本が報告された。
 どの学校も、子どもの数の減少や固定化された人間関係のために、人とかかわる力が十分に育っていない傾向がみられるため、自分の考えをもち、伝え合うことで互いの学びを深めたり、人とかかわる力をのばすための工夫をしたりした実践が報告された。また、地域素材を生かして地域の方との交流を増やすことで、コミュニケーション力を高め、地域に愛着をもたせる実践も報告された。いずれの実践も、へき地校の抱える問題点を考慮しながら、小規模校の利点を生かしたり、地域素材や人材を活用したりした実践であった。 

環境問題と教育

 学校や地域の特色をふまえ身近な環境問題から学習課題を構築した実践や、「エネルギー資源」「米づくり」など環境問題に迫る教材・教具、地域の人材を積極的に活用した実践が、小学校から3本、中学校から1本報告された。
 持続可能な社会の実現をめざす中で、子どもたちが環境問題に切実感を抱き、他人事ではなく自分事として学びをすすめ、学校・家庭・地域が連携して行動化を果たしていく積極的な子どもへの変容の様子が詳細に記録・分析された実践が多く発表された。 

情報化社会の教育

 子どもたちにとって身近な問題を扱ったデジタルコンテンツや動画を活用して、情報モラルについての意識や態度を育てる実践が報告された。また、情報収集や整理の方法を工夫したり、相手を意識した情報発信をしたりして、子どもたちが情報活用能力を身につける実践が報告された。
 さらに、各教科の授業でICT機器やデジタルコンテンツを有効に活用することで、学習意欲の向上をはかりながら学習のねらいに迫る実践が報告された。
 助言者からは、各実践において、情報モラルや情報活用能力の育成にあたって配慮すべき点や、ICT機器の活用のポイントについて、具体的な助言を得た。子どもを中心にすえた実践から学び、考えることができ、実り多い分科会となった。 

読書・学校図書館

 どのような手だてで、どのような子どもを育てたいのか、わかりやすくまとめられた実践が数多く報告された。また、物語だけでなく、絵カードや図鑑など、さまざまな図書資料を効果的に活用した実践も報告された。討論では、司書教諭や学校司書、ボランティアとの連携について話し合われた。図書館を効果的に活用するには、調整役が必要で、子どもとよい本をつなげていくことの重要性を再確認した。
 また、国語力を向上させるための話し合いもなされた。表現力や読解力を高めるためには、本のあらすじを書く学習が効果的であることが報告された。また、特別支援学校との交流に本を活用した実践や子どもたちが自作の本を作成する実践なども紹介された。 

総合学習

 目の前の子どもの実態に合わせて教育課程を自主編成し、主体的な学びを通して、自己の生き方を見つめ直し、未来を切り拓いていこうとする子どもたちの育成をめざした実践が多く報告された。教科などの枠を越えた、横断的・総合的な学習をめざすためのカリキュラムの工夫や、子どもの意見や考えを促進するための学び合い活動、整理・分析するための手だてとしてのシンキングツールなどが紹介された。
 段階的に総合学習が始まって15年、変化の激しい社会に対応して、自ら課題を見つけていく総合学習の本質を再確認する必要があることが確認された。 

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21世紀をになう子どもたちのために-ともに育もう 豊かな心と 自分らしく生きる力を-

2015/10/05

第62回 愛知母と女性教師の会

 愛教組は、保護者と教員約270人の参加を得て、「愛知母と女性教師の会」を開催しました。全体会では、女性部提案及び講演を行い、それらを受けて分散会を行いました。子どもたちの健やかな成長を願い、保護者と教員が熱心に語り合いました。

内容

女性部提案:「男女が自立し、ともに生きる力をどう育てるか」
         -自分らしく生きることを考える実践を通して- 

 小学校の実践では、一人ひとりの違いを実感したり、友だちのよさを認め合ったりする活動を通して、個々の違いやそれぞれのよさがあることに気付き、自分のよさを認められるようになった子どもたちの姿が報告されました。
 中学校の実践では、コミュニケーションの仕方をロールプレイを通して学んだことで、友だちとのよりよいコミュニケーションのとり方に気付いたり、野外活動における班での活動を通して、仲間をサポートし合い、協力する姿が多くみられたりするなど、男女の関係なく相手のことを考えて行動する子どもたちの姿が報告されました。

講演【演題】   「なぜ勉強するのか?」
   【講師】   鈴木光司さん

 僕の作品に、生まれてから現在に至るまでの自分の半生を書いたエッセイ集があります。そのエッセイ集を書きながら、僕ってなんて運がいいのだろうか、ということを強く実感しました。

意欲の火をともす言葉を

  最も運がよかったと思うことは子育てにかかわれたことですが、そのきっかけとなったのは、小学校ですばらしい先生と出会え、よい言葉をかけてもらったことです。    

 小学校三、四年生のときの女性の先生は、僕に初めての詩集をつくるチャンスを与えてくれ、それを読んでほめてくださいました。五、六年生のときの男性の先生は、国語が専門で、僕たちにどんどん文章を書かせ、そして、ちゃんと書いたものに目を通し、よいところを評価しつつ、添削もしてくださいました。毎日原稿用紙三枚の日記を書くという宿題もありましたが、毎日同じことが起こっているような日常の中では、三枚なんて書けません。困り果てた僕は、空想の世界でのことを日記に書き始めました。それが自然と小説になったのです。先生は、僕の処女作をみんなの前で朗読し、「これを書いた子は小説家の才能があるかもしれない」と言ってくださいました。この言葉が、その後も僕の心の中で生き続けているのです。そして、僕に、意欲の火をことあるごとにともす役割を果してくれたような気がします。

 これらの先生方との出会い・言葉が非常に強いモチベーションになり、小説家になるという自分の目的へ、僕は一気にすすんでいきました。その過程で、僕は子育てに深くかかわり、そしてコミュニケーションの大切さを学びました。だからこそ今言えるのは、言葉の重要性です。

勉強が未来を切り開く
講演をする鈴木さんHP 
講演をする鈴木光司さん

 子どもが産まれてから、保育園の送り迎えをはじめとして、二人の娘の子育てや家事のほとんどをしていました。そして娘たちに勉強を教えようと思ってふと気付いたのです。子どもたちに、何のために勉強するのかという勉強の目的を明確に伝えた方が断然やる気が出るのではないかと。そこで、勉強で身につけるべき能力を、理解力・想像力・表現力の三つに絞り込みました。世の中には情報があふれていますが、本を読んで、その中身をきちんと理解すること、これが勉強の第一です。まず著者の意図を素直に理解しなければなりません。理解したら、自分のものになります。次に自分の想像力でこれを咀嚼(そしゃく)する。今度はこれを再構築した上で、人に向かって提示する。これが表現です。この三つの能力を身につけて、はじめて勉強の効果が出たということになってきます。

 この理解力・想像力・表現力がうまく身につくと、自分の頭の中でじっくり考えられたよい意見が出てきます。すると、それを議論する場が必要になります。議論の場では、意見を出し合って、その中からよいものを取り上げて実行に移していきます。身近なコミュニティーや政治の場などでもそのようなことができれば、世界がよりよくなっていくことにつながります。

 僕は娘たちに向かって、「勉強をする目的は、世界がよりよくなるチャンスが増えるからだよ」と教えました。勉強の目的が子どもたちに浸透すると、自主的に取り組むようになります。勉強というものは、自主的にやらない限り、絶対にのびません。高い理想を与えた方が、やる気になるように思います。

子どもの心に育てたいもの

 僕が娘たちに求めたいものは、「勇気」と「理性」です。いじめというものはやさしさが足りないから起こるわけではないと思うのです。「勇気」に支えられて、今自分のやるべきことが何かを理性的に考え、実行に移す、そういった、「勇気」に裏打ちされた「理性」、これが足りないのではないかと思うのです。やさしさとか思いやりというのは、教えようとしてもなかなか身につくものではありません。僕自身も、子どもの頃から、常に自分に問うてきました。「どうやったら勇気が身につくのだろうか」と。そして、身につけた勇気が独りよがりな身勝手なものにならないよう、世界のしくみを理性的に突き詰めないといけない。そのために、勇気と理性のコンビネーションを大事にしたい。そう考え、これを身につけようとしてきたことが、僕の半生の目的だったような気がします。

 理性を磨くというのが、実は勉強の役割でもあったと思います。理性は磨きをかけることができます。磨かれた「理性」が「勇気」と結びついて、子どもたちの心の中に育ってもらいたいと思います。僕は子どものころから学校の先生にすばらしい言葉をかけてもらって成長することができました。みなさん、ぜひ子どもによい言葉を与えて、意欲に火をつけてあげてください。

分散会:「ともに育もう 豊かな心と 自分らしく生きる力を」

 女性部提案や講演を受けて、「自分らしく生きることとは」「子どものために、親として教師としてできることは」などについてグループ討議をしました。
 自分らしく生きることに対しては、「物事を自分で選び、自分で決めていくことではないか」「自分のできない部分も認めつつ生きていくことではないか」などの意見が出されました。そして、目の前の子どもたちに対して、「話をしっかりと聴いていきたい」「向き合って認めていきたい」など、親として教師として、そして大人としてどうあるべきかを考える場となりました。

参加者の声

  •  「自分のやりたいことが心からわいてくるのを待って聴く」このスタンスが大切であるのだと思いました。子をもつ母親として、子どもの心の声が聞こえてくるまでじっくりと待とうという勇気がわいてきました。
  •  子どもを育てる親として、教師として、教育を行う上で大切なものが何であるかを教えていただけたように思います。子どもの意欲を高められる大人であることを意識していきたいです。
  •  今の時代だからこそ、男女の役割への固定観念をもつのではなく、一人ひとりが自分の役割を考えられるようにするための授業を意識して実践していくことが大切だと思いました。 

アピール採択

 最後にアピール採択委員により、集会アピールが読み上げられ、採択されました。この集会アピール文は、後日、県教育長にも提出しました。

集会アピール

 わたくしたち愛知の母親と女性教師は、「わが子・教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、子どもたちの健やかな成長を願い、「愛知母と女性教師の会」に集い、話し合いを深めてきました。

 子どもたちは、無限の可能性を秘めており、その可能性を現実のものとするために生まれてきました。わたくしたち親と教師の願いは、子どもたちが、未来に夢や希望をもち、笑顔あふれる毎日を送ることです。しかし、さまざまな問題を抱える現代社会の中では、子どもたちをとりまく環境は大きく変化しています。そのような中で、よりよい人間関係が築けなかったり、将来の夢がもてなかったりする子どもがいます。また、自分に自信がもてなかったり、自分のよさを認められなかったりする子どもも少なくありません。そして、それは子どもたちだけでなく、子育てに不安や悩みを抱える大人も同じです。

 子どもたちは、目の前の大人の姿を通して、将来を見つめています。子どもたち一人ひとりが自分のよさを見つけ、自分らしく輝きながら生きるためには、わたくしたち大人が互いのよさを認め合い、一人ひとりを尊重し合う、笑顔があふれる社会をつくっていかなければなりません。

  また、戦後70年を迎えた今年、平和にかかわる国の情勢は、スローガンに込められたわたくしたちの願いとは逆行し、大きな転換期を迎えています。わたくしたちは、改めて母女の原点に立ち戻る必要もあるのではないでしょうか。

  今こそ、子どもたちのかけがえのない未来のために、わたくしたち大人が手をとり合い、支え合っていこうではありませんか。子どもたちが多くの人々とつながり合い、認め合い、自分らしく生きていくことができるように、すべての大人が力を合わせて、子どもたちを育んでいきましょう。

ともに語り合いましょう
       夢と希望あふれる 子どもたちのかけがえのない未来を

 ともに育んでいきましょう
       豊かな心と 自分らしく生きる力を

 そして、築いていきましょう
       互いを認め合い 高め合う 笑顔があふれる社会を

   未来を担う子どもたちのために、人と人とが互いに信頼し合い、ともに自分らしく輝き続けることができる社会の実現にむけて、心ひとつにし、未来へつなぐ確かな一歩をふみだしていくことをここに誓います。

      2015年10月4日
   第62回 愛知母と女性教師の会 

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子どもたちのための教育改革を

2015/06/16

 愛教組は、これまでも子どもたちの健やかな成長をめざし、夢と希望あふれる教育の創造にむけて教育改革運動を推進してきました。学校現場では、人・自然・文化などとのかかわりを通して、さまざまな事柄に関心をもち、すすんで課題解決しようとする子どもたちの姿がみられるなど、教育実践の確かな成果があげられています。また、教育研究愛知県集会の特別集会や各地区における教育対話集会、教育実態総合調査などを展開し、教育課題の克服にむけた手だてなどについて保護者・県民との対話や共通理解につとめてきました。また、豊かな教育を創造する県民会議とも連携して、啓発活動を強化してきました。
 こうした取り組みの経過をふまえ、2015年度の教育改革運動については、これまで通り「子どもたちの健やかな成長をめざす取り組み」を中心にすえ、夢と希望あふれる教育の創造にむけて、保護者・県民・教育関係者とともに学校・家庭・地域との協働を見据え、それぞれの連携を引き続き強化し、地域ぐるみの教育改革をすすめていきます。
 そのために、以下の3点を教育改革運動の重点として掲げ、教育制度・教育内容の改革をはかる運動を強化していきます。
 
1.  「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
2.  ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
3.  子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を - 1.「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして-

2015/06/16

 「生きる力」とは、基礎・基本の習得はもちろんのこと、今までに得た知識や経験をもとに、自ら課題を見つけ、判断し、行動する力、学ぶ意欲も含めた総合的な力です。
 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育を行うためには、学校・家庭・地域が今まで以上に強く手を携え、地域ぐるみの教育をすすめていく必要があります。

保護者が学校教育に望むこと

保護者が学校教育にのぞむこと(2014年度 愛教組による保護者の意識調査より)

 地域ぐるみで子どもたちを育てるために

005b(2014年度 愛教組による保護者の意識調査より)

「学ぶ喜び・わかる楽しさ」を保障する教育をめざして

  • 子どもたちの健やかな成長を願い、子どもたちを中心にすえた職場ぐるみの教育実践に取り組んでいます
  • 保護者や地域の方などの参加も得て、教育研究愛知県集会を開催し、愛知全体の教育のさらなる向上をはかっています

 

 

 

 

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を - 2.ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして -

2015/06/16

 愛知県では、国による小学校第1学年の他、小学校第2学年、中学校第1学年において35人学級が実施されています。
 しかし、いじめや不登校、特別な支援や日本語教育を必要とする子どもたちへの対応など、学校現場には教育課題が山積しており、子どもたち一人ひとりにきめ細かな教育を行うことが大切です。
 そのためには、少人数学級の拡充や正規教員の定数増が必要不可欠です。
 すべての子どもたちにゆきとどいた教育を行うため、教育条件整備をいっそうすすめていく必要があります。

少人数学級のよさ

001b(2014年度 愛教組による教員の意識調査より)

小中学校全学年での少人数学級を望む割合

002b  (2010年度~2014年度 愛教組による保護者の意識調査より)

今、学校現場で、特に対応が必要とされていること

003b(2014年度 愛教組による教員の意識調査より) 

 

 
  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を - 3.子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして-

2015/06/16

 進学を希望するすべての子どもたちの願いをかなえるためには、今後も入試制度の改善をしていく必要があります。
 また、子どもたちの多様な希望や個性に応じた魅力ある高校教育の実現にむけた改革をすすめていく必要があります。

よりよい高校入試制度にむけて

006

(2014年度 愛教組による保護者の意識調査より)

魅力ある高校教育の実現にむけて

007b

(2014年度 愛教組による保護者の意識調査より)

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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第64次愛知県教育研究集会

2015/01/20

基調報告より

  • 分科会(各科目についての報告は下の表からご覧下さい。)
1 国語教育 文学その他
作文その他
2 外国語教育
3 社会科教育 小学校
中学校
4 数学教育 算数
数学
5 理科教育 物理・化学
生物・地学
6 生活科教育
7 美術教育
8 音楽教育
9 技術教育
 

 

10

 

家庭科教育

11 保健体育 体育
保健
12 自治的諸活動と生活指導 小学校
中学校
13 能力・発達・学習と評価
14 特別支援教育
15 進路指導
16 教育条件整備
17 過密・過疎、へき地の教育
18 環境問題と教育
19 情報化社会の教育
20 読書・学校図書館
21 総合学習

基調報告より

 現在、各学校では子どもたちの健やかな成長を願い、日々教育活動に取り組んでいます。

 これまでの63次にわたる教育研究活動において、わたくしたちは夢と希望あふれる教育の創造をめざし、子どもたちを中心にすえ、それぞれの学校・地域の特色を生かした、自主的・主体的な教育研究活動を着実に積み重ねてきました。また、保護者への意識調査を実施し、今日的な教育課題を明らかにするとともに、各地域で教育対話集会などを行い、保護者や地域の方々と意見交換をする中で、子どもたちの「生きる力」を育む取り組みについての合意形成をはかってきました。

 わたくしたちは「学力」とは単なる知識の量としてはかるものではなく、体験や知識をもとに、自ら課題を見つけ、判断し、行動することのできる力、学ぶ意欲も含めた総合的な力でなければならないと考えています。そのためにも「生きる力」をゆとりとふれあいの中でじっくりと育んでいかなければなりません。

 わたくしたちは、すべての子どもたちに「生きる力」を育むために、学校・家庭・地域の連携をよりいっそう強化し、地域ぐるみの教育を推しすすめていかなければなりません。そのためにも、基礎・基本の確実な定着はもちろんのこと、知識がつめこまれるような学びではなく、子どもたち一人ひとりが学ぶ意欲をもち、自らすすんで取り組む質の高い学びを大切にするとともに、人・自然・文化などとかかわり合い、地域に根ざした体験活動を中心にした学習を構築していく必要があります。

 今次の教育研究活動においても、ゆとりとふれあいの中で「わかる授業・楽しい学校」の実現をめざし、「学びの質を追究するとともに、子どもたち一人ひとりの意欲を大切にし、学ぶ喜び・わかる楽しさを保障する教育課程編成活動をすすめる」「学校・地域の特色を生かし、人・自然・文化などとのかかわりを大切にした創意あふれる教育課程編成活動をすすめる」の2点を研究推進の重点として提起しました。わたくしたちがすすめる教育改革は、日々の教育実践を積み重ね、その中で成長していく子どもたちの姿で示すべきだと考えます。各分科会においては、実践研究の報告をもとにして、活発な議論を展開するとともに、その成果を各単組・各分会にもち帰り、還流をはかっていただくことを大いに期待します。

 また、本日の特別集会では、子どもたちの現状や最近の教育をめぐる情勢をふまえ、「大切な存在であることを伝えよう~子どもたちの『自尊感情』を高めるために~」と題して、記念講演を行います。子どもたち自信が大切にされていると実感することの必要性や子どもたちの学びや育ちを支えるために、学校・家庭・地域がいかに連携していくかについて、参加者のみなさまとともに考え、共通理解をはかる場にしたいと考えます。

 最後になりましたが、この教育研究愛知県集会が愛知の教育のさらなる推進のため、そして、何よりも目の前の子どもたちの健やかな成長のために、実り多いものとなることを祈念し、本集会開会にあたっての基調報告といたします。

分科会    

国語教育(文学その他)

 説明的文章4本と、文学的文章30本のリポートが報告された。目の前の子どもたちの実態を見つめた地道な実践が多く、どのように読む力をつけるべきかについて、報告されたリポートをもとに討論が展開された。

国語教育(作文その他)IMG_6901

 作文(綴り方)の教育14本と、言語の教育4本、音声表現の教育19本のリポートが報告された。目の前の子どもたちの実態を見つめて、どのような子どもを育てるのか、文字言語・音声言語のよさを生かして、どのような力を育てていくのかについて討論が展開された。

外国語教育DSCF0862

  今次は、「小学校外国語活動」「表現する力を育てる活動」「わかる・楽しい授業」の3つの柱ごとに全員発表の形式で行われた。
 小学校外国語活動では、外国語に慣れ親しみながら、自分の思いや考えを表現するといった発展的な実践が多く報告された。外国語を学習することを通して、意思形成力を育む支援のあり方や、よりよい学習集団づくり、子どもたちの意欲を引き出し達成感を得られる活動などについて、議論が展開された。

社会科教育(小学校)

 身近な地域の産業や事象を教材化したり、学習活動を工夫して子どもたちの追究意欲を高めようとしたりした実践が報告された。 また、社会に主体的にかかわっていこうとする、主権者意識を高めることに取り組んだ実践が報告された。
 討論では、社会に参画する力とはどのような力であり、そのために必要な社会認識をどう育てるかについて、熱心に話し合われた。

社会科教育(中学校)

 子どもたちが主体的に取り組む学習活動のあり方についての実践、社会に対する見方・考え方を深める学習活動のあり方についての実践が報告された。
 学ぶ意欲を高めるための学習活動を工夫した実践、学ぶ意欲を持続させ、子どもが主体的に課題を追究していく実践、地域素材をはじめとする身近な素材を教材化し、子どもの社会認識を深め、社会に参画していこうとする意識を育む実践が多く報告された。

数学教育(算数)IMG_6926

 「思考力・判断力・表現力の育成」「わかる・できる指導の工夫」「学び合う力の育成」の3つの柱立てで、実践の報告や討論が行われた。どの報告も目の前の子どもを中心にすえ、子どもの力をのばしたいと感じることができるものであった。
 討論では、ねらいに迫るために有効な教材の工夫や表現力を高めるためにはどのような手だてが有効なのかについて議論され、活発な意見交換がされた。

 数学教育(数学)

 「確かな学力の定着」「思考力・判断力・表現力の育成」「学習形態の工夫」「自ら学ぶ力・意欲の育成」の4つの柱立てで、実践の報告や討論が行われた。自ら学び、主体的に取り組む子どもの育成を主眼とした実践をはじめ、教材・教具の工夫、子どもの追究意欲が高まるようなICT機器を利用した実践、魅力ある課題やその掲示の工夫及び数学的活動を通して子どもの自発的な活動を引き出した実践など、多岐にわたる実践が報告された。

理科教育(物理・化学)

 研究主題「子どもの発達段階をふまえた教育課程編成のあり方」「自然概念形成に有効な教材・教具の開発、指導の工夫」「単元における『ものづくり』の扱い方」「基礎・基本の習得と評価のあり方」「理科教育の意義」の5つを柱立てに、29本のリポート報告にもとづきながら、テーマ別討議や全体討論が活発に行われた。
 

理科教育(生物・地学)

 身近な自然に目を向けさせ教材化する実践、飼育・栽培活動を継続的に行う実践、モデルを取り入れることによって子どもたちに空間概念を養わせる実践、条件や視点を明確にし、共有することで考えを深める実践などが報告された。
 討論では「基礎・基本を重視した教育課程編成のあり方」「地域の素材の教材化」「子どもの視点に立った教材・教具の開発」「子どもたちに理科の有用性を実感させる指導のあり方」について活発な意見が出された。その中で、科学的な事象を理解するためには、科学的な用語の意味を正確に理解することと、それらを使って文を構成する力を養うことが重要であると確認された。
 また、近年では地学分野での実践が少なくなっており、今後は地学分野の実践にもっと取り組む必要があるということも確認された。 

生活科教育

 探検活動を通して地域の自然や人々とのかかわりを深める実践、異学年交流や幼・保・小の連携を通して、豊かな学校生活を送ることができるようにする実践、飼育・栽培活動を通して動植物への愛着を深める実践などが報告された。
 子どもたちがいきいきと活動する様子がよくわかる実践が多かった。また、子どもが活動したことをもとにして、内容や自分の考えなどを伝え合うことを通して、子どもたちの気付きの質が高まっていく様子も多く報告された。生活科を通して、子どもたちの自立の基礎が養われていく確かな実践がすすめられていることが感じられた。

美術教育DSCF0995

 「美術教育を通して子どもたちに伝えたいこと」をテーマに実践報告や討論がすすめられた。
 総括討論では、日々、教員が感じていることや、子どもたちの実態をふまえ、図工・美術教育から何を学ばせるのかという論議を通して、本年度のテーマを深めることができた。
 制作活動中に子どもが感じる不安や悩み、「うまくつくりたい、表現したい」という子どもの思いを受け止め、教員がどのように支援するべきなのかという点について話し合われた。また、子どもたちの将来を見据え、義務教育の中で小・中がどのように連携し、子どもの表現力を高めていくのか、美術教育では、将来にむけてどんな力を育んでいくのかという論議などを通して、わたくしたち美術教員が常日頃考えなければならない課題を再確認することができた。 

音楽教育

 「音楽表現を高めるためのコミュニケーションのあり方」「子どもの思いや意図を表現に生かすための指導の工夫」をテーマに討論をすすめた。音楽の学習を通して互いのよさを認め合う実践が多く報告され、音楽教育によって培われる「生きる力」について深く考えることができた。
 午前中は、DVDによる実践報告を行った。どの報告もめざす子ども像を明確にし、実践を通して変容していく様子をよくとらえたものであった。
 小学校低学年では、子どもどうしのかかわり合いを大切にし、リズムを学校生活のさまざまな場面で取り入れた実践、拍の流れを感じ取り、音楽表現を楽しむ実践が多く報告された。
 小学校中・高学年では、聴く活動を通して、互いの音楽表現のよさを認め合う実践、音楽を形づくっている要素に着目し、表現や鑑賞に生かす実践が多く報告された。
 中学校では、音楽を形づくっている要素が楽曲に与える効果について考える鑑賞の実践などが報告された。 

技術教育

 知識や技能を習得し、生活に生かす実践が多く報告された。材料と加工では、加工精度が求められる組みつぎを使った製作活動に取り組んだ実践、知識や技能を共有することで、主体的に課題追究に取り組んだ実践、正しく製作図をかき、見通しをもって製作活動に取り組んだ実践が報告された。エネルギー変換では、視覚的にとらえ、学習内容を理解させることで、主体的に学習に取り組んだ実践、協力して課題追究した実践、家庭科分野と連携しながら、機構について取り組んだ実践、比較実験や回路実験を通して、基礎的・基本的な知識や技能を身につけた実践が報告された。生物育成では、牛乳パックで鉢をつくり、リーフレタスの栽培を行った実践、ティーム・ティーチングの形態をとりながら、簡易水田での稲作を行った実践、ミニチュアハウスを製作し、冬場にミニトマトの栽培を行った実践が報告された。情報と技術では、疑似体験をし、情報モラルについての理解を深めた実践、プログラムの作成やデジタル作品の製作を行った実践、疑似体験を通して、問題解決的な授業を展開した実践が報告された。技術教育全般では、LEDの光を用いたリーフレタス栽培に取り組んだ実践、ICT機器を整備し、学習場面に応じて活用した実践が報告された。

家庭科教育PICT0026

 子どもの実態をとらえ、生活の中から課題を見つけることから学びをはじめた実践が多くみられた。実験や実習などを多く取り入れ、五感を働かせる実体験を重視した実践、対話や討論を積極的に取り入れて、互いの考えを交流させる場を工夫した実践も多くみられた。また、持続可能な社会の一員として、よりよい生活を送ろうとしたり、防災意識を高めたりするなど、現代的な課題に取り組んだ実践も報告された。これらの実践をもとに、具体的な討論を行うことができた。

保健体育(体育)

 「体育でどのような子どもを育てるか、自ら考え行動する子どもをどう育てるか」を大テーマに、次の点を研究主題として、発表・討論が行われた。
⑴ かかわり合いを大切にした授業づくり
⑵ 学年に応じた体力向上と技能習得
 どのリポートにも、仲間とのかかわり方や学年に応じた体力向上と技能習得に関して、さまざまな工夫のある実践が報告された。
 討論では、かかわり方を系統的に見て、それぞれの学年で習得していくべき内容について活発な意見交換がなされた。また、技能習得のためのよりよい指導法などについて、活発な意見が出された。

保健体育(保健)

 「子どもが生活の主体となるための健康教育」をテーマに、さまざまな健康課題に対応するために教材・教具を工夫した実践、子どもの主体的な取り組みを中心とした実践、話し合い活動を取り入れた実践などが報告された。報告を通して、健康に対する意識の高まりや健康課題の解決にむけての実践力が着実に育ってきている様子が感じられた。

自治的諸活動と生活指導(小学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマとして、活発に討論された。
 子どもたちのよりよい人間関係を築くために、学級や学年、異学年交流などを通して活動する実践が多く報告された。また、子どもたちが自分自身を見つめ、自ら課題を見つけて取り組むことで、豊かな人間性を身につけていく実践も報告された。さらに、学校と家庭、地域社会が連携して一人ひとりの子どもを支援していく実践なども報告された。
 これらの実践報告をもとに、子どもたちの活動のあり方や意義、子どもたちの実態のとらえ方、それらをふまえた教員の支援のあり方について熱心な討論が展開された。

自治的諸活動と生活指導(中学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマに、活発な討論がなされた。
 人権について考える実践、生徒のやる気を引き出すために自己存在感を大切にした実践、学校行事を生かしながら、個と集団の力を高める活動や生徒会活動、家庭・地域と連携した活動を通じて、子どもの成長をめざす実践が報告された。
 これらの実践報告をもとに子どもたちの実態をふまえた支援のあり方について議論が深められた。

能力・発達・学習と評価

 子どもたちの対話力を育むために、聴き合い学び合う学級づくりに取り組んだ実践や、自分の考えをもち、かかわり合いながら学ぶことで、課題解決をめざした実践、ユニバーサルデザインの考えをもとに、個に応じた授業の工夫をした実践が報告された。地域と連携し、ふるさとのよさを体感することで、思いを形にし発信していく場を設定した実践、外部講師と連携し、命の大切さを実感する実践、ICT機器を効果的に活用することで、確かな学力を身につけることをねらった実践が報告された。   

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 「豊かに生きるための力を育む」というテーマのもとに35本のリポートが報告された。
 子どもの教育的ニーズを的確に把握し、学習意欲を高めるような教材・教具を工夫した実践、子どもの現在や将来の生活に直接結びつく力を身につけさせるための実践、人とかかわる力やコミュニケーション能力を高めるための実践などが報告された。

進路指導

 小学校では、通級指導を通してコミュニケーション能力を育成したり、自己肯定感を高めさせたりする実践が報告された。少人数指導でコミュニケーションスキルの定着をはかることによって、子どもは自信をもって仲間とかかわれるようになることが確認された。
 中学校では、職場体験学習を軸として、事前・事後の指導を系統的に行う実践や、「生きる力」を培うために、進路にかかわる行事を系統的に行う実践が報告された。ディスカッションや調べ学習を通して、さまざまな職業について子どもたちに主体的に学ばせることで、職場体験学習がより有意義なものになることが確認された。

教育条件整備

 「子どもの学習権の保障のために」を主題に、ICT教育にかかわる条件整備、防災教育にかかわる条件整備、個に応じた教育環境にかかわる条件整備についての実践が報告された。
 ICT機器を効果的に活用して子どもの学習意欲を高めた実践、体験学習を通して地域との連携を高めた実践が報告された。また、地震に対する備えや対応マニュアルの問題点をアンケートによる調査からまとめた実践や、学校の施設・設備に関する実情をアンケートによる調査からまとめた実践も報告され、熱心な討論が行われた。 

過密・過疎、へき地の教育

 コミュニケーション能力を高める実践、複式学級の授業にガイド学習を取り入れた実践、地域素材や人材を積極的に活用した実践など4本が報告された。
 どの学校も児童数が減少しており、人とのかかわりが内向的になるという傾向がみられた。そこで、「話す」「聞く」「伝え合う」場面を多く設定し、自分の考えを発表する機会を増やして自信をもたせる実践が報告された。また、地域素材を生かした体験的な学習を通して、地域の特色やよさを見つめ直させる実践が報告された。
 いずれの実践も、へき地校の抱える問題点を考慮しながら、小規模校の利点を生かし、地域素材や人材を活用した実践であった。

環境問題と教育

 学校や地域の特色をふまえ身近な環境問題を取り上げた実践、「小さな地球モデル」や「トイレカード」など環境問題に関する教材・教具や、地域・企業・行政などの人材を積極的に活用した実践が、小学校から3本、中学校から4本報告された。
 子どもたちの環境問題に対する意識を高め、環境問題を他人事としてではなく自分事としてとらえさせ、よりよい環境づくり、持続可能な社会をめざして、家庭や地域を巻き込みながら積極的に実践に取り組んでいる様子がうかがえた。

情報化社会の教育

 課題提示や発表方法を工夫することで、必要な情報を収集・整理したり、相手を意識した情報発信をしたりするといった情報活用能力を育成する実践が報告された。
 また、各教科の授業でICT機器やデジタルコンテンツを有効に活用することで、学習意欲や学習理解の向上をはかりながら学習のねらいに迫る実践が報告された。
 さらに、子どもの実態を把握し、実際に起きているインターネット上の問題を教材化することで、情報モラルについての意識や態度を育てる実践が報告された。
 助言者からは、各実践にかかわらせながら、情報活用能力の育成やICT機器活用のポイント、情報モラル育成のために配慮すべきことについて具体的な助言を得た。子どもを中心にすえた実践から学び、考えることができ実り多い分科会となった。 

読書・学校図書館

 学校間、地域間で差はあるものの、図書館の環境整備がすすむなか、公共図書館や学校司書との連携をはかりながら、読書に親しませる実践が行われている。しかし、図書館を各教科などで利用するための年間活用計画や、図書資料を提供するための環境整備はまだ十分でないことが討論を通して確認された。
 子どもたちの「生きる力」を養うために工夫された読書活動や、各教科と関連づけた授業、学習情報センターとしての図書館の利用などの実践が数多く報告された。

総合学習

 体験活動を通して、生き方を見つめ直し、将来を切り開いていこうとする子どもたちの育成をめざした実践が多く報告された。子どもの意見や考えを整理・分析するための手だてとして、イメージマップやXチャートなど、さまざまな思考ツールが紹介された。「総合的な学習の時間」が縮減されたものの、各教科・他学年との関連や小・中連携をはかる実践から、総合学習の役割を再確認する必要があることが確認された。

カテゴリー:更新情報, 教育研究愛知県集会 →2022年以降の記事は愛教組連合ホームページへ, 子どもを中心にすえた教育研究を    

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