子どもを中心にすえた教育研究を

第68次愛知県教育研究集会

2018/10/27

 10月27日、保護者と教員、働く仲間、約1600人の参加のもと、第68次教育研究愛知県集会が開催されました。
 全体集会の後には、「子どもたちの健やかな成長をめざして」をテーマに特別集会が行われました。特別集会では、早稲田大学教育・総合科学学術院教授の菊地栄治さんから、「私たちはどう生きるか-子どもたちの『ゆたかな学び』をデザインする-」という演題で記念講演をいただきました。
 また、26分科会では、子どもたちを中心にすえた実践報告と活発な討論が行われました。

 

 

基調報告より

分科会

1.語教育文学その他作文その他)
2.
外国語教育
3.
社会科教育小学校中学校
4.数学教育算数数学

5.理科教育物理・化学生物・地学
6.生活科教育

7.美術教
8.音楽教育
9.技術教育
10.家庭科教育
11.保健体育体育保健
12.自治的諸活動と生活指導小学校中学校
13.能力・発達・学習と評価
14.特別支援教育
15.進路指導
16.教育条件整備
17.過密・過疎、へき地の教育
18.情報化社会の教育
19.読書・学校図書館

20.合学習

 

基調報告より 

 これまでの67次にわたる教育研究において、わたくしたちは夢と希望あふれる教育の創造をめざし、子どもたちを中心にすえ、それぞれの学校・地域の特色を生かした、自主的・主体的な教育研究活動を着実に積み重ねてきました。また、保護者への意識調査を実施し、今日的な教育課題を明らかにするとともに、各地域で教育対話集会などを行い、保護者や地域の方々と意見交換をする中で、子どもたちの「生きる力」を育む取り組みについての合意形成をはかってきました。そして、各学校では子どもたちの健やかな成長を願い、日々教育活動に取り組んでいます。

 さて、現在、国によるさまざまな教育改革が推しすすめられ、学校現場にも大きな影響を与えようとしています。とりわけ、本年度から、新学習指導要領の移行措置により、小学校高学年では外国語活動の時間数が新たに年間15単位時間加えられ、中学年にも年間15単位時間の外国語活動が導入されました。現在は、「総合的な学習の時間」及び総授業時数から減じることができるとされていますが、小学校の週あたりの授業時数はすでに限界がきていることから、2020年度からの全面実施による年間で35単位時間の授業時数の増加については、子どもたちへの大きな負担となることが懸念されます。また、学習内容についても、「読むこと」「書くこと」が学習指導要領に明記され、中学校英語教育の前倒しとなることや、知識習得そのものが目的になることなどが危惧されます。子どもたちに必要なのは、英語力を身につけることだけではなく、自ら課題を見つけ、主体的に判断し、行動できる「生きる力」であり、それは、ゆとりとふれあいを保障する教育課程の中で育てていくべきものであると考えます。

 わたくしたちは、あくまでも学習指導要領を大綱的基準としてとらえ、未来を担うすべての子どもたちのために夢と希望あふれる教育を創造する取り組みを継続し、学校現場からの教育改革を推進していかなければなりません。そのためにも、基礎・基本の確実な定着はもちろんのこと、子どもたち一人ひとりが学ぶ意欲をもち、自らすすんで取り組む、より質の高い学びを大切にしていかなければなりません。また、人・自然・文化などとかかわり合い、地域に根ざした体験活動を中心にした学習を構築し、学校・家庭・地域の連携をよりいっそう強化し、協働して、地域ぐるみの教育を推しすすめていかなければなりません。

 今次の教育研究活動においても、ゆとりとふれあいの中で「わかる授業・楽しい学校」の実現をめざし、「学びの質をより追究するとともに、子どもたち一人ひとりの意欲を大切にし、学ぶ喜び・わかる楽しさを保障する教育課程編成活動をすすめる」「学校・地域の特色を生かし、家庭や地域社会と協働をはかりながら、人・自然・文化などとのかかわりを大切にした創意あふれる教育課程編成活動をすすめる」の2点を研究推進の重点として提起しました。わたくしたちがすすめる教育改革は、日々の教育実践を積み重ね、その中で成長していく子どもたちの姿で示すべきだと考えます。各分科会においては、実践研究の報告をもとに、活発な議論を展開するとともに、その成果を各教組・分会に持ち帰り、還流をはかっていただくことを大いに期待します。

 また、本日の特別集会では、子どもたちの現状や教育をめぐる情勢をふまえ、「私たちはどう生きるか -子どもたちの『ゆたかな学び』をデザインする-」と題して、記念講演を行います。未来を担う子どもたちの健やかな成長をめざして、学校・家庭・地域で大切にしていきたいことなどについて共通理解をはかり、それぞれがいかに協働して子どもたちを育てていくか、ともに考えていきたいと思います。

 最後になりましたが、この教育研究愛知県集会が愛知の教育のさらなる推進のため、そして何よりも目の前の子どもたちの健やかな成長のために、実り多いものとなることを祈念し、本集会開会にあたっての基調報告といたします。

 

分科会    

国語教育(文学その他)

 説明的文章6本と、文学的文章17本のリポートが報告された。目の前の子どもたちの実態を見つめた価値ある実践が多く、どのように読む力をつけるべきかについて、報告されたリポートをもとに討論が展開された。 

国語教育(作文その他)

 作文(綴り方)の教育8本と、言語の教育3本、音声表現の教育12本のリポートが報告された。子どもたちの実態を見つめ、どのような子どもを育てるのか、文字言語・音声言語のよさを生かして、どのような力を育てていくのか討論が展開された。

外国語教育 

 「思いを伝える・伝え合う活動」「4技能の統合や評価のあり方を工夫した活動」「わかる・楽しい授業づくりのための工夫」の3つを討論の柱に、小グループによる発表と討論が行われた。その後、各グループで設定された「全体討論への問題提起」をもとに、全体で討論と意見共有が行われた。
 3つの小グループでは、小学校と合同授業を行った中学校の実践や、Can-doリストを設定し、具体的な到達度目標を明らかにして子どもたちの力を育てる実践などが報告された。子どもたちが互いにかかわり合いながら、主体的に学習活動に取り組むための手だてが数多く報告され、活発な討論が行われた。 

社会科教育(小学校)

 地域素材の教材化や、他者とかかわる学習を取り入れることによって、主体的に社会参画しようとする意欲を高める実践が報告された。討論では、根拠をもとにした話し合い活動を通して育てたい力や、社会参画する力を育成するために必要な社会認識について熱心に話し合われた。

社会科教育(中学校)

 子どもたちが主体的に取り組む学習活動のあり方についての実践や、社会に対する見方・考え方を深める学習活動のあり方についての実践が報告された。
 主権者として学ぶ意欲や社会参画の意欲を高め、子どもが主体的に課題を追究した実践や、地域素材をはじめとする身近な素材を教材化したり、対話的な学習活動を取り入れたりして子どもの社会認識を深めていく実践が多く報告された。 

数学教育(算数)

 「主体的な学び」「思考力・判断力・表現力の育成」「わかる・できる指導の工夫」「学びあう力の育成」の4つの柱立てで、実践の報告が行われた。
 子どもたちが、主体的にかかわり合う姿をめざした実践、わかる喜び・できる楽しさを実感させるための手だてを工夫した実践、筋道を立てて考え、表現できるように工夫した実践などが報告された。どの報告も子どもを中心にすえ、子どもの力を伸ばしたいというねらいを感じることができるものであった。

 数学教育(数学)

 「思考力・判断力・表現力の育成」「主体的・対話的な学び」「学びあう力の育成」の3つの柱立てで、実践の報告や討論が行われた。自分の考えを深めることや、表現する力を高める子どもの育成をねらいとした実践をはじめ、グループ学習やペア学習などの学習形態を工夫した実践、数学的活動を通して子どもの自主性を引き出した実践など、多岐にわたる実践が報告された。 

理科教育(物理・化学)

 28本のリポートについて4つの領域ごとに、「子どもの理科的な資質・能力の把握や育成に役立てる評価の利用」「自然の事物・現象を、量的・関係的な視点や質的・実体的な視点でとらえ、多面的に考えさせる指導方法」の2観点に重点をおいた報告と討論を展開し、活発な意見交換が行われた。

理科教育(生物・地学)

 自然事象を探究的にとらえさせ、問題解決に取り組むことができるよう工夫された授業実践、モデル教材を用いて子どもの理解が深まるようにした授業実践、体験活動を取り入れ、自然の仕組みをとらえさせようとする授業実践などが報告された。
 討論では、「子どもの理科的な資質・能力を育成するための理科指導のあり方」「身近な自然や、生命の大切さを取り入れた単元構想の充実」の2観点を中心とし、「子どもの自然認識を有意味に発展させる理科学習の開発・編成のあり方」「自然の事物・現象を、科学的に探究する方法を用いて多面的に考えさせる指導方法」を加えた4観点を柱立てに意見交換がされた。 

生活科教育

 スタートカリキュラムの実践、学校探検を通して身近な人とのかかわりを深めた実践、栽培活動を通して植物への思いや願いをもち思考を深めた実践、遊びやおもちゃづくりを通して自然や人とのかかわりを深めたり、気付きの質を高めたりした実践、遊びやおもちゃづくりを通して対話し、思考を深めたり気付きの質を高めたりした実践など、地域の自然や素材、人々を生かして、子どもたちが主体的に学習する実践が報告された。
 全体的な特徴として、対象へのかかわりを積極的に行い、子どもたちの思いや願いの実現をはかった実践、また、伝え合いや交流活動など対話的な活動を位置づけ、思考を深め、気付きの質を高めた実践が多くあった。
 生活科を通して子どもたちの自立の基礎が養われていく確かな実践がすすめられていることが感じられた。 

美術教育

 「美術教育を通して子どもたちに伝えたいこと~子どもたちのゆたかな学びのために~」をテーマに実践報告や討論がすすめられた。
 総括討論では、図工・美術教育から何を学ばせるのかという議論を通して、本年度のテーマについて考え、深めることができた。
 図工や美術の授業に対して子どもが抱える不安や悩み、思いを受け止め、教員がどのように支援していくとよいか話し合われた。また、子どもたちの将来を見据えて、義務教育期間の小・中学校がどのように連携して、子どもの表現力を高めていくのか、美術教育では、将来にむけてどのような力を育んでいくのかという議論を通して、わたくしたち美術教員が常日頃考えなければならない課題を確認することができた。 

音楽教育

 「9年間の見通しをもって感受する力と技能を高めていく学習活動や指導の工夫」「限られた授業時間数の中で行う技能面での支援方法」をテーマに討論をすすめた。仲間と主体的、対話的にかかわり合いながら表現の工夫をする実践が多く報告され、音楽的要素や共通事項をとらえるための目標設定をすることの大切さについて深く考えることができた。
 また、DVDによる実践報告を行った。めざす子ども像を明確にし、工夫を凝らした手だてによって変容していく子どもたちの様子がよくわかるものであった。

技術教育

 生活の中で技術化が果たす役割について体験的に学ぶ実践が多く報告された。「材料と加工」では、根拠をもって最適な加工法を選択できる力を高める実践や、実践的・体験的な活動を通して、新たな探究の視点をもとに考えを深めることをめざした実践が報告された。また、対話的な学びの中で、課題解決をめざし、知識や技能を習得する実践が多く報告された。「生物育成」では、グループ活動を中心として、他者とかかわる中で課題解決をめざした実践が報告された。「情報」では、身近な教材を提示することで意欲を高め、主体的に問題を解決する力の育成をめざした実践などが報告された。技術教育全般では、カードゲームを使用したガイダンス授業で、課題解決の意識づけを行った実践や、系統的な学びの実現をめざした実践が報告された。 

家庭科教育

 「知識・技能の習得」「生活を追究する」「現代的な生活課題」「家庭や地域、人とのつながり」の4つ柱立てで、実践の報告が行われた。子どもの生活の中から課題を見つけ、学びを深めていく実践が多く報告された。
 総括討論では、「これからの家庭科教育~生活の本質を理解させる道すじをつくるための手だてとは~」について討論が行われた。 

保健体育(体育)

 「体育でどのような子どもを育てるか、自ら考え行動する子どもをどう育てるか」を大テーマに、次の2点を研究主題として、発表・討論が行われた。
(1)かかわり合いを大切にした授業づくり
(2)学年に応じた体力向上と技能習得
 どのリポートも、仲間とのかかわり方や学年に応じた体力向上と技能習得に関して、さまざまな工夫のある実践が報告された。
 討論では、仲間とかかわり合うために有効な手だてや、子どもの発達段階に応じてどのような技能を習得させるべきかについて活発な意見交換がされた。また、技能習得のためのよりよい指導法などについて、活発な意見が出された。 

保健体育(保健)

 「子どもが生活の主体となるための健康教育」をテーマに、さまざまな健康課題に対応するために、教材・教具を工夫した実践、子どもの主体的な活動を中心とした実践、学校内・外との連携を深めた実践などが報告された。報告を通して、健康に対する意識の高まりや、健康課題の解決にむけた実践力が着実に育ってきている様子が感じられた。 

自治的諸活動と生活指導(小学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマとして、活発に討論された。
 子どもたちがよりよい人間関係を築くために、学級や学年、異学年交流を通して活動した実践が多く報告された。また、子どもたちが自分自身を見つめ、自ら課題を見つけて取り組むことで、達成感や満足感を味わい、豊かな人間性を身につけた実践も報告された。さらに、学校・家庭・地域が連携して一人ひとりの子どもを支援した実践なども報告された。
 これらの実践報告をもとに、子どもたちの活動のあり方や意義、子どもたちの実態のとらえ方、それらをふまえた教員の支援のあり方について熱心な討論が展開された。 

自治的諸活動と生活指導(中学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマに、活発に討論された。
 子どものやる気を引き出すために自己存在感を大切にした実践や、学校行事を生かしながら、個と集団の力を高める活動、家庭・地域と連携した活動を通して、子どもの成長をめざした実践が報告された。
 これらの実践報告をもとに、子どもたちの実態をふまえた支援のあり方について議論が深められた。  

能力・発達・学習と評価

 自分の思いを的確に伝え、考えを深めることができる子どもの育成をめざして、話し合いやかかわり合いの工夫を取り入れた実践や、物事を多面的・多角的にとらえることで考えを広げる実践、身体表現や美術作品で自分の思いを伝える工夫を取り入れた実践が報告された。
  また、主体的に学ぶ子どもの育成をめざして、書く活動での正しい姿勢や字の形を大切にする実践、「ピースアロー」などの思考ツールを取り入れた実践、ICT機器を効果的に活用した実践、発問を工夫した実践が報告された。

特別支援教育

 「豊かに生きるための力を育む」というテーマのもと、21本のリポートが報告された。
 子どもの教育的ニーズを的確に把握し、学習意欲を高めるような教材・教具を工夫した実践や、キャリア教育と関連した実践、自己理解や他者理解に焦点をあてた実践、人とかかわる力やコミュニケーション能力を高めさせるための実践などが報告された。

進路指導

 基礎的・汎用的能力の育成に重点をおいたキャリア教育の実践が多数報告された。
 各教科、総合的な学習、特別活動の実戦では、人間関係形成能力や自己理解能力、課題対応能力の育成をめざした活動を、子どもの発達段階に応じて設定することが効果的であることが確認された。また、小学校と連携したキャリア教育の重要性について意見交換がなされ、中学校だけではなく、小学校での取り組みを生かした継続的がキャリア教育が必要であると確認された。さらには、朝のSTなど、日常生活の中で取り組めることから、職場体験学習や老人施設への訪問など、地域と連携した取り組みまで、幅広い実践が報告された。
 助言者からは教育活動全般を通したキャリア教育の重要性が提起され、学校内外における系統的な取り組みの大切さが確認された。 

教育条件整備

 「子どもの学習権の保障のために」を主題に、ICT教育にかかわる教育条件整備や、外国人児童生徒を支える教育条件整備についての実践が報告された。
 ICT機器を充実させるため、現状の機器の整備や利用状況の調査結果と今後の課題が報告された。
 外国にルーツをもつ子どもたちの学習権を保障し、一人ひとりの希望や個性に応じた学習活動をすすめるために必要な教育条件整備が報告された。

過密・過疎、へき地の教育

 どの学校の報告も、身につけさせたい力を明確にしているという点、小規模校での実践である点、地域の特性をどのように生かしていくかという点が取り上げられていた。
 小規模校では、少人数のため、さまざまな考えに出会う機会が少なく、自分の考えを表現することが苦手な傾向にある。人数の多い集団での活動になったときに不慣れな部分が見られることもある。
 それらをふまえ、他者と考えを伝え合う活動を通して、自分を表現する力を高める実践が報告された。また地域の「ひと、もの、こと」にかかわることでふるさとに愛着を持つ実践が報告された。

情報化社会の教育

 プログラミング教育における、教育用コンテンツの効果的な活用を通した実践や、各教科において、ICT機器をどのように活用するかについての実践などが報告された。また、子どもたちが情報モラルについて対話しながら考える実践や、子どもたちの意見交流を通して、情報活用能力を高める実践が報告された。

読書・学校図書館

 子どもたちが自ら本を手にとり、読書の幅を広げたり学びを深めたりすることめざした実践が報告された。いずれも、読書活動や調べ学習を通して、人と人とをつなぐとともに、学びを支える場となる学校図書館が担う役割の重要さや多様性が感じられる実践であった。
 討論では、それぞれの発達段階に応じた調べ学習の指導の仕方や、授業での学校図書館の活用の仕方、読書活動や環境整備の工夫などについて、活発な意見交換がなされた。

総合学習

 身近な事象や今日的課題をテーマとして取り上げ、子どもの探究的・協働的に学ぶ姿を期待した実践が多く報告された。子どもが課題をより「自分事」としてとらえるための地域素材や、ゲストティーチャーの効果的な活用の仕方、自他の考えや意見を可視化させるための思考ツールの活用の仕方などが紹介された。子どもが主体的に活動し、いきいきと課題解決していく姿から、執筆者の子どもへの願いや愛情が伝わってきた。

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私たちはどう生きるか -子どもたちの「ゆたかな学び」をデザインする-    〈 第68次教育研究愛知県集会 特別集会 〉

2018/10/27

 特別集会では、早稲田大学教育・総合科学学術院教授の菊地栄治さんから、ご講演いただきました。
 菊池さんからは、「子どもたちの健やかな成長をめざして 私たちはどう生きるか-子どもたちの『ゆたかな学び』をデザインする-」と題してお話をいただきました。本集会を通して、子どもたちの健やかな成長のために必要な、「ゆたかな学び」にむけた教育活動の重要性を改めて確認することができました。

 

記念講演:  子どもたちの健やかな成長をめざして
          私たちはどう生きるか-子どもたちの「ゆたかな学び」をデザインする-
講   師:早稲田大学教育・総合科学学術院教授 菊地 栄治さん

                        記念講演をする菊地栄治さんトリミング

 

今の時代に向き合う視点

 まずはじめに、基本的なこととして、どのようにこの時代に向き合っていけばよいかということを中心にお話をしたいと思います。わたくしは、これから紹介させていただく2つの社会現象に注目しています。1つめは1937年に、現在と時代状況が似ている困難な時代を生きる少年にむけて、書かれた社会学小説についてです。吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」。吉野源三郎さんはジャーナリストであり、敏腕編集者でもありました。当時彼は、子どもたちの未来を非常に憂いており、未来に希望がもてるようなメッセージを考えていこうと書かれたのがこの作品です。このタイトルは、宮崎駿さんが制作中の長編アニメ映画のタイトルにも選ばれています。わたくしは、この作品が今の時代にどんなふうに生きていけばよいかという1つの物差しになるような本であると考えています。
 この本には、「コペル君」という少年が出てきます。少年がいろいろな事に気付いていくことに対して、彼の叔父が「それはすごくよいところに気付いたね」「ここはこうした方がよかったんじゃないか」などの言葉をかけます。厳しい言葉も含めて、少年とかかわっているところが、すごいものだと感じました。この小説には、2つの鍵があり、1つは「人類の進歩」です。人類の進歩にとって今、それぞれがやっていることはどのような意味があるか、非常に大きい物差しでとらえています。さまざまな形で、それぞれの国が利害を主張し合うことを、歴史上繰り返しており、今またそういう傾向が強くなっていますが、人類という大きなくくりでとらえたときに、それは本当にやってよいことなのか、あるいはこうした方がよいのではないかという1つの大事な物差しというのが、人類というカテゴリーです。人類の進歩にとって、どのように貢献できるかということを考えてほしいということを強くメッセージとして打ち出しています。もう1つは「立派な人間」です。わたくしたちは、よかれと思って勉強ができる子とか、何々ができる子というものに、こだわってしまう傾向があります。しかし、一番大事なことは何ができるか、できないかは別にして、立派に生きていく人間になってほしいということです。すごく大きな視点ではありますが、とても大事だと思います。立派に見える人間は多くいますが、本当に立派な人間にはなかなかなれない。しかし、それにチャレンジしていこうというところが、ある種の美意識だと思います。それを忘れないで生きてほしいという思いが打ち出されているのだと思います。
 「コペル君」はあるとき、人が動いている様子を見て「人って分子みたいだな」と言います。自分は1人で生きていると自己中心的に、自分軸でしかものを見ていなかったけれども、外から俯瞰すると、人はやはり何かによってつながって生きていて、支え合って生きているということに彼は気付くわけです。そういう視点の転換が、この小説が書かれた頃と同じように、はかられなければならない、そんな時代に直面していると考えます。
 小説の中で「僕はすべての人が互いによい友だちであるような、そういう世の中がこなければいけないと思います。人類は今まで進歩してきたのですから、きっと今にそういう世の中に行き着くだろうと思います。そして僕はそれに役立つような人間になりたいと思います」と書かれています。最初の、「すべての人が互いによい友だち」の部分では、みなが幸せになるような、そんな社会であってほしいということが書かれています。そして、人類というカテゴリーで考えたときに、これまで進歩してきたことやその進歩を支えるような、それに貢献できるような人間になりたいという決意が書かれているのです。
 そこに至るまでには、うまくいかないことも当然あるのですが、うまくいかないという経験の機会を取り除くこともよくないのかもしれません。転んだときに、大人がどのように手を差し伸べて、どのような声かけをするかということが重要だということを言っているように思います。

 

揺さぶられる関係 

 それからもう1つ、これも時代を映している「この世界の片隅に」という映画、こうの史代さんという漫画家の作品です。1940年頃の呉のある場所で、「北条すず」という人物の日常世界が淡々と描かれており、そこに戦争がおこるという映画です。この映画は、日常の生活を当事者の目線でていねいに描いています。社会科学系の研究者は、自分の理論が正しいという話になりがちなのですが、大事なのは、日常を生きている当事者の人たちの目線に立つということです。そのような目線でもう一度、どう見えているかということを考えていこうと、そのような人たちの声に耳を傾けていこうということです。主体というものは、関係性の中で大事にされながら言葉を発することで得られます。何もしないまま自然に主体になるわけではなく、関係性の中で主体が浮き上がって育っていくということだと思います。
 それから、世界を重ねることが、今とても難しくなっています。生きている世界が違う。若者はネット社会に生きており、中高年の世代はそうではないという場合があります。あるいは考え方が違うとか、これはいつの世にもあります。「他人事≒自分事」と、わたくしは表現していますが、これが究極の人間のテーマではないかと思っています。つまり自分と他人は違う。違うけれど、できごとを媒介にして、それを重ね合い、互いにすべては理解しきれないけれど、近づこうとする、それが対話です。わたくしは、互いにコミュニケーションを通して考えが変わったり、違う見方を発見したりと何か影響を与え合うような関係を「揺さぶられる関係」と呼んでいます。対話しているようで、ただ記号としての言葉がやり取りされているだけでは対話とは言えません。対話というのは「互いに」心を揺さぶられることです。子どもは揺さぶられる対象で大人が揺さぶる主体、これは対話ではありません。大人も揺さぶられる、子どもの発言を聞いて「自分はここが見えていなかった」と思い、自分もまた変えていく、そういう経験、関係性のあり方が対話的な関係であるとわたくしは考えています。
 また、人間には至らないことが多くあります。至らないことを抱えている、闇も抱えている。そんな中で、ともすると、今の世の中は直線的に考えがちです。こうすればこうなる、こう勉強すれば、こういう立派な人間になれる、お金が儲かるなど、そういう短絡的・直線的な思考ではなく、失敗しながら転びながら深まっていくのが思考だと思います。単純によいことばかり考え、よいことばかりイメージして、そこにむかっていくのではなく、経験を通して、人間がさまざまな面をもっていることに気付くということが重要であると思います。
 さて、この2つの社会現象は何を物語っているかと言うと、1つは時代を超えた人類としての難題にわたくしたちは常に向き合っていかなければいけないということを教えてくれていると思います。2つめは、わかったつもりになるということが、ある意味文明病であって、非常に危険なことだということにも気付かせてくれます。現在は、学びの根本に立ち返るということが必要になっている時代です。大人の側の決めつけ、それを問い直すということが必要な、そのような時代です。このようなことを抜かした学びというのは、どれだけ一生懸命細かく文字をたくさん書いても、未来のその本人には全然残っていきません。情報として、頭に入れられますが、全然残っていきません。大事なことは、その人が本当に意味があるということに気付くというような、そういう財産を一人ひとりに残していくということです。情報をたくさん用意しても、今は、インターネットにアクセスすればいくらでも手に入るものなので、あまり意味がありません。それよりも、もう少し冷静に、類としての人間に、何が大事かということを、もう一度考えてみる必要があるということだと思います。この2つの作品は、そのことに気付くヒントとなると思います。 

 

現在の学びのとらえ 

 今の社会の中での教育について、教育は文化であると常々考えています。教育は政治のおもちゃでも、経済の道具でも、何でもありません。教育は文化そのものです。文化、表現形態。そう考えたときに、経済がこうだから、教育はこうあるべきだというのは、筋違いだと思いますし、政治がこうだからそれに従ってというのも違うと思います。教育は一人ひとりの大切な表現のありようです。そのような意味で、教育の位置づけを考えてみる必要があります。先ほど紹介した「君たちはどう生きるか」の世界と、「この世界の片隅に」という作品から80年経ちました。本当に人類は進歩したと言えるのかというのは、非常に心許ないところがあります。土台であるものの見方や考え方がしっかりとつくれないまま、高い建物を築こうと焦っているように思います。この危うさ自体を俯瞰できるような道具立てが学びではないかと思います。社会づくりの基盤、そして社会の形成者を育てるという側面も必要です。しかし、それよりむしろ学び合い、育ち合った、その先に社会が結果的につくられていく、未完のプロセスを一緒に若い人たちとつくっているという、そういうイメージで教育をとらえてはどうかということです。
 わたくしたちは後期近代の中にいて、個人もやはり自分を常に改めながら、自己更新をしていかないといけないと錯覚させられている時代です。同様に、社会も常に更新していかなければならないと考えられています。これはギデンズの考え方ですが、ジョック・ヤングの考え方でとらえると、また違った姿が見えてきます。それは、他者化がどんどんすすんでいく、強い個人をつくろうと努力していく、社会を発展させるために強い個人をつくっていこうとしているのですが、それによって、分断されていくという、そういう自己矛盾に陥っているというのが、特徴であると思います。このような視点から、学習指導要領のベースになった中教審答申の考え方を見てみると、「正解のない問いに向き合う」とあります。まず一番重要なメッセージはここだと思います。しかし、このカリキュラムをめぐる留意点として、一元的で単純化された現状認識から出発した議論であるというところがあります。現実社会、子どもたちが抱えている状況は、貧困であり、生きにくさがあります。貧困というのは経済的な状況だけでなく、困っている状態が、とても広がっていて、それは、ある特定の人たちに集中しているところがあります。新学習指導要領には互いに異なる背景も大事にしなさいとは書いてありますが、しかし、それも単なるカテゴリーになっています。また、個人の資質・能力をのばすことはとても重要ではあるのですが、そこにあまりにも焦点化されると、互いに学校で学んでいることの意義が希薄化するおそれもあります。そして、浅い人間観、世界観にもとづいて、競争に敗北するという不安をどんどん煽っているという状況があります。そうすると、不安を解消するための学びという、非常に後ろ向きな設定になってしまいます。また、これからは、学校で学ぶとは一体どのようなことかを、問われる時代になると思います。「ITでやれる」「ネットで動画を見て、勉強はできる」というようにです。しかし、それでもやはり、学校はすごいところだとわたくしは思っています。一緒に学ぶということの意味はとても大きいです。なぜ一緒に学んでいるのかということを、今一度考え直してみる必要があり、それを形にしていくことがカリキュラムをつくる上でも必要だと思います。それから、教員や子どもたち自身が学校づくりの主体として動かないと、先ほどのような自己矛盾をはらんだ悪循環に陥ってしまうということにも注意が必要です。

  

対話が生まれる学び

 それから、アクティブラーニングです。今、世の中では、アクティブラーニングでなければ授業でないというような、変な空気がつくられているように思います。今までの実践も、十分アクティブラーニングと呼べるものはたくさんありました。それを振り返っていくということが必要です。学びの単元ごとに各教科で対応できるので、おそらくアクティブラーニングは浸透しやすいし、あるいは入試と一貫させながらすすめるという方針であり、広がっていくこととは思います。ただ、課題としては、リアルな社会を子どもたちが経験しているかという点です。総合的な学習の時間の授業は確かに、今、軽視されていますが、当時は、リアルな社会と出会わせるということを、試みようとしていました。異質な他者と出会って、自身が揺さぶられていく経験を捨て去るところに深さはないだろうと思います。そして、わかったつもりになるという危うさだけが残ってしまうのではないかと考えています。
 評価の留意点もここで紹介しますが、ベースはやはり直線的・機械論的な世界観にもとづいているのではないかということです。ある高校で、ルーブリックを利用した取り組みがされていました。そこに通う1人の生徒が「わたくしはこうではないことも思いついたり、そうではないことを大事にしたい」と言いました。ルーブリックの観点上にはないところに、大切な子どもの発想がありますが、わたくしたちは、その物差しで子どもの成長を見なければいけないという思考に逆転してしまいがちです。違う事例が出てきたときに、それをよりよい形で授業に取り込んでいくのが、まさにいい授業のつくり方なのですが、それができなくなってしまいます。先生方は忙しいので、すっきりした方が受け入れやすいんですね。でもそれは、まんまと今の時代の罠にはまっているのではないかということです。「見える化」というのは対話をうながすツールです。「見える化」をするから脳の認知過程が外側に出される。外に出てくるから、対話が始まっていくわけです。対話が生まれてくるところに一番重要な意味があるはずなのです。しかし、それが従来的な発想だと、個人の力をどうやってのばすかというような話になって、話題から外れてしまう。それはとても怖いことです。

  

新しい取り組みからの示唆

 新しい取り組みを時代を先取りして実践していた学校があります。わたくしが、20年余りかかわらせていただいている大阪府立松原高等学校です。この学校を少し紹介しながら、深めていきたいと思います。なぜ、高校かといいますと、小・中学校で取り組んできたことが高校ではこのようにつながるという、イメージをもっていただきたいからです。これは、アクティブラーニングなどの議論以前に、子どもたちの現実と真剣に向き合って、地域も含めて、どのように学びをつくっていけばよいかということを真剣に考えて行ってきた取り組みです。
 松原高校は1996年に総合学科ができました。そして、「産業社会と人間」と、「課題研究」という学習があり、子どもたちは、そこで大きく成長しました。さらに、優しい力という概念をつくって、みんなで共通のビジョンをもって取り組んできました。これらはすべて、学校側が生徒に何ができるかということを中心に考えて、向き合って、ずっと育んできたものです。リアルな学びとして、「課題研究」などで、具体的に生きている人たちの声を聞きながら、自分たちの学びを深めていくという取り組みになっています。それから、「しんどさ」を切り捨てない仲間づくりです。これは、今の時代では忘れられがちなことですが、「みんなの課題なので、『しんどい』ことを1人に背負わせるのではなく、一緒に考えていく」というスタイルです。『しんどい』子を中心に学校をつくっていく。社会を本当に、どのような人もみんなで一緒に生きていくものにするのであれば小・中学校のみならず、高校、大学においても、そういう形でなければおかしいはずです。また、そこでご尽力されていた方は「『しんどい』教員、家で介護しているとか、子育てで保育所に行かなければいけないとか、そういう教員を他の教員が具体的にサポートする関係、それがあったから、何とかやっていけた。それがなかったらたぶん潰れていた。それが一番大事なところだった」と振り返っています。
 そして、一番重要なのは実践的な背景です。日本には事業所での体験学習など、さまざまな実践的なものをベースにした取り組みがあると思います。おそらくみなさんの周りにもそれに近いものはあるし、そのような学校かどうかで分けるのではなくて、授業の中でもあり得ると思います。そのような取り組みは、今まで当たり前に行われてきた実践と、新しく生まれてきた実践を対話させ、さらに、自分の中の理論と新しく築いた理論を対話させて、その中から生まれてきたものだと思います。そのようにしてできてきた実践があるにもかかわらず、教育改革というと、こんな人間にならなければいけない、こんな人間に育てようと国がいってきます。それに従って、各自治体へおろされていく。各学校はそれに従って、本当に真面目にそれを実行していきます。最後は教員も個人評価されます。生徒も個人評価されます。どこまでやったかをチェックされるという形の客体なのです。主体的学びといいながら、客体であるという矛盾があります。そうではなく、これまで述べてきたように、人間というのはさまざまなできないことがあるわけです。それから、社会は常に正しいわけではありません。間違っている部分もあります。そういうことを前提にしながら学んでいくということが、これからの時代、それこそ答えのない問いと向き合うと言うのであれば必要となります。また、そのようなプロセス、総合的に主体が変容するようなプロセス、主体が客体に落とされるのではなく、主体どうしが出会って、変わっていく、というプロセスが重要ではないかということを、実践に学ばせていただきながら、わたくしは「主体」「相互的(なかかわり)」「変容」という3つの要素を中心にして理論にしています。基本は、人と人が出会う、他人事と自分事を重ねるということであると思います。

 

おわりに

 最後にいくつかお伝えしたいと思います。1つは、わたくしたちはどうしても「力をまずつけなさい」「そうすると活動ができるようになる」「そうすれば意味もわかるようになる」この方向性で考えてしまいがちです。家庭教育の上でも陥りがちなところですが、意味がわかるようになるために「力をつけなさい」「だから今がんばりなさい」と言ってしまいます。大学生も同じです。「就活のために、コミュニケーション能力をつけないと将来大変だから」と、がんばってやっているのですが、これは、大体違うと思います。本当は意味が先にくるべきです。その人にとって意味あることが見つかれば、自然に活動していきます。その活動の結果、力がついてくるということです。これからの教育改革の方向が、子どもたちが何が大事かということを考える力をつけたり、活動をすることの意味を見つけたりするための取り組みであってほしいと思います。それを許すような余裕が人を育てていくと思います。子どもの時間を大事にしようということです。子どもの時間、本当はもっと自由な時間があったのに、直線的な時間で組み立てて、大人が、どんどん奪っていくわけです。そうすると自由な発想はどんどん失われていきます。仲間との関係も薄くなっていくということです。それから、わたくしが言い続けてきたことで、ゼミの学生が互いに世代を超えて共感できる言葉がようやく見つかりました。先ほど紹介した、「他人事≒自分事」です。他人と自分は、基本的に人として尊敬し合う関係であるけれど、違う存在です。子どもであれ、教員であれ。けれど、それを互いに重ね合って、揺さぶり合いながら、自分も変えながら、互いに成長していくということを、人類は大事にしてきました。それを見失わないように、学びをデザインしていく必要があると思います。
 

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21世紀をになう子どもたちのために-ともに育もう 豊かな心と 自分らしく生きる力を-

2018/10/07

第65回 愛知母と女性教職員の会

 10月7日、保護者と教職員、約250人の参加のもと、愛知母と女性教職員の会が開催されました。全体会では、提案及び講演が行われ、それらを受けて分散会が行われました。子どもたちの健やかな成長を願い、保護者と教職員が熱心に語り合いました。

 

女性部提案:「男女が自立し、ともに生きる力をどう育てるか」
         -自分らしく生きることを考える実践を通して- 

 中学校三年生の実践報告では、短所をリフレーミングし、見方を変える活動を通して、長所と短所は表裏一体であることに気付き、ありのままの自分を受け入れ、自分らしく生きることの大切さを意識する子どもの姿が報告されました。また、価値観を伝え合う活動や、互いを認め合う活動を通して、積極的に仲間とふれあう子どもの姿が報告されました。

 

講演 【演題】   「戦わないコミュニケーション! ~怒りの感情とうまく付き合おう~」
    【講師】    山﨑洋実さん   

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 講師にコミュニケーションコーチの山﨑洋実さんをお迎えしました。山﨑さんは、子どもたちが自分らしく生きるための、子どもに対する大人のかかわり方について、お話をされました。「『やりなさい』という言葉で子どもが言うことを聞く年齢のピークは5歳であり、それ以上の年齢になるとだんだんと外からの力では動かなくなる。人間は『感情の動物』であり、目標や夢をもち、自分で決めたことに、すすんで行動できるように支援することが大切」ということををご自身の豊かな経験を交えながら伝えられました。「思春期の子どもは、その日の気分で言動が変わる。その言動に対して、戦わず、遊び心をもって軽やかにかわすことが大切」「過去と他人は変えられない。変えられるのは自分と未来だけ」「人間はYESをたくさん欲しい動物。YESで返すことで、子どもの自己肯定感が高くなる」「人は自分が育てられたように人にも接する」などのメッセージは、多くの参加者の心に響きました。参加者一人ひとりが、日々向き合っている家族や子どもたちを想いながら、子育てやこれからの生き方について考えるひとときとなりました。

 

分散会:「心に寄り添い育もう 自分らしく生きていく力を」

 女性部提案や講演を受けて、「自分らしく生きるとはどういうことか」「子どものために、親として教職員としてできることは」という観点で、グループ討議が行われました。自分らしく生きることに対しては、まず、「自分を知ることが必要」「ありのままの自分のよさや他の人とは違う個性を認めていくことが大切」「自分の思いを出すことだけにとらわれなくてもよい」などの意見が出されました。そして、目の前の子どもたちに対して、「子どもの様子や状況をまず見て、寄り添うことが大切」「辛いことをともに悩み、辛さを受け止め、一緒に解決していこうとする姿勢が大切」「子どもの居場所や活躍の場をつくることが必要」など、親として、教職員として、どうあるべきかを考える場となりました。
 

 

参加者の声 

  •  「自分らしく生きていく力」を育むためには、まず、子どもたちの自己肯定感や有用感を高めることが大切だと感じた。ありのままの自分でもよいということに自信がもてるよう子どもたちと接していきたい。

  •  物事のとらえ方を変えるだけで、楽しく見えてくることがわかった。日頃から、意識していこうと感じた。

  •  今までの自分は子どもとよく「戦って」しまっていたと感じた。自分の気持ちをコントロールしていくためにも、リフレッシュする時間をつくっていきたい。

     

アピール採択

 最後にアピール採択委員により、集会アピールが読み上げられ、採択されました。この集会アピール文は、後日、県教育長にも提出しました。

集会アピール 

 

 

 子どもたちが夢や希望をもち、笑顔あふれる毎日を送ることができるために、わたくしたち大人は何ができるのでしょうか。

 わたくしたち愛知の母親と女性教職員は、「わが子・教え子を再び戦場に送るな!」のスローガンのもと、子どもたちの幸せと健やかな成長を願い、「愛知母と女性教職員の会」に集い、話し合いを通して考えを深めてきました。

 しかし、平和にかかわる国の情勢は、スローガンに込められた わたくしたちの願いとは逆行し、危機的な状況にあります。わたくしたちは、改めて子どもたちと平和を守るという、母女運動の原点に立ち戻る必要があるのではないでしょうか。

 子どもたちは、一人ひとり無限の可能性を秘めており、その可能性を伸ばし、豊かな人生を歩もうと生まれてきました。しかし、さまざまな課題を抱える現代社会において、子どもたちをとりまく環境が大きく変化し、自分のよさが見出せなかったり、よりよい人間関係を築けなかったりする子どもがいます。また、自分に自信がなく、将来に夢や希望をもつことができない子どもも少なくありません。そして、それは子どもたちだけでなく、子育てや将来などに不安や悩みを抱える大人も同じです。

 子どもたちは、目の前の大人の姿を通して、将来を見つめています。21世紀をになう子どもたちのために、互いを尊重し合い、自分らしく輝ける社会の実現をめざして、今こそ、ここに集うすべての大人たちが手と手をとり合い、支え合っていこうではありませんか。

           

ともに語り合いましょう

       夢と希望あふれる 子どもたちのかけがえのない未来を

 ともに育んでいきましょう

       豊かな心と 自分らしく生きていく力を

 そして、築いていきましょう

       互いを 尊重し合う 笑顔あふれる社会を

 

 わたくしたちは、子どもたちの幸せと健やかな成長を願い、すべての大人が子どもたちの心に寄り添い、ともに自分らしく輝くことができる社会の実現にむけて、未来へつなぐ、確かな歩みを続けていくことをここに誓います。

 

    2018年10月7日

  第65回 愛知母と女性教職員の会

 

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子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-学校における自殺予防教育のすすめ方-

2018/08/18

第37回 愛教組連合養護教員研究集会

 県内各地の女性部長と養護教員約300人の参加のもと、愛教組連合養護教員研究集会が開催されました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして―学校における自殺予防教育のすすめ方―」をテーマに基調提案・意見交換・講演が行われ、学習を深めました。

基調提案「養護教員をとりまく情勢と課題について」

 子どもたち一人ひとりにきめ細かな対応をしたり、健康教育を充実させたりしていくためには、養護教員の複数配置の拡大や妊娠した養護教員の負担軽減措置などの拡充が重要である。
 県内の養護教員が一堂に会するこの機会に、互いに情報を共有し、養護教員にかかわる制度の拡充にむけ、ねばり強く取り組んでいきたい。

 講演会
【演題】「子どもたちのいのちを守るために わたしたちができること」
【講師】加古川市教育委員会学校支援カウンセラー 阪中 順子さん   

生き心地のよい学校・学級を

 学校や学級において、凝集性と多様性とのバランスをどうとるかは難しい課題である。例えば、休み時間は外で元気に遊ぶという学級のルールがあったとしても、守れない子どもに無理強いするのではなく、「今日はちょっと休んで、明日一緒に遊ぼうね」などの緩やかなかかわり方をして、その上で外に出たくなる工夫をすることが求められている。学校・学級は子どもたちにとって自己効力感や有用感を高め、援助希求できる環境であることが大切である。「弱みや悩みを見せるのは恥ずかしいことではない」「見せたら誰かが助けてくれる」と思える雰囲気が大切である。生き心地のよい学校・学級づくりは、このような日々の積み重ねによって可能となり、自殺予防につながっていくのではないだろうか。 

 

どもの自殺の実態

  小学生の自殺者数は、年間10人から20人、中学生は100人前後、高校生は200人を超えることが多い。中高生の自殺率は増加傾向にあり、自殺についての報道があったときなどに自殺率はさらに上がる。思春期の子どもは影響を受けやすいため、群発自殺、自殺の連鎖につながりかねない。思春期の子どもたちは、理想と現実とのギャップの中で自尊感情や自己肯定感が低減し、悩みを抱えやすい。しかし、悩むことは成長のきっかけにもなる。思春期の子どもたちが安心して悩むことのできる環境こそが必要である。そのため、学校が安心して悩むことのできる場になることが望まれる。
 大人は子どもの話に真剣に耳を傾け、1対1の信頼関係を築き、安心できる環境づくりをすすめることが大切である。

 

「命を大事にしなさい」は要注意

  子どもたちに自分の価値観を押し付けないように気をつける必要がある。授業で、「命を大事にしなさい。リストカットはだめ」などとは言わないようにしている。ここ数年自殺者数は減ってきたとはいえ、最近20年で自殺者数は50万人近くになる。自死遺児が教室にいるかもしれない。
 また、自傷行為をする子どもは、10人に1人と言われている。学級に自死遺児や自傷行為をしている「ハイリスクな子ども」がいる可能性を考慮する必要がある。死がよぎったとき、大好きな先生から、「自殺は絶対だめ」「命を大事にしなさい」「自分を傷つけてはいけない」と授業や保健室で言われたら、「ハイリスクな子ども」は、援助希求できるだろうか。その子の自尊感情はどうなるだろうか。「生きたい」と「死にたい」の間を行き来しているときに、正論や励ましは「理解してもらえない」と、より無力感・死にたい気持ちを増幅させるかもしれない。子どもの気持ちを理解しようとすることこそ、生きたい気持ちを支える。まずは、寄り添うことが求められている。どうしたら危機を乗り越えられるのか、どうしたら友だちや先生、両親に心の危機を伝えることができるのか。そのことを一緒に考えることが自殺予防教育ではないかと考えている。

 

自殺予防教育は寝た子を起こす?

  自殺予防教育を行うことによって、子どもに自殺の選択肢を与えるのではないかという不安の声を聞くことがある。しかし、子どもたちは、もうすでに「目を覚ましている」。そして、「ハイリスクな子ども」ほど危険なサイトにアクセスし、ときには誤った情報を含む知識を得ている。「友だちに、死にたいと言われたことがあるか」の問いに、17.2%の中学生が「ある」と答えている。そのとき、どう対応したのかを聞くと、3分の1の中学生が「どうしてよいかわからなかった」「笑って済ませた」などと答えている。大学生に調査しても、4分の1が「わからない。支えられない」と答えた。このような状況で、自殺予防教育をすることをためらっていてよいのだろうか。
 自殺予防教育では、友だちに相談され、友だちの心の危機を感じたら、「信頼できる大人に伝えて」と話す。「きょうしつ」というキーワードを覚えておいてほしい。          

   
   

…気付いて

…寄り添い 

…受け止めて 

…信頼できる大人(専門機関)に   

…伝えよう

  
   

 わたしたちができること

 自殺予防教育の実施には、教員や保護者が正しい知識をもち、連携することが大切である。命にかかわることは、地域の専門機関、相談機関、医療機関とつながり、情報を伝え合う必要がある。学校内では、子どものSOSに気付くために、組織としての工夫をする必要がある。研修などを通して個々の感性を磨くとともに、教職員が相互に連携をすることによって、アンテナが高くなり、子どもたちの変化にいち早く気付くことができるようになる。そして、大人自身が多くのネットワークをもっていることが大切である。「1人がいい」と言う子どもには、友だちや信頼できる人を求める気持ちが潜んでいて、親のことを「嫌い」と言う子どもには、親を求める気持ちが潜んでいるという視点に立つことが大切である。また、子どもが言う「大丈夫」という言葉のむこうにあるものを理解する必要がある。
 死にたいという気持ちの原因を率直に尋ねてもよい。子どもが辛さを話すことで、その押し込めた気持ちが解放され、楽になったり解決策が見えたりすることもある。子どもたちが援助を求められる環境、安心して自分の弱さを開示できる環境を、わたしたち大人が整えていくことが必要である。そして、子どもたちの心の声を聞こうとする姿勢、理解しようとする姿勢が何より大切である。

 

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子どもたちのための教育改革を - 3.子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして-

2018/06/15

 進学を希望するすべての子どもたちの願いをかなえるためには、今後も入試制度の改善をしていく必要があります。
 また、子どもたちの多様な希望や個性に応じた、魅力ある高校教育の実現にむけた改革をすすめていく必要があります。

よりよい高校入試制度にむけて

3-1イラストB

(2017年度 愛教組による保護者の意識調査より)

魅力ある高校教育の実現にむけて

3-1

(2017年度 愛教組による保護者の意識調査より)

 

 

 

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を - 2.ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして -

2018/06/15

 愛知県では、国による小学校第1学年のほか、小学校第2学年、中学校第1学年において35人学級が実施されています。
 しかし、いじめや不登校、特別な支援や日本語教育を必要とする子どもたちへの対応など、学校現場には教育課題が山積しており、子どもたち一人ひとりにきめ細かな教育を行うことが大切です。
 そのためには、少人数学級の拡充や正規教員の定数増が必要不可欠です。
 すべての子どもたちにゆきとどいた教育を行うため、教育条件整備をいっそうすすめていく必要があります。

少人数学級のよさ

 2-1

(2017年度 愛教組による教員の意識調査より)

おかあさん                                   (2017年度 愛教組による保護者の意識調査より)

少人数学級について望むこと 

2-2-12-2-2

(2017年度 愛教組による保護者の意識調査より)

学校現場で、特に対応を必要としていること

 その他学校現場

 

 

 

(2017年度 愛教組による教員の意識調査より) 

 

小学校外国語教育の実施にあたり、必要だと思われること

外国語 クリップ

  (2017年度 愛教組による教員の意識調査より)

 

 

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を - 1.「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして-

2018/06/15

 「生きる力」とは、基礎・基本の習得はもちろんのこと、今までに得た知識や経験をもとに、自ら課題を見つけ、判断し、行動する力、学ぶ意欲も含めた総合的な力です。
 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育を行うためには、学校・家庭・地域が今まで以上に強く手を携え、地域ぐるみの教育をすすめていく必要があります。

学校教育に望むこと

1-1A

(2017年度 愛教組による保護者の意識調査より)

 地域ぐるみで子どもたちを育てるために

1-2C                                                               (2017年度 愛教組による保護者の意識調査より) 

 「学ぶ喜び・わかる楽しさ」を保障する教育をめざして

  • 子どもたちの健やかな成長を願い、子どもたちを中心にすえた職場ぐるみの教育実践に取り組んでいます
  • 家庭・地域でのふれあいを深める活動や子どもたちの体験活動の充実をはかっています
  • 保護者などの参加も得て、教育研究愛知県集会を開催し、より開かれた教育研究活動の推進につとめています

 

 

 

 

 

 

 

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を

2018/06/15

 愛教組は、これまでも子どもたちの健やかな成長をめざし、夢と希望あふれる教育の創造にむけて教育改革運動を推進してきました。学校現場では、人・自然・文化などとのかかわりを通して、さまざまな事柄に関心をもち、意欲的に課題解決しようとする子どもたちの姿がみられるなど、教育実践の確かな成果があげられています。また、教育研究愛知県集会の特別集会や各地区における教育対話集会、教育実態総合調査などを展開し、教育課題の克服にむけた手だてなどについて保護者・県民との対話や共通理解につとめてきました。また、豊かな教育を創造する県民会議とも連携して、啓発活動を強化してきました。
 こうした取り組みの経過をふまえ、2018年度の教育改革運動については、これまで通り「子どもたちの健やかな成長をめざす取り組み」を中心にすえ、夢と希望あふれる教育の創造にむけて、保護者・県民・教育関係者とともに学校・家庭・地域との協働を見据え、それぞれの連携を引き続き強化し、地域ぐるみの教育改革をすすめていきます。
 そのために、以下の3点を教育改革運動の重点として掲げ、教育制度・教育内容の改革をはかる運動を強化していきます。

  
1.  「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
2.  ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
3.  子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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スポーツ・文化的活動を通して地域で子どもを育てよう

2018/01/10

 スポーツ・文化的活動は、本来、生涯学習という観点から、地域を主体として行われることが望ましいと考えます。

 しかし、現状は主に部活動によって行われています。そのため、当面は部活動の諸問題解消をはかるため、部活動指導員を設置するための条件整備や外部指導者の配置などを含めたスポーツ・文化的活動のあり方を検討していきます。また、総合型地域スポーツクラブをはじめとした社会教育活動の充実を求めていきます。

子どもたちの願い

外部指導者・部活動指導員について

 2016年度まで、文部科学省の委託事業として外部指導者の派遣を行っていた「運動部活動指導の工夫・改善支援事業」が廃止となりました。そのため、市町村の予算で外部指導者を派遣しているのが現状です。一方、2017年3月に「部活動指導員」が制度化されました。部活動指導員は、単独での指導や大会の引率等を行うことができ、子どもの技術向上も期待されています。愛教組は、部活動指導員の設置や外部指導者などの配置拡大について、必要な条件整備をすすめるよう求めていきます。

(2017愛教組青年部実態調査より)

総合型地域スポーツクラブについて

  •  身近な施設を拠点に、地域住民が主体的に運営します。
  •  複数の種目があり、年齢、興味・関心、技術レベルに応じて参加できます。
  •  ボランティア指導者から専門の指導者まで、子どもから高齢者までのさまざまな世代の会員のニーズに対応します。
  •  活動を通して世代間交流や友だちのネットワークが広がり、地域の教育力向上につながります。


                                                             

                                                   (2017愛教組青年部実態調査より)

 総合型地域スポーツクラブは、2017年12月現在、愛知県では、54市町村中51市町村で131のスポーツクラブが活動しています。

 

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