子どもたちの健やかな成長を

21世紀をになう子どもたちのために - 育もう 自分らしく生きる力を みんなちがって みんないい -

2010/10/09

第57回 愛知母と女性教師の会

 愛教組は、保護者と教員約270人の参加のもと「愛知母と女性教師の会」を開催しました。女性部提案と講演の後、5つの分散会にわかれて「自分らしく生きるとは」「子どものために親として大人としてできることは」などについて話し合いました。

内容

女性部提案「男女が自立し、ともに生きる力をどう育てるか」
-自分らしく生きることを考える実践を通して-

 小学校6年生の実践では、「自分らしさを大切に、互いのよさを認め合い前向きに生活できる子をめざして」をテーマに、自分らしさを生かしたボランティア活動を通して、前向きに行動する喜びを味わい、自分に自信をもてるようになった姿が報告されました。
 中学校3年生の実践では、「自分らしさを大切にし、男女がともに生きる社会生活を営もうとする子をめざして」をテーマに、男女共同の育児について話し合う活動や進路指導を通して、自分らしい生き方について考え、互いを尊重しながら生活する大切さに気付いていく姿が報告されました。

参加者の声
  • 小中学生でも性別による固定概念をもっていることを改めて感じました。子どもが思っているということは、親や社会がそうだからかなと思い、反省しました。「男だから」「女だから」ではなく「その子らしさ」を大切に育てていきたいです。男女が手を取り合って、足りない部分は補い、支え合っていける世の中にしていきたいです。(保護者)

講演の概要 「夢見る力を信じて」
【講師】作曲家・演奏家 前川裕美さん

ゼロではない

 網膜色素変性症の患者は、日本には約5万人いると言われています。2000人から3000人に1人の割合ですから、珍しい病気ではありません。
 わたくしの目はしっかり開いており、目に動きもあるため、周りから「目が不自由な人には見えない」と言われ続けてきました。以前はもう少し見えていましたが、今はほとんど見えていません。
 みなさんの中には「目が不自由­=まったく見えない人」と想像する方が多くみえるのではないかと思います。しかし、実は視力0(ゼロ)と0.01の間には三段階あります。指数弁といって、目の前にある指の数を数えられるかどうか、手動弁といって、目の前で手を振られて見えるかどうか、そして、光覚弁といって、光が見えるかどうかの三段階です。わたくしは、今、指数弁と手動弁の辺りだと思っています。ということは、まったく目が見えていないわけではない、視力ゼロではない、ということを理解していただきたいのです。
 わたくしは携帯電話でメールも読みます。黒い背景に白い文字であれば、ずいぶん読みやすくなります。視力はかなり落ちており、視野もかなり狭いため、一文字読むのにとても時間がかかります。しかし、まだ目が見えるということが、とてもうれしいのです。「まだ見える」と思える、貴重な瞬間なのです。ところが、これが誤解を生んで「あの人、盲導犬連れているのに携帯いじっているよ」というような声が聞こえてくることがあります。
 いつか自分の目が見えなくなることはわかっています。それが2年後か、もしかしたら、運よく10年後も目が見えているかもしれません。しかし、確実に病気が進行していることはわかります。だからこそ、あるとき「今読まなきゃ、今見なきゃ、今見えるものを見なきゃ」と思ったのです。それ以降、周りからいろいろな声が聞こえてきても「こういう人もいますよ」と気にしないようにしています。

リミットをつくらない

 「メモリー」という曲は留学中に、本格的に勉強した曲ですが、わたくし自身にとっても、ターニングポイントになった曲です。英語の発音に関して、わたくしの場合は、鏡に映る口の形、舌の位置などはよく確認できません。だから「普通に努力している人にはかなわないんじゃないか」と心の中で思っていたところがありました。しかし、声楽の先生に「もっと上をめざしましょう。あなたにはできるから」と言われたのです。そして、先生が一つ一つ事細かに言葉で説明してくれたんです。すると、本当に手に取るかのように、英語の発音の仕方がわかるようになって、実際に発音してみると、出したいと思った音が出るようになりました。「わたくしにもできるんだ」と本当に感動しました。それまでも、わたくし自身は、ずっとずっと努力してきたつもりだし、できることは自分でしたいと思っていましたが、おそらく心の中で、知らない間に「ここまでかな」とリミットをつくっていたのです。そうやって自分で壁をつくるのは、もうやめようと思いました。やはり、その先にたどり着きたいと思えば着けるし、それを可能にしてくれる人がいるということ、そういう人に出会えたということで、ずいぶん道が開けたような気がしました。

言葉の力

 アメリカに行き、充実した音大生活を送ってはいましたが、病気の進行は止まらず、ますます目が見えなくなっていきました。そして、ついに、自分の生きがいであった自筆で楽譜を書くということすらできなくなりました。ここで諦めるべきかどうかとても悩みました。
 そんなとき、アメリカ人の友人に「あなたがすべきことは、あなたが今、何ができて何ができないのかを自分で理解すること。そして、一番大切にすべきことは、自分が何をしたいのかを、周りの人たちに自分の言葉で伝えることだよ。わたくしたちはその言葉を待ってるんだよ」と言われたのです。もやもやとしたものが、一気に晴れていくような気がしました。

自分を信じて

 「星から降る金」。この金というのは、チャンスという意味です。モーツァルトの才能を高く評価していた男爵婦人が、モーツァルトのことを手放そうとしない父レオポルトに対して、あるおとぎ話を例えに「子どもを旅立たせてあげなさい」と語りかけているという内容です。
 わたくしが今、自分らしくいられるのは、自分を信じて自分がしたいと思ったことを貫いているから、そして、それを寛大に受け止めてくれている周りの人たちがいるからだと思っています。
 子どもたちに対しても「自分で壁をつくらずに、自分を信じて、がんばっていけば大丈夫だよ」と言ってあげれば、きっと夢にむかって前向きに努力していくのではないかなと思います。

参加者の声
  • 「普通」「~でなければ」ということがバリアになっていることに改めて気付かされました。多くの人が、自分らしく、幸せに生きられる世の中にしていくために、自分にできることを少しずつでもがんばることが、人のためにもなり自分のためにもなると感じた講演でした。(教員)
  • 「くり返し、くり返し」「待っていてあげる」という2つの言葉が心に残りました。子どもを信じて、ブレーキばかりかけず、任せていってもいいのかなと感じました。前川さんの強さや明るさの根っこには、受け止めてくれる家族の存在や支えがあると思いました。自分も子どもたちを温かく包んであげたい。(保護者)


      講演する前川裕美さん

分散会
「育もう 自分らしく生きる力を みんなちがって みんないい」

 女性部提案や講演を受けて、5つの分散会にわかれ、「自分らしく生きるとは」「子どもたちのために親としてできることは」などについて話し合いました。 

参加者の声
  • 大人も、もっと人とつながり合うべきだと思います。そうすれば、社会が、未来が変わると思いました。大人がみんなで子どもたちを育んでいく世の中にしていかなくてはと思いました。(保護者)
  • 学校では、自分らしさや個性を大切にすることはもちろん、集団の中で自分のよさを生かすことができる力、他の人の個性も大切にしていくことができる力を育んでいきたいと思いました。(教員)
  • 親として、子どもにできることは、「応援する」「見守る」「信じる」ことだと思います。いろいろな人といい出会いができるように手助けをしていきたいです。(保護者)

「これから私は!宣言」

 分散会での話し合いの後、意見交換をしながら得たことや思ったことを「これから私は!宣言」としてまとめました。いくつかを紹介します。

  • 自分らしく生きることは、まず、人を理解すること。多様な考えを認め合える学級をつくっていきたい。(教員)
  • 「自分らしさ」を理解することにつながるように、「あなたのよさは○○だよ」と、どんどん声をかけたい。(保護者)
  • 前から引っ張っていくのではなく、振り向けば近くにいる…そんな親でありたい。(保護者)

アピール採択

 最後に、アピール採択委員により、集会アピールが読みあげられ、採択されました。 この集会アピール文を、11月に県教育長に提出しました。

集会アピール

 「愛知母と女性教師の会」は、「わが子・教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、子どもたちの明るい未来と健やかな成長を願って、半世紀にわたり、話し合いを続けてきました。
 子どもたちは無限の可能性を秘めています。わたくしたち親と教師の願いは、子どもたちが未来に夢や希望をもち、瞳を輝かせて生きることです。しかし、現代社会の中では、人間関係が希薄になってきており、孤独を感じたり、自分に自信をもてなかったりする子どもたちが少なくありません。また、子どもたちだけでなく、多くの親や教師が心に悩みや不安を抱えて生活しているのです。
 子どもも大人も、自分のよさをみつけ、自分らしく輝きながら生きることが大切です。お互いを認め合い、それぞれのよさを生かしながら支え合う、やさしい社会をつくっていかなければなりません。
 子どもたちは目の前の大人の姿を通して、将来を見つめています。だからこそ、子どもたちがより多くの人々とつながり、信頼し合い、ともに生きていくことができるよう、わたくしたち大人が手をとり合い、支え合っていこうではありませんか。子どもたちの健やかな成長を願い、すべての大人が力を合わせて子どもたちを育んでいきましょう。

語り合いましょう
   子どもたちが生きる 未来の姿を

育んでいきましょう
   いきいきと 自分らしく生きる力を

築いていきましょう
   人と人とが手をつなぎ合い、お互いを認め合うことのできる社会を

 21世紀をになう子どもたちのために、人と人とが心を結び合い、ともに生きる社会を実現していくことをここに誓います。

2010年10月9日
第57回 愛知母と女性教師の会

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