子どもたちの健やかな成長を

子どもの心とからだの健やかな成長をめざして - 適切な心のケアのすすめ方 -

2011/08/20

第30回 愛教組女性部養護教員研究集会

 愛教組は、県内養護教員と単組(支部)の女性部長の参加のもと、愛教組女性部養護教員研究集会を開催しました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-適切な心のケアのすすめ方-」をテーマに基調提案・意見発表・講演を行い、学習を深めました。

内容

基調提案「養護教員をとりまく情勢と取り組みについて」

 子どもたちが安心して保健室を訪れることができ、養護教員が一人ひとりの子どもにきめ細かな対応をするためにも、複数配置の拡大にむけ、今後もねばり強く取り組んでいきます。妊娠した養護教員の負担軽減措置については、現場の実態に合った制度となるよう、充実にむけて関係機関に働きかけていきます。

意見発表

  • 本年度、妊娠した養護教員の負担軽減措置を活用した組合員から、健康診断当日だけでなく準備や片付けも手伝っていただき、たいへん助かったと聞きました。しかし、1日4時間以内では、どうしても補助に入っていただけない時間ができ、体に負担を感じたそうです。非常勤の方の1日の勤務時間を長くしていただければと思います。
  • 小学校ではスクールカウンセラーに来ていただける時間が限られていて、いざというとき十分な対応ができないという現状があります。相談を必要とする子どもや保護者は年々増えてきているので、スクールカウンセラーの増員を望みます。
  • 複数配置校では、救急処置のために来室する多くの子どもたちへの対応と並行して、個別に対応が必要な子どもへの支援も充実させることができます。一人ひとりの子どもに、きめ細かな対応をするためにも複数配置基準の引き下げと既配置校への継続保障を強く要望します。

講演の概要「災害・事件・事故発生後の子どもの心のケアについて」
【講師】中京大学心理学部教授 坂井 誠さん

穏やかな対応を

 東日本大震災の後、被災した子どもの心のケアが注目されていることとかかわって、トラウマやPTSDなどのことがちょっとしたブームのように扱われている。いろいろな情報が一度にたくさん入っている状態だと思うが、情報はきちんと整理し理解してもらいたい。トラウマに対する支援は、ことさら落ち着いて、安全感、安心感を与えるものでなければならないので、しっかりと自分のものにしてほしい。
 これから30年の間に80%を超える確率で東海地方に大きな地震が起きると言われている。そのとき多くの学校は避難所になり、教員は必ずかかわらなければならなくなる。自分たちも被災者であると同時に、支援する側にもなる。そのような状況の中でも、普段の職務と同様に、子どもたちに穏やかな対応をすることが必要である。

トラウマ(心的外傷)とは

 アメリカでのDSM診断基準によると、トラウマとは、「死ぬ、または重傷を負うような出来事、あるいは自分や他人の身体の保全に迫る危険を体験し、目撃し、または直面したことで心の傷となってしまうこと」となっている。これは極めて主観的で、人によって受け止め方が違うということを理解しておきたい。

PTSD(外傷後ストレス障害)の診断基準

 トラウマを経験した人が示す症状は主に次の3点である。この3つの症状が、4週間以上続いているときにPTSDと診断される。
(1)再体験反応
 自分では意識していなくても繰り返される想起や夢、フラッシュバックによって、トラウマになっているできごとが再び起こっているかのように感じる苦痛な体験。例えば、プールや風呂の水から津波を想像して、苦痛を感じるといったこと。
(2)回避と麻痺
 回避は、トラウマと関連した思考、感情、会話を避けたり、トラウマを想起させる活動や場所、人物から逃げたりすること。例えば、地震や津波の話をしない、海辺へ行かないといったこと。回避が続くとPTSDに移行しやすい。麻痺は、さまざまな活動への意欲の減退、孤立感、感情がフリーズした状態。
(3)過覚醒反応
 異常に興奮が続いている状態になり、入眠または睡眠維持が困難になる、感情が過敏になりいらいらする、突然パニックになるといった状態。

災害時のストレス

 災害時には、以上のようなトラウマによるストレスだけでなく、喪失のストレスがある。身内を失うこと、家を失うことなどによるストレスがこれに含まれる。その後、日常生活上のストレスがじわじわと襲ってくる。被災直後の、眠る場所、食べるもの、着るものなど衣食住の不足が少し落ち着いてくると、避難所でのプライバシー確保の問題とともに、仕事がない、住むところがないといった、その後の生活の問題が大きな不安になる。

学校でのケア 

 震災にあった子どもたちには初期から適切に対応する、そしてPTSDにせず、外傷後の反応として正常の範囲内に収められるようなかかわりをめざしたい。そのためには、情報を収集して、この子どもはどんな子どもかということを知り、普段と様子が違うことに気付き、早期に専門機関につなぐ、健康観察アセスメントが大切である。

かかわりの基本的態度

 心のケアという観点で被災後の子どもにかかわるときの基本的態度を紹介したい。
 まず、傾聴し、感情を受け止めること。「つらかったですね」「よくがんばりましたね」と気持ちを受け止め、穏やかに接したい。被災した人は、一人ひとりそれぞれ事情を抱えているが、あまり特別視することなく、普段と変わらない対応をしていくほうがよい。しかし、決して孤立しないよう、一人ぼっちにならないよう「あなたのそばには、わたしがいますよ」と安心感を与えることが大切である。
 それから、自責感を和らげること。生き残った人に罪悪感があるような場合、「あなたが悪いのではありません。自分を責めないで」と伝えていくことは絶対に必要である。

支援者のセルフケア

 災害後は支援者の誰もが無理をしがちになる。意図的に生活リズムを保ち、休養・睡眠を十分にとり、そして仲間どうしで互いをねぎらい、できれば気分転換をし、支援者自身の健康を守ってほしい。

参加者の声
  • 「穏やかな対応」という言葉が心に響きました。日々の生活の中で、心がけていきたいです。
  • 「教員は支援者であり、被災者にもなり得る」という言葉を聞き、自分ならどうするか、じっくりと考えてみたいと思いました。


        講演する坂井誠さん

カテゴリー:愛教組連合養護教員研究集会 →2022年以降の記事は愛教組連合ホームページへ, 子どもたちの健やかな成長を    

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