子どもたちの健やかな成長を

子どもの心とからだの健やかな成長をめざして- よりよい人間関係を築く力を育む支援のあり方 -

2012/11/01

第31回 愛教組女性部養護教員研究集会

 愛教組は、県内養護教員と単組(支部)の女性部長の参加のもと、愛教組女性部養護教員研究集会を開催しました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-よりよい人間関係を築く力を育む支援のあり方-」をテーマに基調提案・意見発表・講演を行い、学習を深めました。

内容

基調提案「養護教員をとりまく情勢と取り組みについて」

 本年度より、養護教員の複数配置既配置校における緩和措置が講じられました。また、妊娠した養護教員の負担軽減措置についても、活用期間の枠が外され、制度が拡充されました。子どもたちの健康課題が多様化している昨今、一人ひとりの子どもにきめ細かな対応をし、学校保健の充実をはかるためにも、複数配置の拡大と養護教員にかかわる制度のさらなる拡充にむけ、今後もねばり強く要望していきます。

意見発表

  • 大規模校では、来室者は1日20人前後になります。生徒からの相談には、じっくり話を聞こうと努力しています。一人ひとりの子どもたちに対してよりきめ細かな対応をするためにも、複数配置基準の引き下げを望みます。
  • 本校では、本年度児童数が減少し、複数配置基準を下回りましたが、緩和措置により複数配置が継続されました。しかし、措置の上限は2年なので、今後の児童数の変動により単数配置になることが懸念されます。児童数が少し減ったからといって来室者が減ることはなく、これまでと同様の対応ができなくなるのではないかと不安を感じます。複数配置基準の引き下げとともに、緩和措置の継続・拡充をぜひお願いします。
  • 妊娠した養護教員の負担軽減措置を活用し、非常勤養護教員には健康診断のあらゆる場面で補助に入ってもらいました。しかし、勤務内容は健康診断業務に限られているため、検診中に来室する子どもがいても対応することができません。今後、非常勤養護教員の勤務条件なども含め、制度の拡充を望みます。

講演の概要「子どもの心に寄り添うカウンセリングマインド」
【講師】子ども家庭教育フォーラムカウンセラー 荻野ゆう子さん

はじめに

 人とかかわる仕事は、悩むことも多いけれど、ほっとすることや嬉しいこともあり、そういう機会があるからこそ続けられるのだと思います。学校の中で子どもの心と体の健康を支えつつ、そして先生方自身がそこで成長していくという教師の仕事は、とても尊いものだと思います。

つらいときはつらいと言っていい

 「つらいときはつらいって言っていいんだよ」と周りの人には言えても、自分は専門家だから、人に悩んでいる姿を見せたり、つらいと言ったりしてはいけない、とは思っていませんか。でも、話を聞く立場である人も悩みを抱えているからこそ、相手の悩みに向き合い、気付くことがあるものです。そして、相手の話を聞きながら、自分自身の気持ちを整理することもできるのです。

せめぎあって折りあってお互いさま

 ある青年のカウンセリングの中で、いつの間にか話を聞く立場のわたくしが、彼に聞いてもらっていることに気付き、支援しているようでわたくしも支援されている、と感じた経験があります。相手の悩みをきっかけにして、お互いに支え、支えられていること、人間関係は1人で築いていくものではないことを実感することで、お互いのつながりが深まっていくのです。せめぎあって折りあってお互いさま。そうやってつながっていくことを子どもが先生方やカウンセラーとの人間関係を通して学び、人間関係を築く上での礎になっていく。そう考えると、そのときにわたくしたちが相手とどう向き合うかということが大切だと思います。子どもたちが人間関係を築いていく場を先生方やカウンセラーが提供していきたいですね。

人間関係を育てるカウンセリングマインド

 カウンセリングとは、人間関係を深めることだと考えています。カウンセリングマインドとは、人間関係に深くかかわっていくための心得であり大事にしたいことです。先生方には、きっと忘れられない子どもや人との出会いがあることと思います。そして、その経験の中から多くのことを学ばれたはずです。このように、人間関係を深めるための学びは、教科書からではなく、向かい合っている相手から学ぶものです。相手とのかかわりや、相手が自分に向けてくれる言葉のやり取りが、自分の中の教科書となり、今後に生かされていくと思います。

聞きすぎず、話しすぎず 

 カウンセリングは聞くことが大事であるとよく言われます。しかし、聞きすぎてしまうと、相談する側は自分の感情を出しません。一方で相談される側が話しすぎてしまうと、相談する側は話そうと思っていても言葉を閉ざしてしまうことがあります。聞きすぎず、話しすぎず、子どもとコミュニケーションをとるためには、聞き役を意識しつつ、自分の思いも語りながら相手が話すのを待つというやり取りが大事です。
 また、自分の気持ちを言いたいけれどなかなか言えない子どもに対しては、誘い水となるような言葉かけや話題を提供しながら分かち合うということを意識することも大事です。

心の居場所をつくるかかわり

 子どもと向き合うのに大切なことは、しっかりとそばにいてうなずくことです。そして、安心して子どもが愚痴や弱音を言えるように、こちらも弱音を語ること。それが子どもの気持ちを引き出していく手がかりになります。聞くだけではなくて、その背後にある言葉にならない気持ちを察すること。察することが何よりも大事なことで、自分のために手間をかけ、向き合ってくれている、と子どもが気付くことが人と向き合っていく喜びにつながっていくのだと思います。

おわりに

 以前、ある子どもが「心の新芽が出たよ」と言ってくれました。「心の新芽って何?」と聞くと「悲しみを吐き出すと心の新芽が出るんだよ」と答えてくれました。悲しいことやつらいことがあったときに、しっかり支えてもらえれば、もう一回自分になってみよう、こういう自分でいいんだという新芽、これこそ自己肯定感です。お互いの新芽を出し合える関係をつくっていけたらいいなと思います。
 諦めないでかかわり続けることが大切です。そういう大人の姿を通して、子どもは励まされ、心の新芽が育つのです。

参加者の声
  • 今かかわっている子どものことを思い浮かべながら聞いていました。あのときの言動や行動は、自分から「つらい」と言えない事情や、他に伝えたいことがあったのではないか、と気付かされました。子どもの内面をしっかり汲み取れるようにしていきたいです。
  • 「悲しみを吐き出すと心の新芽が出る」よい言葉だなと思いました。荻野さんのお話を聞いて、気持ちを察することの大切さを改めて感じました。 

    講演をする荻野ゆう子さん

 

 

 

 

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