子どもたちの健やかな成長を

21世紀をになう子どもたちのために-ともに育もう 豊かな心と 自分らしく生きる力を-

2015/10/05

第62回 愛知母と女性教師の会

 愛教組は、保護者と教員約270人の参加を得て、「愛知母と女性教師の会」を開催しました。全体会では、女性部提案及び講演を行い、それらを受けて分散会を行いました。子どもたちの健やかな成長を願い、保護者と教員が熱心に語り合いました。

内容

女性部提案:「男女が自立し、ともに生きる力をどう育てるか」
         -自分らしく生きることを考える実践を通して- 

 小学校の実践では、一人ひとりの違いを実感したり、友だちのよさを認め合ったりする活動を通して、個々の違いやそれぞれのよさがあることに気付き、自分のよさを認められるようになった子どもたちの姿が報告されました。
 中学校の実践では、コミュニケーションの仕方をロールプレイを通して学んだことで、友だちとのよりよいコミュニケーションのとり方に気付いたり、野外活動における班での活動を通して、仲間をサポートし合い、協力する姿が多くみられたりするなど、男女の関係なく相手のことを考えて行動する子どもたちの姿が報告されました。

講演【演題】   「なぜ勉強するのか?」
   【講師】   鈴木光司さん

 僕の作品に、生まれてから現在に至るまでの自分の半生を書いたエッセイ集があります。そのエッセイ集を書きながら、僕ってなんて運がいいのだろうか、ということを強く実感しました。

意欲の火をともす言葉を

  最も運がよかったと思うことは子育てにかかわれたことですが、そのきっかけとなったのは、小学校ですばらしい先生と出会え、よい言葉をかけてもらったことです。    

 小学校三、四年生のときの女性の先生は、僕に初めての詩集をつくるチャンスを与えてくれ、それを読んでほめてくださいました。五、六年生のときの男性の先生は、国語が専門で、僕たちにどんどん文章を書かせ、そして、ちゃんと書いたものに目を通し、よいところを評価しつつ、添削もしてくださいました。毎日原稿用紙三枚の日記を書くという宿題もありましたが、毎日同じことが起こっているような日常の中では、三枚なんて書けません。困り果てた僕は、空想の世界でのことを日記に書き始めました。それが自然と小説になったのです。先生は、僕の処女作をみんなの前で朗読し、「これを書いた子は小説家の才能があるかもしれない」と言ってくださいました。この言葉が、その後も僕の心の中で生き続けているのです。そして、僕に、意欲の火をことあるごとにともす役割を果してくれたような気がします。

 これらの先生方との出会い・言葉が非常に強いモチベーションになり、小説家になるという自分の目的へ、僕は一気にすすんでいきました。その過程で、僕は子育てに深くかかわり、そしてコミュニケーションの大切さを学びました。だからこそ今言えるのは、言葉の重要性です。

勉強が未来を切り開く
講演をする鈴木さんHP 
講演をする鈴木光司さん

 子どもが産まれてから、保育園の送り迎えをはじめとして、二人の娘の子育てや家事のほとんどをしていました。そして娘たちに勉強を教えようと思ってふと気付いたのです。子どもたちに、何のために勉強するのかという勉強の目的を明確に伝えた方が断然やる気が出るのではないかと。そこで、勉強で身につけるべき能力を、理解力・想像力・表現力の三つに絞り込みました。世の中には情報があふれていますが、本を読んで、その中身をきちんと理解すること、これが勉強の第一です。まず著者の意図を素直に理解しなければなりません。理解したら、自分のものになります。次に自分の想像力でこれを咀嚼(そしゃく)する。今度はこれを再構築した上で、人に向かって提示する。これが表現です。この三つの能力を身につけて、はじめて勉強の効果が出たということになってきます。

 この理解力・想像力・表現力がうまく身につくと、自分の頭の中でじっくり考えられたよい意見が出てきます。すると、それを議論する場が必要になります。議論の場では、意見を出し合って、その中からよいものを取り上げて実行に移していきます。身近なコミュニティーや政治の場などでもそのようなことができれば、世界がよりよくなっていくことにつながります。

 僕は娘たちに向かって、「勉強をする目的は、世界がよりよくなるチャンスが増えるからだよ」と教えました。勉強の目的が子どもたちに浸透すると、自主的に取り組むようになります。勉強というものは、自主的にやらない限り、絶対にのびません。高い理想を与えた方が、やる気になるように思います。

子どもの心に育てたいもの

 僕が娘たちに求めたいものは、「勇気」と「理性」です。いじめというものはやさしさが足りないから起こるわけではないと思うのです。「勇気」に支えられて、今自分のやるべきことが何かを理性的に考え、実行に移す、そういった、「勇気」に裏打ちされた「理性」、これが足りないのではないかと思うのです。やさしさとか思いやりというのは、教えようとしてもなかなか身につくものではありません。僕自身も、子どもの頃から、常に自分に問うてきました。「どうやったら勇気が身につくのだろうか」と。そして、身につけた勇気が独りよがりな身勝手なものにならないよう、世界のしくみを理性的に突き詰めないといけない。そのために、勇気と理性のコンビネーションを大事にしたい。そう考え、これを身につけようとしてきたことが、僕の半生の目的だったような気がします。

 理性を磨くというのが、実は勉強の役割でもあったと思います。理性は磨きをかけることができます。磨かれた「理性」が「勇気」と結びついて、子どもたちの心の中に育ってもらいたいと思います。僕は子どものころから学校の先生にすばらしい言葉をかけてもらって成長することができました。みなさん、ぜひ子どもによい言葉を与えて、意欲に火をつけてあげてください。

分散会:「ともに育もう 豊かな心と 自分らしく生きる力を」

 女性部提案や講演を受けて、「自分らしく生きることとは」「子どものために、親として教師としてできることは」などについてグループ討議をしました。
 自分らしく生きることに対しては、「物事を自分で選び、自分で決めていくことではないか」「自分のできない部分も認めつつ生きていくことではないか」などの意見が出されました。そして、目の前の子どもたちに対して、「話をしっかりと聴いていきたい」「向き合って認めていきたい」など、親として教師として、そして大人としてどうあるべきかを考える場となりました。

参加者の声

  •  「自分のやりたいことが心からわいてくるのを待って聴く」このスタンスが大切であるのだと思いました。子をもつ母親として、子どもの心の声が聞こえてくるまでじっくりと待とうという勇気がわいてきました。
  •  子どもを育てる親として、教師として、教育を行う上で大切なものが何であるかを教えていただけたように思います。子どもの意欲を高められる大人であることを意識していきたいです。
  •  今の時代だからこそ、男女の役割への固定観念をもつのではなく、一人ひとりが自分の役割を考えられるようにするための授業を意識して実践していくことが大切だと思いました。 

アピール採択

 最後にアピール採択委員により、集会アピールが読み上げられ、採択されました。この集会アピール文は、後日、県教育長にも提出しました。

集会アピール

 わたくしたち愛知の母親と女性教師は、「わが子・教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、子どもたちの健やかな成長を願い、「愛知母と女性教師の会」に集い、話し合いを深めてきました。

 子どもたちは、無限の可能性を秘めており、その可能性を現実のものとするために生まれてきました。わたくしたち親と教師の願いは、子どもたちが、未来に夢や希望をもち、笑顔あふれる毎日を送ることです。しかし、さまざまな問題を抱える現代社会の中では、子どもたちをとりまく環境は大きく変化しています。そのような中で、よりよい人間関係が築けなかったり、将来の夢がもてなかったりする子どもがいます。また、自分に自信がもてなかったり、自分のよさを認められなかったりする子どもも少なくありません。そして、それは子どもたちだけでなく、子育てに不安や悩みを抱える大人も同じです。

 子どもたちは、目の前の大人の姿を通して、将来を見つめています。子どもたち一人ひとりが自分のよさを見つけ、自分らしく輝きながら生きるためには、わたくしたち大人が互いのよさを認め合い、一人ひとりを尊重し合う、笑顔があふれる社会をつくっていかなければなりません。

  また、戦後70年を迎えた今年、平和にかかわる国の情勢は、スローガンに込められたわたくしたちの願いとは逆行し、大きな転換期を迎えています。わたくしたちは、改めて母女の原点に立ち戻る必要もあるのではないでしょうか。

  今こそ、子どもたちのかけがえのない未来のために、わたくしたち大人が手をとり合い、支え合っていこうではありませんか。子どもたちが多くの人々とつながり合い、認め合い、自分らしく生きていくことができるように、すべての大人が力を合わせて、子どもたちを育んでいきましょう。

ともに語り合いましょう
       夢と希望あふれる 子どもたちのかけがえのない未来を

 ともに育んでいきましょう
       豊かな心と 自分らしく生きる力を

 そして、築いていきましょう
       互いを認め合い 高め合う 笑顔があふれる社会を

   未来を担う子どもたちのために、人と人とが互いに信頼し合い、ともに自分らしく輝き続けることができる社会の実現にむけて、心ひとつにし、未来へつなぐ確かな一歩をふみだしていくことをここに誓います。

      2015年10月4日
   第62回 愛知母と女性教師の会 

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