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学校・家庭・地域の協働-未来を担う子どもたちのために- 〈 第67次 〉

2017/10/21

 特別集会では、プール学院大学教授の長尾彰夫先生からご講演いただき、参加者との意見交流が行われました。
 長尾先生からは、「子どもたちの健やかな成長をめざして 学校・家庭・地域の協働-未来を担う子どもたちのために-」と題してお話をいただきました。本集会を通して、子どもたちの健やかな成長のために、学校・家庭・地域が連携した教育活動の重要性を改めて確認し合いました。

 記念講演
 意見交流 

記念講演:  子どもたちの健やかな成長をめざして
          学校・家庭・地域の協働-未来を担う子どもたちのために-
講   師:プール学院大学教授 教育学部 長尾 彰夫先生

                        

 

学習指導要領の改訂

 学習指導要領の改訂が話題となっています。その中で、アクティブラーニングやカリキュラムマネージメント、そして、小学校の英語の教科化などありますが、今度の学習指導要領の改訂は社会に開かれた教育課程を理念としています。そして、コミュニティスクールの導入が努力義務とされました。コミュニティスクールは、全国の小・中学校約30,000校の内の15%から20%ぐらいに導入されていると統計上ではいわれていますが、コミュニティスクールは学校運営協議会をつくって保護者や地域の人々の意見を聞きながら学校をつくっていこうという政策なのです。その中で、学校・家庭・地域の関係をどのように構築していくのかが政策的課題になっています。一般的に、学校・家庭・地域が連携する、協力するというのは重要です。そこで、どのように連携するのか、その留意点について、わたくしの考えを示させていただきます。

 新学習指導要領の改訂により、移行措置として、来年度からは小学校中学年で外国語活動が導入され、2020年度には高学年で教科としての英語が導入されます。そして、2018年度は道徳も教科となります。小学校は、中学校とほぼ同じ授業時数になります。今の学習指導要領では、小学校の英語は、外国語活動となっており、今は教科として取り扱われていません。教科となると9科目ということになり、これは子どもたちにとっても教員にとってもたいへんな負担となります。なぜこんなに英語を取り上げるのでしょうか。これはオリンピックなどで海外からお客さんがお越しになった際に、英語の「How are you?」の一つも話せなかったら困るのではないかという意見があります。さらに、英語が取り上げられた要因の一つに、近い将来、英語教育を必要とするグローバルな社会が訪れるという考えがあります。ところが、2017年3月に告示された新学習指導要領では、小学校は全面実施が2020年、中学校は2021年です。大体10年間学習指導要領は続くことになっており、2030年までを想定するという改訂になっています。

 

2030年問題 

 そしてこの2030年問題というのがテーマになっています。2030年は、どのような時代なのか。中教審では、2030年は非常に見通しがつかない時代になるとしています。例えば、主体的で対話的で深い学びであるアクティブ・ラーニングです。学習はいつでもアクティブであり、言ってみれば当たり前のことです。それにもかかわらず、アクティブ・ラーニングを導入するとした理由は、「本来あるべき学習のあり方を大事にしましょう」「カリキュラムマネジメントも、カリキュラムを絶えず見直しながらやっていきましょう、改善していきましょう」ということなのです。なぜそのようなことを改めていうようになったかというと、見通しがつかないからです。これをやっておけばよいということが不明確な状況では、学習の中で本質的な主体的で対話的で深い学びが必要になってくるのではないかということが背景にあるのです。だから、当初の学習指導要領の改訂案には、アクティブ・ラーニングやグループ学習の具体の一部を文部科学省が示しました。しかし、これさえやればアクティブ・ラーニングだと誤解が生じる可能性があるということで、新学習指導要領の中からはアクティブ・ラーニングという言葉はなくなりました。これは本質的なことを大事にしてほしいというねらいを、より正確に伝えるためにパターンを示すよりは、むしろ学習の本質化をめざそうということになったのです。どの教科においても知識だけを知っていたらよいというのではなく、「何を知ったか、どのように知ったかも大事にしよう」「資質、能力も大事にしよう」と示されています。また、内容も以前に比べかなり改善され、今度の新学習指導要領はかなり大きな改革になっていると思います。知識はもちろん、思考力、判断力も大事ですが、資質、そして、人間の能力を大事にする教育課程をつくっていこうという大きな転換がみられます。それから学習の本質化、大事なことはアクティブな学習であり、カリキュラムを絶えず現場で点検していく必要があるとしています。

 見通しのつかない、見通しがなかなか立ち難い社会がきている、よほど深刻に考えておかなければならないと思います。例えば今の小学校の子どもたちが就職するときに、現在の仕事の61%は新しい仕事となっており、多くはその仕事に就くといわれています。逆に、現在の仕事は、どんどん無くなっていくといわれています。2030年に存在しない仕事、存在する仕事があって、AIがどんどん出てきます。タクシーやバスの運転手も存在しなくなる率の非常に高い仕事です。逆に存在する仕事もあるのです。2030年になっても教員の仕事は90%以上の高い率で生き残るとされています。生き残る理由は機械に任せておくことができない仕事だからです。現在においても学校現場では、予測がつかないことがたくさん起こっているでしょう。これをやっておいたらうまくという世の中ではなくなってきたということなのです。

 

「生きる力」と「学力」 

 新学習指導要領の中で学力のあり方について、知識は大切であるが、知識だけではなく資質、能力も大事だといっており、生きる力も大事だといっています。生きる力という言葉が出てきたのは1988年から90年、「総合的な学習の時間」が導入された際に、文部省は盛んに生きる力といったのです。生きる力というのは、文部省の公式文書によれば、英語で「zest for living」と言います。「zest」というのは情熱です。生きるための情熱が生きる力。生きる力というのは「変化の激しいこれからの社会を生き抜くために必要な資質、能力」と、文科省のホームページの中で示されています。どれだけ人間が知識を蓄えてもAIに負けるでしょう。知識だけ詰め込んでも資質、能力の問題があります。変化が激しい社会、これが一番の問題であり、変化の激しい社会を生き抜くために必要なものは単なる知識ではないといっているのです。

 学校・家庭・地域の関係において、どのような連携があると思いますか。学校は勉強するところ。家庭はしつけをするところ。では、地域は何か。地域の役割がよくわからない。しかし、学校・家庭・地域は連携しなければいけません。学校における役割の中心は学力形成だといわれてきましたが、その学力のあり方そのものが、大きく変化してきているのです。学力というのは、新学習指導要領でも知識をため込んでおくというような学力ではいけないとしています。だから新学習指導要領は知識や技能にかかわるもの、思考力を育てる判断力、それから人間性にかかわる力の3層構造が必要であるともしています。

 今までは学力というと、極端に言えば知識を早く理解して覚え込み、受験に役立つというような学力が主として念頭におかれていました。これは受験学力と呼ぶこともあります。知識を早くため込む記憶力を中心にして反復練習して再現する、これが高い学力であると考えられていました。日本の教育を変えようと思ったら、大学入試を変えたらよいといわれています。ところが、大学入試を変えるというのは、なかなか難しいのです。また、高い学力をもっていたら、なぜ社会で優位になっていくのか、よく考えてみなければならない話です。

 例えば、決められた時間にきっちり仕事をする、いわれたことは必ずやる、そのような資質、能力を身に付けていなかったら一流大学には入れない。覚えろといわれたことは覚える、決められたルールに従うような人たちは、企業でも役に立つといわれていました。30年ぐらい前までは、それでよかったのです。だから、一流大学に入った学生を企業は採用して、終身雇用と年功序列で企業を支えていくということで企業は維持できたのです。学校での3R(ルール、レギュレーション、ルーティンワーク)に耐えることができる子どもたちを雇っておけば、企業としては間違いない、このような形で企業の発展は担保されていた時代があったのです。

 今は、それが崩れてきているのです。一般企業でも、学歴は書かせても、どこの大学卒というのは書かせない企業が出てきています。いわれたことだけをきっちりやるというのは、必ずしもその企業にとってメリットにならない時代になってきました。その結果、学力のあり方は、揺らいできています。近い将来、これさえやっておけば、一生涯保証されて一旦その企業に入ったら潰れない限り勤めることができるということはなくなると思います。そして、今後は就職したら、一生勤めて何年後には課長、何年後には退職金がいくら、そんなことはわかりません。少子高齢化で、先行き不安な、見通しがつかない時代になってきているのです。だから、ある意味で学校にお任せしておけば何とかなるという時代ではないのです。学校の学力だけで生きていけるというような時代ではなくなってきていることに、早く気付かなければならないのです。だからといって学校で身につける学力が意味がないといっているのではありません。学校の学力にはもちろん大事なことがありますが、学校でしかできないこともある一方で、学校ではできないこともあるということを考えておく必要があるのです。

 

学校・家庭・地域の役割

 家庭には学校とは違った論理があります。家庭の論理というのは、実は学校の論理とちょっと違うところがあります。学校の論理というのは、みな同じようにすることです。みな同じように教えます。そして、答えが決まっていることが多いのです。ルールがある、答えがあることを「学校の文化」といいますが、それは極めて正しいけれども画一的です。学校の性格、特色として存在するのです。なぜかというと、授業の際に「好きに考えてごらん」と子どもたちに投げかける場合がよくあると思います。国語でも算数でも、「この主人公になったつもりで考えてみよう」「自由にいってよいんだよ」と。子どもは本気で一生懸命考えます。しかし、そのうち子どもたちは、このように答えたら正解だということが読めるようになります。それは、間違いとかではなくて、学校はそのような場所であるということです。正しい答えをしっかりとみな平等に教えていくという場所が学校なのです。

 ところが、家庭では正しいことが正しくないこともあるでしょう。家庭と学校の論理が違うというのは、例えば、学校では正しい答えが一つあり、みながそれに合格することによって点数がついていくということだから、学校では正しい基準があって比べることができるのです。家庭では兄は60点、妹は30点のように点数はつきません。家庭で一番大事なことは、それぞれの子どもをかけがえのない存在として扱うということです。だから学校では出席番号がありますが、家庭で出生番号はありません。一人ひとりの名前をつけます。それぞれの親の思いがあります。思いが反映してるのです。それは、こういう子どもになってほしいと、個性や多様性を認めていくことを家庭では大前提にしています。だから子どもが家庭で怒る場面として多いのは兄弟姉妹で比較されたときです。家庭の中では比較されたら子どもにとってはものすごく大きなダメージを受けます。それは、家庭ではそれぞれかけがえのないものとして扱ってもらっているということが実は暗黙の前提になっているからなのです。だから家庭が学校と同じように扱ったら、問題が生じ、豊かな、健やかな成長につながらない危険性があるのです。しかしながら、日本の学校においては、このような家庭の役割の一部を担っている状況にあり、日本の学校の役割が非常に肥大化している原因の一つです。

 家庭と学校の違いについてはご理解いただけたと思いますが、問題は地域なのです。これからは学校運営協議会ができ、コミュニティスクールというのをつくっていくということが政策として出されています。これは努力義務として掲げられ、法的にコミュニティスクールを追究していくことなのです。学校と保護者と地域の方々が学校運営協議会をつくり、そこで学校教育の目標やさまざまなことについて合意します。問題なのは、教員の人事についてもそこで検討することができるという法律となっていることです。確かに学校と家庭と地域が連携して協力する必要性はあると思います。だからコミュニティスクールは間違いであるとは考えません。それはあるべき方法の一つだと思います。しかし、いくつか危険な点があるということを、知っておかなければなりません。

 保護者が学校に参加することや地域が学校に参加することで気をつけなければならないのは、学校が耳を澄ませて聞かなければならない保護者の声というのは、学校から最も遠い所にいる場合があるということです。学校運営協議会は日曜日に開かれるとは限りません。そうすると、昼間に来ることのできる一部の人の意見だけで決まってしまう危険性があります。その意見がよくないというのではなく、意見の集約方法をどのようにしていくのかを同時に考えていく必要があり、学校はさまざまな意見をしっかりと受け止めなければなりません。

 

新しいコミュニティの形成

 さらに、日本の場合、地域というのは校区、行政区となっており自分で選ぶことができません。校区として、行政区として、地域は存在していくことが前提となっています。行政区では、一定の価値観やものの考え方が共通してできているとはいえません。行政区は線を引いただけであり、そこに教育の理念や、子育ての方向性が共有されてその地域に住んでるというのではないのです。ましてや、昔の地域ではありません。昔の地域というのは、労働の母体、つまりみなが一緒に働く中でコミュニティが形成されました。生活の基盤があるから地域があり、地域の仕事をたくさん担っていました。それは文化の背景だけではなく生活の背景も共通するものがあってコミュニティが形成されていました。現在の都会では、ゴミを出すルールが決められている、その程度です。だから地域と学校と家庭の協力・連携といっても、すぐにはできないのです。では、地域と学校の教育の連携というのはできないのか。それは違います。今ある地域は、コミュニティではないということを前提にして、コミュニティになるにはどうしたらよいかということを、これから考えていかなければならない、つくっていかなければなりません。だから、学校・家庭・地域の連携といって、学校はそのまま、家庭は今あるそのまま、地域は今の地域そのまま、それが連携して話し合いをしても、さほどポジティブなことは出てこない危険性があります。つまり、学校も家庭も地域も変わらなければいけない、新しい地域づくりをしていかなければいけないのです。家庭は何でも学校に任せておけばそれでよいという話ではありません。学校も何でも抱え込んで、すべてを学校で処理できると思わない方がよく、これは家庭に任せるというような、それぞれの役割をもたせ、チーム学校として築き上げていくことが必要です。学校でできることと、できないことをはっきりしていこう、学校でできないことは、学校以外の人に頼んでいこう、これがチーム学校の1つの発想です。これもさまざま問題があるかもしれません。学校も、保護者も、地域も新しくつくり直されていく。そのような中で、コミュニティスクールは、それぞれが変わっていくという契機を一緒にもっていなかったら、連携もできないのです。それをやらなければ、家庭は学校の下請けになったり、家庭は学校にお任せになったり、地域は文句はいうけれども、地域としてコミュニティとしての協同的な価値観や願いがなく、ただ地域がテリトリーとしてあるだけになります。コミュニティというのは、それぞれのエリアとしては融通であり無形です。だからこのコミュニティスクールが、学校の教育にかかわる際、まずはそこでの共通すべきもの、共通すべき価値、共通に大事にすべきもの、共通のルールとして守っていくものが何かということをつくっていくことで、学校・家庭・地域の連携の突破口が見えてきます。

 

子どもたちの健やかな成長をめざして

 「これからの社会に開かれた教育課程、学校をつくっていくには地域と共にある学校への転換をはかるため、すべての公立学校はコミュニティスクールとなることをめざして組織をいっそう推進、加速していくこと」と答申に出ています。今はまだその導入は20%に及ばず、導入されていてもかなり形式的にやっている所があります。しかし、政策的にはこれが教育改革の中心だといっています。その中で教育課程というのは、先行きが非常に見えません。2030年にどうなっているかわからないことも含めてこれから社会に開かれた教育課程(カリキュラム)、コミュニティスクールの必要性が出てきています。そのコミュニティスクールは、学校運営協議会をつくって、それぞれの代表が学校教育の目標について合意しましょうということになっていますが、それにはいくつかの前提があるのです。その前提を飛ばしてしまっては、子どもたちの健やかな成長どころか、子どもたちは学校でも家に帰っても同じことをいわれ、地域でも同じことをいわれ、がんじがらめになっていってしまう、それは未来を担う子どもたちのためにはならないということをおさえておかなければなりません。

 

 

意見交流

○ 保護者
 わたくしは高校1年生と小学校4年生の子どもをもつ母親です。自分たちが子どもの頃の学び方と、今の学び方が随分変わってきていることを感じました。そしてさらにこれからはもっと変わっていくんだということも感じました。変化の激しいこの社会を生き抜いていく子どもたちを、今育てていますが、家庭では、その資質や能力を育てていくために、どのようなことができるのか、教えてください。

○ 教員

 わたくしは教員ですが、コミュニティスクールをめざしていくと、どのようなコミュニティをつくっていけばよいのか、真のコミュニティにしていくために必要なことは一体どんなことなのか教えてください。また、2030年の社会は見通しがつかない社会とおっしゃっていましたが、どのようになっているか、教えてください。

 

○ 長尾先生 

 家庭で何ができるかということですが、それはそれぞれの家庭で違います。ただ、一般論としていえることは、家庭は学校とは違うというように、家庭に居場所をつくってあげることが大事ではないかと思います。家庭では、その子にしかないよい所をどれだけ見つけてあげるかということに目を向けたらいいのではないかと思います。家庭ではよい所を大人が探してあげることが大切です。

 それぞれコミュニティは何かということを考えていくことを大事にしてください。それを具体的にどうするのかということを考えるのがみなさんの役割です。

 2030年、どんな社会か。見通しがつかない、予想できない難しいことがたくさん出てくる、それが現場です。だから「学習指導要領にこう書いてあるから、この通りにやったらうまくいく」と思わない方がよいと思います。学校でも家庭でも子育てにしても、子どもというのは難しく、多様で個別的です。だから国が言うことは見通しがよいけれども、現場はそううまくはいかない、実際の家庭もうまくはいかない、そのことを覚悟した方がよいと思います。これさえやっておけばうまくいく、そのようなことはありえないと思います。

 

 

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第67次愛知県教育研究集会

2017/10/21

 10月21日、約1600人の教員や保護者、働く仲間の参加のもと、第67次教育研究愛知県集会が開催されました。

 全体集会の後には、「子どもたちの健やかな成長をめざして」をテーマに特別集会が行われました。特別集会では、プール学院大学教授の長尾彰夫先生から「学校・家庭・地域の協働」という題目で記念講演をいただき、参加者との意見交換が行われました。

 また、27の分科会では、子どもたちを中心にすえた実践報告と活発な討論が行われました。

 

基調報告より

 

  • 分科会(各科目についての報告は下の表からご覧下さい。)
1 国語教育 文学その他
作文その他
2 外国語教育
3 社会科教育 小学校
中学校
4 数学教育 算数
数学
5 理科教育 物理・化学
生物・地学
6 生活科教育
7 美術教育
8 音楽教育
9 技術教育
 

 

10

 

家庭科教育

11 保健体育 体育
保健
12 自治的諸活動と生活指導 小学校
中学校
13 能力・発達・学習と評価
14 特別支援教育
15 進路指導
16 教育条件整備
17 過密・過疎、へき地の教育
18 環境問題と教育
19 情報化社会の教育
20 読書・学校図書館
21 総合学習

基調報告より 

 これまでの66次にわたる教育研究において、わたくしたちは夢と希望あふれる教育の創造をめざし、子どもたちを中心にすえ、それぞれの学校・地域の特色を生かした、自主的・主体的な教育研究活動を着実に積み重ねてきました。また、保護者への意識調査を実施し、今日的な教育課題を明らかにするとともに、各地域で教育対話集会などを行い、保護者や地域の方々と意見交換をする中で、子どもたちの「生きる力」を育む取り組みについての合意形成をはかってきました。そして、各学校では子どもたちの健やかな成長を願い、日々教育活動に取り組んでいます。

 さて、現在、国が推しすすめるさまざまな教育改革の波は学校現場にも大きな影響を与えようとしています。とりわけ、文部科学省が3月に公示した新学習指導要領では、小学校高学年において英語を教科化し、中学年に外国語活動を導入するとしています。学習内容も過去形や動名詞が加わるなど、中学校英語の前倒しや知識の習得そのものが目的となることが危惧されます。また、現在の小学校における週あたりの総授業時数はすでに限界がきており、年間授業時数が35時間増えることは、子どもたちの負担がいたずらに増えるのみとなり、ゆとりとふれあいの中で「生きる力」を育む教育の軽視につながりかねないと考えます。子どもたちに必要な力は、英語力を身につけることだけではなく、自ら課題を見つけ、主体的に判断し、行動できる「生きる力」であり、ゆとりとふれあいを保障する教育課程の中で育てていかなければなりません。

 このようなときだからこそ、わたくしたちは、あくまでも学習指導要領を大綱的基準としてとらえ、未来を担うすべての子どもたちのために夢と希望あふれる教育を創造する取り組みを継続し、学校現場からの教育改革を推進していかなければなりません。そのためにも、基礎・基本の確実な定着はもちろんのこと、子どもたち一人ひとりが学ぶ意欲をもち、自らすすんで取り組むより質の高い学びを大切にしていかなければなりません。また、人・自然・文化などとかかわり合い、地域に根ざした体験活動を中心にした学習を構築し、学校・家庭・地域の連携をよりいっそう強化し、地域ぐるみの教育を推しすすめていかなければなりません。

 今次の教育研究活動においても、ゆとりとふれあいの中で「わかる授業・楽しい学校」の実現をめざし、「学びの質をより追究するとともに、子どもたち一人ひとりの意欲を大切にし、学ぶ喜び・わかる楽しさを保障する教育課程編成活動をすすめる」「学校・地域の特色を生かし、人・自然・文化などとのかかわりを大切にした創意あふれる教育課程編成活動をすすめる」の2点を研究推進の重点として提起しました。わたくしたちがすすめる教育改革は、日々の教育実践を積み重ね、その中で成長していく子どもたちの姿で示すべきだと考えます。各分科会においては、実践研究の報告をもとにして、活発な議論を展開するとともに、その成果を各教組・各分会にもち帰り、還流をはかっていただくことを大いに期待します。

 また、本日の特別集会では、子どもたちの現状や最近の教育をめぐる情勢をふまえ、「学校・家庭・地域の協働-未来を担う子どもたちのために-」と題して、記念講演を行います。未来を担う子どもたちの健やかな成長をめざして学校・家庭・地域で大切にしていきたいことなどについて共通理解をはかり、それぞれがいかに協働して子どもたちを育てていくか、ともに考えていきたいと思います。

 最後になりましたが、この教育研究愛知県集会が愛知の教育のさらなる推進のため、そして何よりも目の前の子どもたちの健やかな成長のために、実り多いものとなることを祈念し、本集会開会にあたっての基調報告といたします。

 

分科会    

国語教育(文学その他)

 説明的文章9本と、文学的文章26本のリポートが報告された。目の前の子どもたちの実態を見つめた価値ある実践が多く、どのように読む力をつけるべきかについて、報告されたリポートをもとに討論が展開された。 

国語教育(作文その他)

 作文(綴り方)の教育8本と、言語の教育2本、音声表現の教育8本のリポートが報告された。子どもたちの実態を見つめ、どのような子どもを育てるのか、文字言語・音声言語のよさを生かして、どのような力を育てていくのか討論が展開された。

外国語教育 

 「小学校外国語活動」「4技能を育成する活動」「わかる・楽しい授業づくりのための工夫」の3つを柱に、小グループによる発表と討論が行われた。その後、各グループで設定された「全体討論への問題提起」をもとに、全体で討論と意見共有が行われた。

 3つの小グループでは、小学校と合同授業を行った中学校の実践や、Can-Doリストを設定し、具体的な到達目標を明らかにして子どもたちの力を育てる実践などが報告された。子どもたちがお互いにかかわり合いながら、主体的に学習活動に取り組むための手だてが数多く報告され、活発な討論が行われた。 

社会科教育(小学校)

 地域素材を教材化したり、対話的活動を取り入れたりすることによって、主体的に社会に参画しようとする意欲を高める実践が報告された。

 討論では、根拠をもとにした話し合い活動を通して育てたい力や、小学校段階で社会に参画する力を育てる意義などについて話し合われた。

社会科教育(中学校)

 子どもたちが主権者として主体的に取り組む学習活動のあり方についての実践や、社会に対する見方・考え方を深める学習活動のあり方についての実践が報告された。

 学ぶ意欲を持続させ子どもが主体的に課題を追究した実践や、地域素材をはじめとする身近な素材を教材化し、子どもの社会認識を深め、社会に参画していこうとする意識を育んだ実践が多く報告された。 

数学教育(算数)

 「思考力・判断力・表現力の育成」「わかる・できる指導の工夫」「学びあう力・意欲の育成」の3つの柱立てで、実践の報告や討論が行われた。

 子どもたちが、主体的にかかわりあう姿をめざした実践や、ペア・グループ学習などの学習形態を工夫した実践、わかる喜び・できる楽しさを実感させるための手だてを工夫した実践、道筋を立てて考え、表現できるように工夫した実践などが報告された。どの報告も子どもを中心にすえ、子どもの力を伸ばしたいというねらいを感じることができるものであった。

 数学教育(数学)

 「思考力・判断力・表現力の育成」「確かな学力の定着」「自ら学ぶ力・意欲の育成、学びあう力の育成」の3つを柱に、実践の報告や討論が行われた。主体的に取り組む子どもの育成を主眼とした実践や、グループ学習やペア学習などの学習形態を工夫した実践、数学的活動を通して子どもの自主性を引き出した実践など、多岐にわたる実践が報告された。 

理科教育(物理・化学)

 「子どもの発達段階をふまえた教育課程編成のあり方」「自然概念形成に有効な教材・教具の開発、指導の工夫」の2観点に重点をおいた報告と討論を4つの設定分野・領域ごとに展開し、さらに「基礎・基本の習得と評価のあり方」「子どもたちに理科の有用性を実感させる指導のあり方」「単元における『ものづくり』の扱い方」を加えた5観点の柱立てによる総括討論を行うことで、より活発な意見交換がされた。

理科教育(生物・地学)

 生命のつながりを実感できるような教材や飼育方法を工夫した実践、グループの形態を工夫し、対話的な学びを促した実践、モデルを取り入れることで実感を伴った理解をめざした実践などが報告された。  

 討論では、「子どもの発達段階をふまえた教育課程編成のあり方」「子どもの視点に立った教材・教具の開発や指導の工夫」の2観点を中心にして、「基礎・基本の習得と評価のあり方」「子どもたちに理科の有用性を実感させる指導のあり方」「地域の素材・人材の活用」を加えた5観点を柱立てに、活発な意見交換がされた。 

生活科教育

 スタートカリキュラムの実践や、幼・保・小で連携した実践、探検活動を通して地域の自然や人々とのかかわりを深める実践、継続的な飼育・栽培活動を通して、対象への愛着や自分自身への気付きを深める実践、季節ごとの自然を生かした遊びやおもちゃの製作を通して気付きの質を高める実践、家族の中での自分の役割を考え、よりよい生活を創り出そうとする実践などが報告された。

 単元構想や手だてを工夫して、子どもたちがいきいきと活動し、思いや願いを実現する実践が多かった。また、友だちや地域の人々との交流を通して、思考を深めたり、気付きの質を高めたりする実践も多かった。

 生活科を通して子どもたちの自立の基礎が養われていく確かな実践がすすめられていることが感じられた。

 

美術教育

 「美術教育を通して子どもたちに伝えたいこと~子どもたちのゆたかな学びのために~」をテーマに実践報告や討論がすすめられた。

 総括討論では、図工・美術教育から何を学ばせるのかという議論を通して、本年度のテーマについて考え、深めることができた。

 図工や美術の授業(特に自画像制作)に対して子どもが抱える不安や悩み、思いを受け止め、教員がどのように支援していくとよいか話し合われた。また、子どもたちの将来を見据えて、小学校、中学校がどのように連携して、子どもの表現力を高めていくのか、美術教育では、将来にむけてどのような力を育んでいくのかという議論を通して、美術教員が考えなければならない課題を確認することができた。 

音楽教育

 「思いや意図を表現に生かし、高め合うための学習活動や指導の工夫」「習得・活用・探究の見通しをもち、学習のより深い理解や動機付けにつながる学習活動のあり方」をテーマに討論をすすめた。仲間と主体的・対話的にかかわり合いながら表現の工夫をする実践が多く報告され、発達段階に応じて音楽教育を行うことの大切さについて深く考えることができた。

 午前中は、DVDによる実践報告を行った。どの報告も、めざす子ども像を明確にし、工夫を凝らした手だてによって、変容していく子どもたちの様子がよくわかるものであった。

技術教育

 よりよい生活にむけて、学んだ知識や技能の活用をめざす実践が多く報告された。

 エネルギー変換では、他教科と関連付け、学んだ知識を活用し、試行錯誤しながら電気回路を組み立てることをめざした実践や、マイ発電所づくりを行う中で、身につけた知識と技のよさを実感し、学びを生活の中で生かすことができる子どもの育成をめざした実践が報告された。

 生物育成では、題材構想や学習過程、教材・教具を工夫し、子どもが意欲的に栽培技術を習得し、栽培の楽しさを実感させることをめざした実践が報告された。

 情報では、センサカーを用いて、日常生活の中で最適解を求めることができる子どもの育成をめざした実践や、写真を使ったアニメーションづくりを通して、自ら課題を見つけ解決する子どもの育成をめざした実践が報告された。

 技術教育全般では、主体的・対話的で深い学びの場面を確保するために、協働的な学習を取り入れた実践が報告された。また、伝統技能である「寄木加工」を取り入れ、子どもが達成感・満足感を得る中で「つくりたい」と思う気持ちを高めることをめざした実践が報告された。 

家庭科教育

 「知識・技能の習得」「生活を追究する」「家庭や地域、人とのつながり」の3つ柱立てで、実践の報告や討論が行われた。子どもの生活の中から課題を見つけ、学びを深めていく実践が多く報告された。

 総括討論では、「主体的な家庭科の学び~よりよい生活や最適解を求め続ける取り組み~」について討論が行われた。 

保健体育(体育)

 「体育でどのような子どもを育てるか、自ら考え行動する子どもをどう育てるか」を大テーマに、次の2点を研究主題として、発表・討論が行われた。

(1)かかわり合いを大切にした授業づくり

(2)学年に応じた体力向上と技術習得

 どのリポートも、仲間とのかかわり方や学年に応じた体力向上と技能習得に関して、さまざまな工夫のある実践が報告された。

 討論では、かかわり方の有効な手だてや、子どもの発達段階に応じてどのような技能を習得させるべきかについて活発な意見交換がされた。また、技能習得のためのよりよい指導法などについて、活発な意見が出された。

 

保健体育(保健)

 「子どもが生活の主体となるための健康教育」をテーマに、さまざまな健康課題に対応するため、教材・教具を工夫した実践や、子どもの主体的な活動を中心とした実践、学校内外との連携を深めた実践などが報告された。

 

自治的諸活動と生活指導(小学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマとして、活発に討論された。

 子どもたちのよりよい人間関係を築くために、学級や学年、異学年交流を通して活動した実践が多く報告された。また、子どもたちが自分自身を見つめ、自ら課題を見つけて取り組むことで、達成感や成就感を味わい、豊かな人間性を身につけた実践も報告された。さらに、学校・家庭・地域が連携して一人ひとりの子どもを支援した実践なども報告された。

 これらの実践報告をもとに、子どもたちの活動のあり方や意義、子どもたちの実態のとらえ方、それらをふまえた教員の支援のあり方について熱心な討論が展開された。

 

自治的諸活動と生活指導(中学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマに、活発に討論された。

 子どものやる気を引き出すために自己存在感を大切にした実践や、学校行事を生かしながら、個と集団の力を高める活動、家庭・地域と連携した活動を通して、子どもの成長をめざした実践が報告された。

 これらの実践報告をもとに、子どもたちの実態をふまえた支援のあり方について議論が深められた。

  

能力・発達・学習と評価

 子どもたちが意欲的に学習課題に取り組み、主体的な学習を実現するための手だてとして、子どもにとって魅力的な課題を設定した実践や、ICT機器や思考ツールを用いた実践、多様な考えを引き出す道徳の実践などが報告された。

 また、他者とのかかわりの中で学びを深めていく手だてとして、小グループでの話し合いを取り入れた実践や「話す・聞く」の約束事やルーブリックを取り入れた実践、保護者や地域の方の協力を得て行われた実践などが報告された。

特別支援教育

 「豊かに生きるための力を育む」というテーマのもと、18本のリポートが報告された。

 子どもの教育的ニーズを的確に把握し、学習意欲を高めるような教材・教具を工夫した実践や、子どもの現在や将来の生活に直接結びつく力を身につけさせるための実践、人とかかわる力やコミュニケーション能力を高めさせるための実践などが報告された。

進路指導

 基礎的・汎用的能力の育成を重点に、学校や地域の特長を生かした教育の実践が報告された。

 各教科、道徳、特別活動の実践では、子どもの発達段階に応じて協働的な問題解決の場面を設定し、主体的に学習に取り組む活動を通して、コミュニケーション能力、問題解決能力を育成できることが報告された。また、地域の特長を生かした実践では、人と人とのつながりを大切にした取り組みを通して、自己の生き方を主体的に考えることにつながることが確認された。

 進路選択にむけた啓発的な実践では、指導者が子どもの視点に立って主体的な進路選択を支援する取り組みが報告された。

教育条件整備

 「子どもの学習権の保障のために」を主題に、日本語教育にかかわる条件整備や、不登校児童生徒に対する人的配置の拡充における条件整備、ICT教育にかかわる教育条件整備についての実践が報告された。

 外国にルーツをもつ子どもが過半数存在する学級で、全員が学習するための指導の工夫や課題、不登校児童生徒を支えるために必要な教育条件整備が報告された。また、ICT教育を充実させるため、現状の機器の整備や利用状況の調査結果と今後の課題が報告された。 

過密・過疎、へき地の教育

 どの学校の報告も、地域のよさをいかに生かし、子どもたちにどう気付かせ、愛着をもたせるかという点が共通していた。地域素材を生かして、地域の「ひと、もの、こと」にかかわることで、ふるさとのよさを再発見し愛着をもつ教育活動の実践がされていた。

 また、小規模校では人間関係が固定されるため、他者とのかかわりが少なく、自分の考えに自信をもち、自己を表現することが苦手な傾向がある。そこで、他者とのつながりを感じ、自信をもって自分の考えを表現する実践が報告された。

 いずれも、子どもに身につけさせたい力を明確にした上で、へき地校の抱える問題点を考慮しながら、小規模校の利点や、地域素材を生かした実践であった。 

環境問題と教育

 食を通して排出される二酸化炭素に関心をもち、二酸化炭素を排出しない食材選びや、二酸化炭素の排出を少なくする調理方法を体験することで、食と地球温暖化がかかわっていることに気付き、二酸化炭素を出さない生活をするために、自分にできることを考え、行動できる子どもの育成をめざした実践が報告された。

 また、身近な環境問題を自分の体験を通して考える活動を加えたF-PDCAサイクルを基盤に、有用感をもって、すすんで環境問題に働きかける子どもの育成をめざした実践が報告された。

情報化社会の教育

 主体的に学ぶためにICT機器を活用した実践や、プログラミング教育を取り入れた学びの実践などが報告された。また、子どもたちが主体的に情報モラルについて考え、身につけていく実践、体験や交流を通して、情報活用能力を高め、自信をもって相手に思いを伝える実践などが報告された。

読書・学校図書館

 子どもたちが幅広いジャンルの本に出会うことをめざした実践が報告された。また、さまざまな分類の図書資料があることを子どもたちが知り、調べ学習に活用できるようにするための環境整備や配架の工夫について活発に話し合われた。子どもたちを取り巻く読書環境を充実させるためには、司書教諭、学校司書をはじめ、担任や図書ボランティアなどさまざまな人たちの連携が大切であることも確認された。

総合学習

 目の前の子どもの興味・関心や思考の流れとその変化をとらえ、創意工夫を生かした教育活動を行いながら、めざす子どもの姿に迫る実践が多く報告された。子どもたちが学習課題を「自分ごと」として主体的に探究する総合学習の授業をめざし、教材と子どもとの出会いの工夫、ゲストティーチャーの有効な活用の仕方などが紹介された。探究的な学習のよさを理解したり、実社会の中から問いを見出したりするためには、地域社会とのかかわりを実感したり、学習課題に対し子どもが「自分ごと」として切実感をもったりするなど、学ぶ動機付けを意図的に喚起することが重要であると確認された。

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21世紀をになう子どもたちのために-ともに育もう 豊かな心と 自分らしく生きる力を-

2017/10/07

第64回 愛知母と女性教職員の会

 10月7日、保護者と教職員、約250人の参加のもと、愛知母と女性教職員の会が開催されました。全体会では、提案及び講演が行われ、それらを受けて分散会が行われました。子どもたちの健やかな成長を願い、保護者と教職員が熱心に語り合いました。

 内容

女性部提案:「男女が自立し、ともに生きる力をどう育てるか」
         -自分らしく生きることを考える実践を通して- 

 小学校の実践では、友だちとのかかわりの中で互いのよさを認め合う学習や、性別にとらわれずに互いに助け合って取り組む委員会活動・係活動を通して、個々の違いにはそれぞれよさがあることに気付き、自己肯定感を少しずつ高めることができるようになった子どもの姿が報告されました。

講演【演題】   「OH!家族・学校・地域 ~子どもたちの笑顔のために~」
   【講師】   ジェフ・バーグランドさん、薫・バーグランドさん

 

 昔からアメリカの人たちは、個々の能力を大切にしながら文化を築いてきました。一方、日本には、人や地域を大切にし、和をもって築き上げてきた文化があります。このような歴史的背景もあり、日本とアメリカでは、異なった価値観をもって「子育て」をします。アメリカと日本の違いを通して、家庭と学校と地域での「子育て」について話したいと思います。

 

「自立」~発信力と受信力~

 基本的に、子どもの「自立」は、親にとって寂しいものです。「自立」という言葉を使っていますが、アメリカで本当にめざしているのは「独立」なのです。子どもに「自分一人で生きていける」という気持ちをもたせることが一番よい子育てであり、教育の一番よい結果だと考えられています。

 アメリカの親や学校の「自立」に対する考え方は、3つあると思います。

 1つ目は、責任。「自立」は責任を伴うものです。そのため、子どもには小さい頃から何らかの仕事がきちんと与えられています。

 2つ目は、発信力。自分の思っていることや考えをしっかりと言葉にして発信することは、「自立」に大きくかかわってきます。そして、この発信力は、家庭や学校で養っていくものです。

 3つ目は、お金。小さい頃から、家庭の中でごみ出しをしたり、お皿を洗ったりして自分でお金を稼ぎます。アメリカの親は、大学の授業料や生活費を出さないことが前提にあり、進学のために小学生の頃からアルバイトをする子どももいます。わたくしも、小学生の頃に芝刈りや新聞配達を行い、お金を稼いでいました。

 責任、発信力、そしてお金。アメリカでは、この3つが「自立」に大きく関係しています。

 一方で、日本はつながりや一体感を大切にするなど、アメリカとは違う価値観をもった社会であると感じました。

 日本は、人の気持ちを読み取る受信力を大切にし、アメリカは、自分から積極的に伝える発信力を大切にする。それが、48年前、来日したときに感じた日本とアメリカの違いです。

                                                                 

「違和感」こそ 

 常識というものについて、少し考えていきたいと思います。両手を前で組んで、親指を見てください。右親指か左親指か、どちらが上になっていますか。70か国、数十万人の人にやってもらうと、上になる指は、右左ほぼ同数となります。右利き、左利きは、あまり関係ありません。右親指が上になることが正解ではないのです。自分は右親指が上だから、それが正解であり、常識であるという考え方をもつ人もいると思います。しかし、それは適切な考え方ではありません。自分とは違う行動、異なる考え方を認めていくことが大切なのです。

 それでは、違う行動、異なる考え方を体験しましょう。今度は手を反対に組んでみてください。「違和感」を抱く人もいると思います。その「違和感」が、実は教育や子育ての中で一番大事なものなのです。自分の子どもや自分の学級の子どもたちが、「違和感」を抱いたときは、喜ぶべきときなのです。違う考え方、違う振る舞い方、違う存在がそこにあるという喜びを覚えなくてはいけないのです。自分の考えや常識に違和感を抱いたときが学ぶチャンスと考え、互いの違いを認め合い、違いを楽しむことが大切なのです。

 

「子育て」「人育て」「自分育て」 

 「子育て」。わが子を育てていくときに大切にしてほしいことは、日常生活の安心感です。

 「人育て」。これは、わたくしたち教員のためにある言葉だと思っています。子どもたちに、生きる力を身につけさせていくこと。知識だけではなく、仲間と一緒に生き抜く、ねばり強さを培っていくことが大切です。

 そして、大事なことは、「子育て」「人育て」に加えて、「自分育て」をしていくことです。これは、子どもたちと一緒に人生を楽しんでいくという気持ちをもつことです。少し肩の力を抜いて、もう少し「子育て」を、「人育て」を、自分自身の人生を楽しんでほしいと思います。

 わたくしたち夫婦も、これまで「子育て」「人育て」、そして「自分育て」を楽しんできました。みなさんも、「親」という字が表すように、木の上に立って見るぐらいの余裕をもって、親として、教員として、一緒に楽しみましょう。

 「子育て」を、「人育て」を、そして「自分育て」を!

 

分散会:「ともに育もう 豊かな心と 自分らしく生きる力を」

 女性部提案や講演を受けて、「自分らしく生きるとはどういうことか」「子どものために、親として教職員としてできることは」という観点で、グループ討議が行われました。

 自分らしく生きることに対しては、「人とのかかわりの中で、自分を見つめる時間が必要である」「小さい頃から一人ひとりの違い・多様性を認め合うことが大事である」などの意見が出されました。そして、目の前の子どもたちに対して、「見守る姿勢を大切にし、話をしっかり聴いて共感していきたい」「親と教職員がよい人間関係を築き、いきいきとした生活を送っている姿を見せていきたい」など、親として、教職員として、大人として、どうあるべきかを考える場となりました。
 

参加者の声 

  •  性別にかかわらず、自分の好きなことや多くの経験を通して、自分の力を生かすということを、子どもたちだけでなく大人も意識していくことが大切だと思いました。

  •  自分の子どもだけを見るのではなく、地域や学校、家庭がともに、「みんなの子ども」ととらえ、一緒になって子どもにかかわっていきたい。

  •  子どもたちが自分らしさに気付き、それを発揮するためには、互いにコミュニケーションを大切にするとともに、互いのよさを認め合うことが大事だと改めて感じました。

     

アピール採択

 最後にアピール採択委員により、集会アピールが読み上げられ、採択されました。この集会アピール文は、後日、県教育長にも提出しました。

集会アピール 

 子どもたちが夢や希望をもち、笑顔あふれる毎日を送ることができるために、わたくしたち大人は何ができるのでしょうか。

  わたくしたち愛知の母親と女性教職員は、「わが子・教え子を再び戦場に送るな!」のスローガンのもと、子どもたちの幸せと健やかな成長を願い、「愛知母と女性教職員の会」に集い、話し合いを通して考えを深めてきました。

  しかし、平和にかかわる国の情勢は、スローガンに込められたわたくしたちの願いとは逆行し、近隣国の不安定な情勢など危機的な状況にあります。わたくしたちは、改めて子どもたちと平和を守るという、母女運動の原点に立ち戻る必要があるのではないでしょうか。

 子どもたちは、一人ひとり無限の可能性を秘めており、その可能性を実現するために生まれてきました。しかし、さまざまな課題を抱える現代社会において、自分のよさが見出せなかったり、よりよい人間関係を築けなかったりする子どもがいます。また、自分に自信がなく、将来の夢をもてない子どもも少なくありません。そして、それは子どもたちだけでなく、子育てや将来などに不安や悩みを抱える大人も同じです。

  子どもたちは、目の前の大人の姿を通して、将来を見つめています。21世紀をになう子どもたちのために、男女がともに、互いを尊重し合い、自分らしく輝ける社会の実現をめざして、今こそ、ここに集うすべての大人たちが手と手をとり合い、支え合っていこうではありませんか。

           

ともに語り合いましょう

       夢と希望あふれる 子どもたちのかけがえのない未来を

 ともに育んでいきましょう

       豊かな心と 自分らしく生きる力を

 そして、築いていきましょう

       互いを 尊重し合う 笑顔あふれる社会を

 

 わたくしたちは、子どもたちの幸せと健やかな成長を願い、人と人とが互いに信頼し合い、ともに自分らしく輝き続けることができる社会の実現にむけて、明るい未来を築く、新たな一歩を確実にすすめていくことをここに誓います。

 

    2017年10月7日

  第64回 愛知母と女性教職員の会

 

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子どもの心とからだの健やかな成長をめざして- 「がん教育」 子どもたちにどう伝えるか -

2017/08/19

第36回 愛教組連合養護教員研究集会

 県内各地の女性部長と養護教員約300人の参加のもと、愛教組連合養護教員研究集会が開催されました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-『がん教育』 子どもたちにどう伝えるか-」をテーマに基調提案・意見交換・講演が行われ、学習を深めました。

内容 

基調提案:「養護教員をとりまく情勢と課題について」 

 

講演
【演題】「モデル授業の経験から学ぶ『がん教育』への感謝と期待 -医師として、患者として、子どもをもつ親として-」
【講師】順天堂大学大学院臨床薬理学教授 佐瀬 一洋先生

 

基調提案「養護教員をとりまく情勢と課題について」

 政令市への権限移譲に伴う組織改編により、2017年4月から、尾張・三河からなる愛教組と、名教組として新たな一歩をふみだした。しかし、これまでと同様に、尾張・三河・名古屋が一体となって県全体の教育などを推進していくことが何よりも重要であるという考えのもと、愛教組連合が結成された。愛知県と名古屋市では制度に違いがあるものの、子どもたち一人ひとりにきめ細かな対応をしたり、健康教育を充実させたりしていくために、養護教員の複数配置の拡大が必要な課題であることは共通している。今後も複数配置の拡大と養護教員にかかわる制度の拡充にむけ、ねばり強く取り組んでいきたい。

 講演会
【演題】「モデル授業の経験から学ぶ『がん教育』への感謝と期待 -医師として、患者として、子どもをもつ親として-」
【講師】順天堂大学大学院臨床薬理学教授 佐瀬 一洋先生

 

 

「がん教育」に取り組んだきっかけ

 医師として、「がん」の診断や治療を数々経験してきたが、いざ、自分が患者の立場となったとき、自分の子どもにどう伝えていくのかということについて、たいへん困惑した経験がある。わたくしが「がん」を患ったのは、長男が小学校1年生のときだった。ある日突然、親の髪の毛がごっそり抜けて、仕事に行かなくなったら、わが子はどう思うか。おそらく、何かを感じ取り、心配するだろうと思った。そこで、わが子にはきちんと伝えておくべきだと考えた。実際に伝えたことは、「病気になった」という事実と、それは「長男のせいではない」ということ、そして、「『がん』はうつる病気ではない」ということである。わが子は、その事実を自然に受け入れてくれた。客観的な事実をわが子に伝えておくことは、大切なことだと当時感じたことを覚えている。

 日本対がん協会の方に、そのエピソードを話した際に「がん教育」というものを教えていただいた。わたくしが「がん教育」にかかわることで、少しでも社会に恩返しができればと考えたことが、「がん教育」に取り組んだきっかけである。

 

学校における「がん教育」のあり方

 「がん」は、現行の学習指導要領において、小学校では体育(保健領域)の単元「病気の予防」の中で生活習慣病として位置づけられている。中学校においても、保健体育の「健康の保持増進」や「喫煙、飲酒、薬物乱用と健康」などの単元で取り扱われていることは同様であるが、「個人の健康を守る社会の取組(がん検診など)」という内容も示されている。一方、2012年に策定された「がん対策推進基本計画」には、「子どもに対して、『がん』や『がん患者』に対する正しい認識をもつよう教育することをめざす」「5年以内に、学校での教育のあり方を含め、健康教育全体の中で『がん教育』をどのように行うべきか検討し、教育活動の実施を目標とする」などと示された。また、2016年に改正された「がん対策基本法」には、「がん」そのものや「がん患者」に対する理解を深める教育をすすめていくことが示された。それらに伴い、文科省は、「がん教育」を小学校では2020年度から、中学校では2021年度から全面実施する方針を示している。

 

「がん教育」の実施にあたって

 学校教育においては、子どもたちに「がん」をはじめとした病気だけではなく、震災や貧困など、世の中にあるさまざまな困難を通して、自他の健康と命の大切さに気づかせていくことが大切である。また、自らを大切にしながら、困難に直面している人たちを思いやる心を身につけさせていくことも重要である。

 厚労省は、「『がん』そのものや『がん患者』という概念を教えましょう」としているが、学校においては、命や健康の普遍的な価値を教える1つの手段として「がん教育」を位置づけ、外部講師を活用しながらすすめていくことが大切なのではないか。

 多くの学校で質問されることは、「小児がん」で治療中の子どもがいたり、家族に「がん患者」がいたりした場合の配慮についてである。「がん」を患いながらも、言い出せない人たちもいることから、やはり配慮は必要である。配慮が必要であるということを子どもたちが理解していくためにも、「がん教育」は有効である。「がん」そのものや「がん患者」について理解を深めていく過程で、さまざまな配慮ができるようになっていくということが肝要なのである。

 

がん教育の未来と今後の課題

 「がん教育」のモデル授業の中では、「『がん』が身近な病気であること」「治療可能な病気になったとはいえ、まだ手強い病気であること」「病気について、正しい情報を身につけることが大切であること」の3つのメッセージに絞り込んで教えるようにしている。「がん教育」を通して、命と思いやりの大切さを学んでほしいという願いもある。

 現在は、男女ともに半数くらいが、「がん」になる可能性があるとされている。しかし、医学の進歩とともに感染症や心臓病など、人類は長い年月をかけてさまざまな病気を克服してきた。「がん」になりやすい時代になったとネガティブにとらえるのではなく、「がん」について考える余裕が出てきたというとらえ方をして「がん教育」に取り組んでいくとよいのではないか。

 そして、現場の教員だけですすめるのでなく、各自治体に「がん教育」のための協議会を組織して、医師会や患者団体など、さまざまな立場の人たちと学校関係者が話し合う場を設け、連携できる体制をつくった上で「がん教育」を一体となってすすめていくことが大切である。

 

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子どもたちのための教育改革を - 3.子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして-

2017/06/12

  進学を希望するすべての子どもたちの願いをかなえるためには、今後も入試制度の改善をしていく必要があります。
 また、子どもたちの多様な希望や個性に応じた、魅力ある高校教育の実現にむけた改革をすすめていく必要があります。

よりよい高校入試制度にむけて

(2016年度 愛教組による保護者の意識調査より)

魅力ある高校教育の実現にむけて

(2016年度 愛教組による保護者の意識調査より)

 

 

 

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を - 2.ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして -

2017/06/12

 愛知県では、国による小学校第1学年のほか、小学校第2学年、中学校第1学年において35人学級が実施されています。
 しかし、いじめや不登校、特別な支援や日本語教育を必要とする子どもたちへの対応など、学校現場には教育課題が山積しており、子どもたち一人ひとりにきめ細かな教育を行うことが大切です。
 そのためには、少人数学級の拡充や正規教員の定数増が必要不可欠です。
 すべての子どもたちにゆきとどいた教育を行うため、教育条件整備をいっそうすすめていく必要があります。

少人数学級のよさ

 

(2016年度 愛教組による教員の意識調査より)

 

              

(2016年度 愛教組による保護者の意識調査より)

 

学校現場で特に対応を必要としていること

  (2016年度 愛教組による教員の意識調査より)

少人数学級について望むこと

(2016年度 愛教組による保護者の意識調査より) 

 

 

 

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を - 1.「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして-

2017/06/12

 「生きる力」とは、基礎・基本の習得はもちろんのこと、今までに得た知識や経験をもとに、自ら課題を見つけ、判断し、行動する力、学ぶ意欲も含めた総合的な力です。
 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育を行うためには、学校・家庭・地域が今まで以上に強く手を携え、地域ぐるみの教育をすすめていく必要があります。

学校教育に望むこと

(2016年度 愛教組による保護者の意識調査より)

 地域ぐるみで子どもたちを育てるために

             

                                                                                                                                                         

(2016年度 愛教組による保護者の意識調査より) 

「学ぶ喜び・わかる楽しさ」を保障する教育をめざして

  • 子どもたちの健やかな成長を願い、子どもたちを中心にすえた職場ぐるみの教育実践に取り組んでいます
  • 家庭・地域でのふれあいを深める活動や子どもたちの体験活動の充実をはかっています
  • 保護者などの参加も得て、教育研究愛知県集会を開催し、より開かれた教育研究活動の推進につとめています

 

 

 

 

 

 

 

  1. 「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
  2. ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
  3. 子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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子どもたちのための教育改革を

2017/06/01

 愛教組は、これまでも子どもたちの健やかな成長をめざし、夢と希望あふれる教育の創造にむけて教育改革運動を推進してきました。学校現場では、人・自然・文化などとのかかわりを通して、さまざまな事柄に関心をもち、意欲をもって課題解決しようとする子どもたちの姿がみられるなど、教育実践の確かな成果があげられています。また、教育研究愛知県集会の特別集会や各地区における教育対話集会、教育実態総合調査などを展開し、教育課題の克服にむけた手だてなどについて保護者・県民との対話や共通理解につとめてきました。また、豊かな教育を創造する県民会議とも連携して、啓発活動を強化してきました。
 こうした取り組みの経過をふまえ、2017年度の教育改革運動については、これまで通り「子どもたちの健やかな成長をめざす取り組み」を中心にすえ、夢と希望あふれる教育の創造にむけて、保護者・県民・教育関係者とともに学校・家庭・地域との協働を見据え、それぞれの連携を引き続き強化し、地域ぐるみの教育改革をすすめていきます。
 そのために、以下の3点を教育改革運動の重点として掲げ、教育制度・教育内容の改革をはかる運動を強化していきます。

  
1.  「生きる力」を育むゆとりとふれあいのある教育の実現をめざして
2.  ゆきとどいた教育の実現にむけた学校・地域の教育条件整備をめざして
3.  子どもたちの希望を大切にし、学ぶ機会を保障する高校入試・高校教育改革をめざして

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地域と学校 ~ 守るべき公教育とは何か ~   (明星大学教育学部教授 樋口 修資先生)

2017/05/09

第34回教育改革拡大学習会

 第34回教育改革拡大学習会では、明星大学教育学部教授の樋口修資先生にご講演をいただきました。地域と学校が連携した教育課程編成にむけて、わたくしたちはどうあるべきかご示唆いただき、今後の教育改革の方向性などについて学習を深めました。

 講師 明星大学教育学部教授 樋口 修資先生 

       講師:明星大学教育学部教授  樋口 修資先生

 

地域と学校に関する課題

 市町村合併や児童生徒数の減少などにより、「学校統廃合」がすすんでいる。公立小中学校は、市町村の判断と責任のもとで設置されるものであり、国が小規模学校の統廃合を財政措置も含め政策誘導することは妥当ではない。あくまでも、子どもたちの教育条件を改善するという観点で、学校統廃合を含めた教育のあり方が検討されるべきである。

  「学校選択制」は、学校間格差と序列化を生み出すとともに、学校と地域との結びつきを弱め、地域に根ざした学校づくりを困難にするなど課題が多い。今日、地域に開かれ、地域に根ざし、地域とともにある公立学校教育の推進が求められている。そのためには、学校と地域が連携した教育活動の展開をはかるとともに、学校運営への地域の参画と責任を強化することが重要である。

  「義務教育学校」について、小中連携の教育の必要性は認められるものの、各学校種の機能と役割を減殺させる恐れがある。現行の小中学校制度を基礎において、連携した小中一貫教育をすすめるべきである。

 

守るべき公教育とは

  「教育を受ける権利」は、国民の生存権の文化的側面にかかわる権利である。地域や家庭の経済力の格差によることなく、全国いかなる地域にあっても、良質な公教育を国民の一人ひとりが等しく享受できるように公教育制度を運営していくことが、国・地方公共団体の共同の責任である。よって、公教育を安易に民間に委託したり、「平等で公正」な公教育に「競争と効率」をもち込み、学校間・地域間格差を招くような「改革論」を推進したりすることは、国・地方公共団体の責任放棄ともいえる。

 公教育の根幹をなす義務教育制度は、「地域とともにある学校」づくりをすすめることにより、効果的かつ適正な運営が担保されるべきである。公立義務教育諸学校は、地域に根ざし、地域に開かれ、地域に信頼される学校づくりを推しすすめることが肝要である。

 社会・家庭の格差と貧困が子どもたちの教育格差につながることがなく、子どもたちが等しく安心して学校生活を送ることができるよう、そして、公教育がより豊かな学びの場となるよう、教育条件整備のための「教育投資」が不可欠である。

 

「地域社会に開かれた教育課程」の実現を!

 学習指導要領は、全国的な教育の機会均等と水準の確保のために、すべての子どもたちに共通に履修させるべき内容の最低基準である。各学校は、それに加えて、子どもの発達段階や特性、地域や学校の実態に応じて、適切な教育課程をつくる。しかし、国は、新しい学習指導要領に、学習方法や評価のあり方、「○○教育」といわれるものを次々に盛り込んできており、このままでは学習指導要領の最低基準性が壊れてしまう恐れがある。学習指導要領の総則の冒頭に、各学校においては「適切な教育課程を編成するもの」と示されているように、各学校の創意工夫や裁量を、もっと尊重すべきである。

 地域社会に開かれた教育課程の実現をはかるため、社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、学校教育を通してよりよい社会を創るという目標をもち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくことが重要である。

 教育課程の実施にあたっては、地域の人的・物的資源を活用したり、社会教育との連携をはかったりすることで、学校教育を学校内に閉じることなく、めざすべきところを社会と共有・連携しながら実現することが重要である。

 

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スポーツ・文化的活動を通して地域で子どもを育てよう

2017/01/12

 スポーツ・文化的活動は、本来、生涯学習という観点から地域を主体として行われることが望ましいと考えます。

 しかし、現状は主に部活動によって行われています。そのため、当面は部活動の諸問題解消をはかるため、部活動における外部指導者のさらなる配置拡大などを含めたスポーツ・文化的活動のあり方を検討していきます。また、総合型地域スポーツクラブをはじめとした社会教育活動の充実を求めていきます。

子どもたちの願い

部活動外部指導者について

 文部科学省の委託事業として「運動部活動指導の工夫・改善支援事業」が実施されています。これを受け、愛知県は地域のスポーツ人材を、各校からの依頼に応じて外部指導者として配置しています。(その他、市町村の予算による配置もあります)

青年白書①

(2016愛教組青年部実態調査より)

総合型地域スポーツクラブについて

  •  身近な施設を拠点に、地域住民が主体的に運営します。
  •  複数の種目があり、年齢、興味・関心、技術レベルに応じて参加できます。
  •  ボランティア指導者から専門の指導者まで、子どもから高齢者までのさまざまな世代の会員のニーズに対応します。
  •  活動を通して世代間交流や友だちのネットワークが広がり、地域の教育力向上につながります。

青年白書②
                                                             (2016愛教組青年部実態調査より)

 総合型地域スポーツクラブは、2016年12月現在、愛知県では、54市町村中50市町村で132のスポーツクラブが活動しています。

 

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