子どもたちの健やかな成長を

子どもの心とからだの健やかな成長をめざして- 「がん教育」 子どもたちにどう伝えるか -

2017/08/19

第36回 愛教組連合養護教員研究集会

 県内各地の女性部長と養護教員約300人の参加のもと、愛教組連合養護教員研究集会が開催されました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-『がん教育』 子どもたちにどう伝えるか-」をテーマに基調提案・意見交換・講演が行われ、学習を深めました。

内容 

基調提案:「養護教員をとりまく情勢と課題について」 

 

講演
【演題】「モデル授業の経験から学ぶ『がん教育』への感謝と期待 -医師として、患者として、子どもをもつ親として-」
【講師】順天堂大学大学院臨床薬理学教授 佐瀬 一洋先生

 

基調提案「養護教員をとりまく情勢と課題について」

 政令市への権限移譲に伴う組織改編により、2017年4月から、尾張・三河からなる愛教組と、名教組として新たな一歩をふみだした。しかし、これまでと同様に、尾張・三河・名古屋が一体となって県全体の教育などを推進していくことが何よりも重要であるという考えのもと、愛教組連合が結成された。愛知県と名古屋市では制度に違いがあるものの、子どもたち一人ひとりにきめ細かな対応をしたり、健康教育を充実させたりしていくために、養護教員の複数配置の拡大が必要な課題であることは共通している。今後も複数配置の拡大と養護教員にかかわる制度の拡充にむけ、ねばり強く取り組んでいきたい。

 講演会
【演題】「モデル授業の経験から学ぶ『がん教育』への感謝と期待 -医師として、患者として、子どもをもつ親として-」
【講師】順天堂大学大学院臨床薬理学教授 佐瀬 一洋先生

 

 

「がん教育」に取り組んだきっかけ

 医師として、「がん」の診断や治療を数々経験してきたが、いざ、自分が患者の立場となったとき、自分の子どもにどう伝えていくのかということについて、たいへん困惑した経験がある。わたくしが「がん」を患ったのは、長男が小学校1年生のときだった。ある日突然、親の髪の毛がごっそり抜けて、仕事に行かなくなったら、わが子はどう思うか。おそらく、何かを感じ取り、心配するだろうと思った。そこで、わが子にはきちんと伝えておくべきだと考えた。実際に伝えたことは、「病気になった」という事実と、それは「長男のせいではない」ということ、そして、「『がん』はうつる病気ではない」ということである。わが子は、その事実を自然に受け入れてくれた。客観的な事実をわが子に伝えておくことは、大切なことだと当時感じたことを覚えている。

 日本対がん協会の方に、そのエピソードを話した際に「がん教育」というものを教えていただいた。わたくしが「がん教育」にかかわることで、少しでも社会に恩返しができればと考えたことが、「がん教育」に取り組んだきっかけである。

 

学校における「がん教育」のあり方

 「がん」は、現行の学習指導要領において、小学校では体育(保健領域)の単元「病気の予防」の中で生活習慣病として位置づけられている。中学校においても、保健体育の「健康の保持増進」や「喫煙、飲酒、薬物乱用と健康」などの単元で取り扱われていることは同様であるが、「個人の健康を守る社会の取組(がん検診など)」という内容も示されている。一方、2012年に策定された「がん対策推進基本計画」には、「子どもに対して、『がん』や『がん患者』に対する正しい認識をもつよう教育することをめざす」「5年以内に、学校での教育のあり方を含め、健康教育全体の中で『がん教育』をどのように行うべきか検討し、教育活動の実施を目標とする」などと示された。また、2016年に改正された「がん対策基本法」には、「がん」そのものや「がん患者」に対する理解を深める教育をすすめていくことが示された。それらに伴い、文科省は、「がん教育」を小学校では2020年度から、中学校では2021年度から全面実施する方針を示している。

 

「がん教育」の実施にあたって

 学校教育においては、子どもたちに「がん」をはじめとした病気だけではなく、震災や貧困など、世の中にあるさまざまな困難を通して、自他の健康と命の大切さに気づかせていくことが大切である。また、自らを大切にしながら、困難に直面している人たちを思いやる心を身につけさせていくことも重要である。

 厚労省は、「『がん』そのものや『がん患者』という概念を教えましょう」としているが、学校においては、命や健康の普遍的な価値を教える1つの手段として「がん教育」を位置づけ、外部講師を活用しながらすすめていくことが大切なのではないか。

 多くの学校で質問されることは、「小児がん」で治療中の子どもがいたり、家族に「がん患者」がいたりした場合の配慮についてである。「がん」を患いながらも、言い出せない人たちもいることから、やはり配慮は必要である。配慮が必要であるということを子どもたちが理解していくためにも、「がん教育」は有効である。「がん」そのものや「がん患者」について理解を深めていく過程で、さまざまな配慮ができるようになっていくということが肝要なのである。

 

がん教育の未来と今後の課題

 「がん教育」のモデル授業の中では、「『がん』が身近な病気であること」「治療可能な病気になったとはいえ、まだ手強い病気であること」「病気について、正しい情報を身につけることが大切であること」の3つのメッセージに絞り込んで教えるようにしている。「がん教育」を通して、命と思いやりの大切さを学んでほしいという願いもある。

 現在は、男女ともに半数くらいが、「がん」になる可能性があるとされている。しかし、医学の進歩とともに感染症や心臓病など、人類は長い年月をかけてさまざまな病気を克服してきた。「がん」になりやすい時代になったとネガティブにとらえるのではなく、「がん」について考える余裕が出てきたというとらえ方をして「がん教育」に取り組んでいくとよいのではないか。

 そして、現場の教員だけですすめるのでなく、各自治体に「がん教育」のための協議会を組織して、医師会や患者団体など、さまざまな立場の人たちと学校関係者が話し合う場を設け、連携できる体制をつくった上で「がん教育」を一体となってすすめていくことが大切である。

 

カテゴリー:子どもたちの健やかな成長を, 愛教組連合養護教員研究集会, 更新情報    

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