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第59次 教育研究愛知県集会

2009/10/31

1 国語教育 文学その他
作文その他
2 外国語教育
3 社会科教育 小学校
中学校
4 数学教育 算数
数学
5 理科教育 物理・化学
生物・地学
6 生活科教育
7 美術教育
8 音楽教育
9 技術教育
 
10 家庭科教育
11 保健体育 体育
保健
12 自治的諸活動と生活指導 小学校
中学校
13 能力・発達・学習と評価
14 特別支援教育
15 進路指導
16 教育条件整備
17 過密・過疎、へき地の教育
18 環境問題と教育
19 情報化社会の教育
20 読書・学校図書館
21 総合学習

基調報告より

 現在、各学校では子どもたちの健やかな成長を願い、日々教育活動に取り組んでいます。そして、ゆとりとふれあいの中で子どもたちに主体性・創造性を育み、自ら課題を見つけ、判断し、行動できる「生きる力」を身につけさせることをめざした実践研究がすすめられています。
 これまでの58次にわたる教育研究の中で、わたくしたちは夢と希望あふれる教育の創造をめざし、子どもたちを中心にすえた数多くの教育実践を積み重ねて きました。そして、教育研究活動の成果のまとめとして「各学校における教育課程編成への指針」を作成し、自主的な研究をすすめてきました。また、保護者へ の意識調査を実施し、今日的な教育課題を明らかにするとともに、各地域で教育対話集会や学習会を行い、保護者や地域の方々と意見交換をする中で、子どもた ちの「生きる力」を育む取り組みについての合意形成をはかってきました。そして、今後も、子どもたちの学ぶ喜び・わかる楽しさを保障するため、学校・地域 の特色を生かした主体的・創造的な教育課程編成について、さらに研究をすすめていく必要があります。
 さて、本年度より学習指導要領の改訂に伴う移行措置が実施されています。小学校では外国語活動が導入されたり、小中学校ともに学習内容と授業時数が増加 したりしました。その一方で、体験的活動や課題解決などを行うことができ、「生きる力」を育むために新設されたはずの「総合的な学習の時間」は縮減されて いることからも、今回の改訂が知識偏重教育への回帰につながるのではないかと懸念されます。
 このようなときだからこそ、わたくしたちは学習指導要領を大綱的な基準としてとらえ、よりいっそう主体的・創造的に教育課程を編成して、子どもたちの 「生きる力」の育成に力を注がなければなりません。また、めまぐるしく社会情勢がうつりかわる現代、そしてこれからの時代を生きる子どもたちにとって、 「基礎・基本」と「生活・社会で生きてはたらく力」の育成が重要であることを再認識し、すべての子どもたちのために学校・家庭・地域が連携を強化して、地 域ぐるみの教育をおしすすめていかなければなりません。
 今次の教育研究活動においても、ゆとりとふれあいの中で「わかる授業・楽しい学校」の実現をめざし、「学びの質を追究し、子どもたちの学ぶ喜び・わかる 楽しさを保障する教育課程編成活動をすすめる」「学校・地域の特色を生かし、人・自然・文化などとのかかわりを大切にした創意あふれる教育課程編成活動を すすめる」の2点を研究推進の重点として提起しました。わたくしたちがすすめる教育改革は、日々の教育実践を積み重ね、その中で成長していく子どもたちの 姿で示すべきだと考えます。各分科会においては、実践研究の報告をもとにして、活発な論議を展開するとともに、その成果を各単組・各分会にもち帰り、還流 をはかっていただくことを大いに期待します。
 また、本日の特別集会では、ゆたかな学びを通して育む「生きる力」の意義、それを育むための学校・家庭・地域のあり方について愛教組から提案します。そ の後、特別講演を行い、参加者のみなさまと意見交換をし、子どもたちのよりよい育て方をともに考え、共通理解をはかる場にしたいと考えます。
 最後になりましたが、この教育研究愛知県集会が愛知の教育のさらなる推進のため、そして何よりも目の前の子どもたちの健やかな成長のために、実り多いものとなることを祈念し、本集会開会にあたっての基調報告といたします。

分科会

国語教育(文学その他)

 どのような教材で、どのように読む力をつけさせるべきかについて、提案されたリポートをもとに、討論が展開された。討論では課題設定のあり方や自主教 材を選ぶ観点、書いたものをどのように評価するかなどについて話し合われ、説明的文章の段階的かつ系統的な指導の必要性や、目の前の子どもの実態とつけた い力によって自主教材を選ぶことの大切さが確認された。

国語教育(作文その他)

 表現の指導・言語の指導を通して、目の前の子どもたちの実態を見つめて、どのような子どもを育てるのか、文字言語・音声言語のよさを生かして、どのような 力をつけていくのかについて討論が展開された。文字言語の、記録として残すことで多くの人に伝えたり、あとで読み返したりできることなどのよさや、音声表 現の、伝える目的意識をもった取り組みが重要であることが確認された。

外国語教育

 「話すこと(会話)」「小学校外国語活動」「書くこと」「話すこと(スピーチ)・学び合い」という4本の柱立てで、子ども一人ひとりの学習意欲を高め、積極的にコミュニケーションをはかろうとする態度や能力の育成をめざした地道な研究実践が数多く紹介された。

社会科教育(小学校)

 子どもたちの追究意欲を高めるために、身近な地域の産業や事象を素材として活用し、調査・体験活動の時間を保障した上で発表の仕方を工夫した実践、地域で 活躍した先人の働きや身近な政治問題を、どう教材化し、どのような社会認識を養っていけばよいかという課題に取り組んだ実践などが報告された。討論では、 子どもたちの社会認識を身につけさせるための工夫などについて、熱心に話し合われた。

社会科教育(中学校)

 子どもたちが主体的に取り組む学習活動のあり方についての実践や、社会に対する見方・考え方を深める学習指導のあり方についての実践、身近な素材を教材化 して、地域社会の問題点を取り上げ、子どもたちに切実感をもたせた話し合いを単元の中心にすえた実践、学ぶ喜びを感じることができるような学習方法を工夫 したり、社会科としての基礎・基本を大切にしたりする実践などが多く報告された。

数学教育(算数)

 「わかる・できる指導の工夫」「学び合う力の育成」「思考力・判断力・表現力の育成」「活用力の育成」の4本の柱立てで、実践の報告や討論が行われた。ど の報告からも算数の学習において基礎・基本の定着に主眼を置き、子どもが「できた・楽しい」と感じる学習展開の様子がうかがわれた。討論では、聞く力をど のようにつけるか、自分の考えをどのように表現させるかなどについて話し合われた。

数学教育(数学)

 「確かな学力の定着」「数学的な見方・考え方の育成」「自ら学ぶ力・意欲の育成」「学習形態の工夫」の4本の柱立てで、実践の報告や討論が行われた。自ら 考え、意欲的に課題に取り組もうとする子どもの育成をめざす実践をはじめ、基礎・基本を定着させる実践、また、少人数指導やグループ活動を取り入れたり、 具体的操作活動を取り入れたりするなどの指導形態や指導方法を工夫した実践など、多岐にわたる実践が報告された。

理科教育(物理・化学)

 「子どもの発達段階をふまえた教育課程編成のあり方」「自然概念形成に有効な教材・教具の開発、指導の工夫」などの柱立てのもと、討論が行われた。科学的 な思考力を養う指導方法や理科の「基礎・基本」を定着させる指導方法についての意見が出された。また、問題解決学習や有意味受容学習のタイミングや必要性 についての意見も出されるなど、活発な話し合いが行われた。

理科教育(生物・地学)

 身近な自然に目を向けさせたり、かかわらせたりする実践、話し合いにより考えをつくり上げたり、根拠をもたせたりする実践、モデルを用いることで、子ども の理解を深めさせる実践などが報告された。討論では、「基礎・基本を習得し、活用につながる理科学習のあり方」「理科と総合学習の関連」「子どもの視点に 立った教材・教具の開発」「子どもたちに、実感を伴った理解をさせる理科学習のあり方」などについて活発な意見が出された。

生活科教育

 学校・地域探検やグループ活動などを通して人とのかかわりを深める取り組みや、継続的な飼育・栽培活動、人や自然とのかかわりを通して気付きの質を高める実践が数多く報告された。
 討論では、「価値ある単元構成のあり方」「身体表現の有効性」「他教科との具体的な関連方法」「気付きの質を高める手だて」などについて活発な意見が出された。

美術教育

 「子どもが思いや考えにもとづき、表現を探求できる題材や指導法の工夫」「美術教育で育てたい力の明確化」をもとに、実践報告と総括討論が行われた。アー トカードを取り入れた鑑賞や作品の工夫を発見し合う活動や、子どもどうしの鑑賞活動を制作に結びつける実践、思いや考えにもとづき、表現方法をゆたかにす る工夫についての実践が報告された。

音楽教育

 小学校低学年では、親しみやすい楽曲や、わらべ歌などに合わせて体の動かし方を工夫したり、グループで曲の場面や歌詞の意味を身体表現したりする活動が報 告された。小学校中学年では、リコーダーを使ったタンギング指導や身近なものを使った音づくりなど器楽の基礎・基本を身につけるための実践が報告された。 小学校高学年、中学校では、合唱指導におけるブレスコントロールや頭声的発声の基本を身につけさせる実践が多く報告された。

技術教育

 生活の中で技術科が果たす役割について体験的に学ぶ実践が多く報告された。材料と加工では、導入題材の工夫や技能向上へのさまざまな手だてによって、子ど も自らが生活に必要な知識や技能を身につける学習がすすめられた。エネルギー変換では、子どもの興味を引く作品製作や実験を取り入れたことにより、達成感 や充実感を感じ、課題解決学習を展開することができた。これらの実践をもとに、具体的な討論を行うことができた。

家庭科教育

 小中学校ともに、家庭科学習を通して、よりよい家庭生活をつくり出そうとする態度や、生活を高める実践力の育成をはかる工夫がなされた実践が多くみられ た。栄養士・栄養教諭、地域や外部講師とかかわった取り組み、6年生が1年生のためにお弁当をつくるペア学習を通して互いのかかわりを深める実践、技術科 と連携をとり、幼児が喜ぶ紙芝居をつくる実践などが報告された。

保健体育(体育)

 「体育でどのような子どもを育てるか、自ら考え行動する子どもをどう育てるか」を大テーマに、「学年に応じた体力向上と技能習得」「体育学習における仲間 とのかかわりで身につけさせたいこと」を研究主題として、発表・討論が行われた。討論では、技能習得のための指導のあり方や課題設定の方法、そして、各発 達段階において育てたい力などについて、活発な意見が出された。

保健体育(保険)

 「子どもが生活の主体となるための健康教育」をテーマに、さまざまな健康課題に対応した指導の方法や教材・教具を工夫した実践、保健学習や総合学習の取り 組み、体験活動を重視した実践などが報告された。報告を通して、健康に対する意識の高まりや健康課題を解決するための実践力が着実に育ってきている様子が 感じられた。

自治的諸活動と生活指導(小学校)

 自主的・実践的な態度を育てる学級や異学年集団、児童会での実践が多く報告された。また、個の違いを認め、互いのよさを認め合う活動を通して、温かい人間 関係を築き、互いに高め合う実践も多く報告された。こうした子どもたちが行うさまざまな活動のあり方や意義について討論をすすめるとともに、子どもたちの 実態をふまえた教員の支援のあり方について熱心な討論が展開された。

自治的諸活動と生活指導(中学校)

 人権を考える活動、奉仕活動、コミュニケーション能力を高める活動を中心にすえた実践から、子どもの主体的な活動が多く見られる学級活動、生徒会活動の実 践が報告された。これらの実践報告をもとに、教員の思いや連携、個々への接し方、生徒会活動の意義などについての討論が深められた。

能力・発達・学習と評価

 子どもの実態をしっかりととらえ、子どもの意欲向上をめざした取り組みや、子どもたちに必要な自己を実現する能力の向上をめざした実践、学び合う学習集団 づくりをめざした実践が報告された。子どもの意欲向上をめざした取り組みでは、課題の提示方法を工夫した実践が報告された。学び合う学習集団づくりをめざ した取り組みでは、学習形態や子どもどうしのかかわり合い方などを工夫した実践が報告された。

特別支援教育

 「ゆたかに生きるための力を育む」というテーマのもとにリポートが報告された。子どもの学習意欲を高めるために、教材・教具を工夫した実践、人とかかわる 力やコミュニケーション能力を高めるための実践、触覚や味覚、嗅覚など五感を働かせて取り組む体験活動の実践などが報告された。

進路指導

 中学校においては、主体的に自らの将来について考え、進路選択する力の育成をめざした実践、小学校においては、自己の生き方を見つめる力を育成しようとす る実践などが報告された。どの実践も、子どもたちの「生きる力」をどのようにして育成していくかという今日的課題をテーマにした内容であり、長期間にわた る計画を立て、取り組んでいる内容が多く報告された。

教育条件整備

 「子どもの学習権の保障をどうすすめるか」を主題に、安心・安全な学校づくりにかかわる環境整備、特別な支援を要する子どもたちへの指導にかかわる条件整 備、さまざまな教科指導にかかわる条件整備、学校不適応の子どもたちへの支援体制づくりにかかわる条件整備について報告された。安心・安全な学校づくりの ために、現状や問題点をアンケートによる調査報告によってまとめたリポートや、授業実践をもとに充実した学習指導を行うための方法や形態、問題点を探るリ ポートなどが報告され、熱心な討議が行われた。

過密・過疎、へき地の教育

 地域の素材や人材を総合学習や生活科・社会科など教科に取り入れることで有効に活用し、地域のよさを発見する実践、地域の人々とのふれあいを深める実践、 離島での小中連携についての実践などが報告された。へき地ならではの学校・家庭・地域のそれぞれのよさが生かされた取り組みやへき地校の抱える問題に真摯 に取り組む姿勢から、それぞれ特色ある学校づくりへの意欲が感じられた。

環境問題と教育

 学校の水使用量調査を通して問題点をとらえさせ、水資源を大切にする方法を工夫して取り組んだ実践、発電における問題に気付かせ、近未来の発電所のあり方 を考えさせることで、エネルギー問題に取り組んだ実践、自分のお気に入りのふるさと資源を選定・調査することで、地域の自然環境に目を向けさせ、自然環境 保護に取り組んだ実践などが報告された。

情報化社会の教育

 情報化社会を生きていくために、子どもたちの情報活用能力をいかに育成するかという実践が多く報告された。また、ICTを有効に活用して、子どもたちに とってわかりやすい授業をめざした実践も報告された。さらに、昨今、社会的に喫緊の課題となっている情報モラルの育成についての実践も報告された。

読書・学校図書館

 読書の楽しみを味わわせたり、読書習慣を身につけさせたりする読書指導の実践や魅力的な学校図書館にするための継続的な取り組みなどが報告された。朝の読 書を実践する学校が増え、学校全体で読書指導に力を入れている報告も多く見られた。また、本を読んだ後に、話の続きの創作活動や目標を立てて読書をすすめ ていくなど主体的に読書にかかわっていくユニークな実践も報告された。

総合学習

 地域とかかわり地域への愛着を深める実践、身近な自然とかかわり周囲の環境に働きかける実践、さまざまな体験活動を通して、学び方や生き方を高める実践、 食育・福祉など現代社会の今日的課題に取り組む実践、国際理解や外国語活動に取り組む実践が報告された。実践の内容は多岐にわたったが、どのリポートも子 どもの実態を的確にとらえ効果的に体験活動や探究活動を行うことで、めざす子どもの姿に迫っていく様子が報告された。

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創造しよう 夢と希望あふれる教育 -第59次

2009/10/31

 特別集会では、愛教組からの基調提案、前愛教組委員長の齋藤嘉隆さんを講師としてお招きしての特別講演、参加者のみなさまとの意見交換を行いました。
 愛教組からの基調提案では、ゆたかな学びを通して育む「生きる力」の意義、それを育むための学校・家庭・地域のあり方について提案しました。
 特別講演では齋藤さんから、子どもや教員をとりまく情勢についてお話をいただき、今後めざすべき方向性についてご示唆いただきました。
 意見交換の場では、保護者や教員、地域の大人としての立場から、それぞれが抱える課題や連携強化のために必要なことを明らかにしていきながら互いの理解を深め、子どもたちの健やかな成長のために、学校・家庭・地域が協働した教育活動の発展をめざすことを確認し合いました。

愛教組からの基調提案

 変化の大きな現代社会。この社会を生き、そしてこれからの社会を支えていく子どもたちに今求められている力は、「知識」や「技能」だけではありません。
 愛教組は、子どもたちに身につけてほしい「生きる力」を「今まで得た知識や経験をもとに、自ら課題を見つけ、判断し、行動する力、学ぶ意欲を含めた総合的な力」ととらえています。この「生きる力」を身につけるために、次の2つの力を育てることが特に重要と考えました。
 「子どもたちが学習をすすめていくために必要な、しっかりとした基礎・基本」
 「一人ひとりの子どもたちが学び方を学び、身につけた基礎・基本を活用していけるような、生活・社会で生きてはたらく力」
 わたくしたちはこの2つの力を身につけさせることを含んだ学びを「ゆたかな学び」と呼び、子どもたちを中心にすえた、実践及び研究をしています。

 では、しっかりとした基礎・基本を身につけるためには何が必要でしょうか。生きてはたらく力を身につけるためには何が必要でしょうか。
 わたくしたちが考える最も大切な前提の1つに、子どもたちに自分からすすんで学ぼうとする意欲をもたせることがあります。子どもたちがすすんで、そして実感を伴って知識や技能をしっかりと身につけていくよう、わたくしたちが学びの内容をよりよくしていくことを大切にしなければなりません。
 子どもたちが身近な地域の人々・自然・文化などと直接かかわりながら、学び方を学び、身につけた基礎・基本を活用して、身につけた力をより確実なものにしていくような学びが重要です。

 では、わたくしたち教員はどのようなことに取り組まなければならないのでしょうか。
 1つ目として「学びの質を追究する」ことがあげられます。受動的に知ったり、覚えたりするだけの知識が教え込まれてしまうような学びではなく、子どもが意欲をもち、自らすすんで取り組み、「学ぶ喜び」や「わかる楽しさ」を感じる学びが大切です。教育のプロとして、毎時間の授業において身につけてほしい力をよく考えて、子どもたちの学びの質を追究していかなければなりません。
 2つ目として「学校・地域の特色を生かす」ことがあげられます。地域には、かかわりを通してはじめて感じる人のぬくもりや教科書では味わえない本物のすばらしさや巧みさ、現在に伝えられ、また後世にも伝えたい歴史や伝統があります。子どもたちにとって身近な人・自然・文化などの中から、よりよい教材を見つけ出す努力が必要です。また、地域の特色を生かしたかかわりは、地域への愛着から子どもたちの意欲や思いを高め、自ら課題を見つけ、判断し、行動する力の育成につながると考えます。
 学ぶ喜び・わかる楽しさのある学びをつくるのに必要なのが、子ども一人ひとりがじっくりと考える時間の「ゆとり」と、人・自然・文化などとの「ふれあい」です。つまり、「ゆとりとふれあい」が必要なのです。

 子どもの健やかな成長のために、学校では「学びの質を追究し、子どもたちの学ぶ喜び・わかる楽しさを保障する教育課程編成活動をすすめる」「学校・地域の特色を生かし、人・自然・文化などとのかかわりを大切にした創意あふれる教育課程編成活動をすすめる」の2点を重点に教育研究活動を行うことが必要です。
 また、学校は子どもたちにとって「集団生活を通して社会性を身につける大切な場」でもあります。一人ひとりの子どもがゆとりをもって、人とかかわり合い、ふれあう中で社会性を身につけられる環境を整える必要があります。
 家庭ではどのようなことができるのでしょうか。
 まず、何と言っても基本的な生活習慣を身につけさせることがあるでしょう。あいさつ、身だしなみ、食事の仕方など、家庭生活を通して身につけることはとてもたくさんありますし、すべての生活の基本とも言えるでしょう。
 もう1つの家庭の重要な役割、それは子どもにとって安らぎの場であるということです。子どもたちは家を出ると友だちと話したり、笑ったり、勉強したり、運動したりするなど精一杯がんばります。子どもたちのあのエネルギーの源は、家庭にあるのではないでしょうか。子どもをあたたかく見守り、がんばりを認めてくれる家庭、ときには励ましも必要かもしれません。子どもたちに愛情を注ぎ込み、安らぎのある家庭であってほしいものです。
 地域はどのようなことができるのでしょうか。
 子どもたちに目標をもってもらおうと、地域のみなさんに協力していただいている活動の例として、中学生が行う職場体験学習があげられるでしょう。職場体験学習を終えた子どもたちは、たくましくなって帰ってきます。教室では学べない何かを子どもたちは身につけてくるのでしょう。
 地域の活動に参加することも子どもたちを変えていきます。学校では体験できない年齢が大きく異なる人とのかかわりを通して人とのかかわり方を学びます。子どもたちが社会人になるとき、その経験は必ず生きてくることでしょう。しかし、残念ながらそのような機会が減ってきているのも事実です。子どもたちに地域の一員としての自覚を促す、地域活動の充実も望まれるところです。

 愛教組は、子どもたちが地域の一員としての自覚をもち、学校・家庭・地域とともに人・自然・文化などとふれあいながら、「生きる力」を身につけることができるよう、学校現場からの教育改革を推進し、地域に根ざした教育課程編成活動をすすめていきます。

特別講演

 今、学校や教員をめぐる状況は、たいへん厳しいです。先生方の給料は減り、仕事内容は以前と比べて多岐にわたるものとなりました。世間の見る目も厳しくなり、服務上のこともたいへん厳しくなりました。
 先生方の立場は、専門性を発揮して、「やっぱり先生はすごいなあ」と子どもにも保護者の方にも信頼してもらえるようでなければなりません。そのためには、2つのことが必要と考えます。
 1つ目は、やはり教員が授業のプロとして、本当にわかりやすい、楽しい授業を行うことだと思います。2つ目は、子どもの心を理解できる先生方でないと、子どもたちに夢や希望を語ることができないと思います。
 今、この教育研究集会では1000人以上の先生方が、各分科会に分かれて勉強中です。それぞれ実践報告を持ち寄って、研修をしているのですが、先生方も自分を磨く場としてこの研究集会に参加をしていることを、ぜひ保護者のみなさんにもご理解いただきたいと思います。また、分科会の会場を覗いていただき、先生方がどのような実践交流をしているのかを見ていただきたいと思います。

 社会全体が変わり、企業全体の倫理がたいへん厳しくなってきました。一般的に社会で働いていらっしゃるみなさんは、サービスをする側、受ける側という関係の中で、特に厳しい環境にあります。
 学校の先生方も、そのような世の中の状況や厳しさなどをわからなければいけないと思います。そういった状況を共感していく中で、保護者の方とのさまざまな関係も改善していくのではないでしょうか。

 子どもたちの仕事、本分は何でしょうか。たぶん多くの方が、勉強だと思っているのではないでしょうか。
 最近の子どもたちは、本当によく勉強をします。しかし、長時間、難しい勉強をしていますが、勉強以外のことで頭を使わなくなったとも思います。
 日常生活のさまざまな場面で考えさせたり経験をさせたりするということは、とても大事なことだと思いますし、日常生活の習慣づけが、ひいては学力の向上にもつながってくると思います。
 ある方の次のようなお話を聞きました。ある日、自分の子どもが自転車に乗って10分かかる図書館に行きました。しばらくして、子どもから「勉強しようと思って用意していた問題集を家に忘れちゃった。持って来て」と電話がかかってきたそうです。さて、みなさんだったらどうされますか。その図書館までは車で3分、往復でも10分足らずで行けます。たいていの方は持っていかれるのではないでしょうか。
 その方は、このようなときにこそ、「自分で取りに来なさい」と言える保護者であってほしいとおっしゃっています。そう言われた子どもは「本当に嫌だ。お母さんは冷たい」と言うかもしれません。しかし、何年か経ったのち、「そういえばこんなことがあってさ、うちのお母さん、こういうことには本当に厳しくってさ」と、誇らしげに話すようになるとわたくしは思います。
 このような絶妙な感覚をもち、家庭における教育の機会を逃さない保護者の方って、本当にすばらしいと思いませんか。

 ゆとり教育について少しふれたいと思います。ゆとり教育の必要性が叫ばれた頃、学習指導要領が改訂され、指導内容も減りました。土曜日の授業もなくなりました。土曜日が休みになって「先生はいいね」と言われましたが、これは少し違うのです。労働時間そのものが減ったわけではないのです。むしろ、平日にやりきれない仕事を休日にやっている先生は、当時より増えたように感じます。
 ゆとり教育の象徴のように言われたものの1つに「総合的な学習の時間」があります。学校や子どもたちの実情に合わせて、何を題材にしてもよく、評価も数字で出す必要がありません。この「総合的な学習の時間」について、このようなことを言っている方がいます。「先生は自分の経験によるレシピをもっている料理人。自分が経験や勉強をして、自分なりのさじ加減でうまい定食をつくって子どもたちに提供してきた。それがある日、突然レシピや献立もなく、子どもの好き嫌いに合わせてうまい料理をつくることになった。材料は適当に地域や学校で探す。教科書はもちろんない。これが『総合的な学習の時間』だ」と言われるのです。
 学校現場では、外国語活動をしたり、学校行事を授業でアレンジしたり、環境教育をしてみたりしたのです。誰も食べたことがないからうまいのかまずいのかもわからない。そのような状況のなか、さまざまなことで指摘を受け、結果として新しい教育課程の中ではその時間が削られ、風前の灯にやがてなろうとしています。
 料理人として考えるのであれば、もう少し修行の時間やきちんと考える時間があったり、現場での内容の熟成を待ったりしてもよかったのではないかと思います。

 今、学校にはさまざまなものがもち込まれています。環境教育や外国語活動、道徳心の慣用、ボランティア活動などです。いろいろなことを学校を通じてやってはどうかという提言がされてきたのです。
 最初に申し上げましたが、先生は授業をきちんとやらなければならないのに、むしろそうではないところでエネルギーを使わざるを得ない状況も出てきてしまっているのです。
 時間も力も限られているわけですから、何か新しいものが入ってくると代わりに何か削らなければなりません。それは先生が子どもたちと話をする時間だったり、子どもたちどうしで外で遊ぶ時間だったり、とても大切だったものが、学校教育から少しずつなくなってきているのです。
 子どもたちのゆとり、それから学校全体のもっとゆったりした時間の流れを取り戻すために、わたくしたちはさらにがんばっていかなければと思っています。

 学校・家庭・地域の三者が力を合わせましょうと言われて久しくなります。しかし、未だに言われているということは、なかなか連携がすすんでいないことのあらわれだと思います。それは個々の責任ではなくて、社会の構造が大きく変わってくる中で、それぞれがそれぞれの力だけでは成り立たなくなってきたからだと思っています。
 連携をすすめるためには、2つのポイントが大事だと考えます。1つは正確な情報を伝え合うこと、もう1つは何か共通の目標をもつことです。
 今までうまくできてこなかったのは、共通の目標があまりに抽象的過ぎたからです。たくましい子どもをつくるとか、明るい子をつくるとか、何をするのかという具体性が見えてこない、そんな目標が多かったのではないでしょうか。ですから、例えばあいさつや環境美化のことなど、具体的な目標を学区、保護者、学校が話し合ってつくっていき、後は地域の実情に合わせていくことが、連携の第一歩になるのではないでしょうか。

 本日は働く仲間のみなさんもいらっしゃるので、そういった方々にもお話をしたいと思います。
日本では6歳未満の小さい子どもをもつお父さんが家事にかかわる時間は1日平均で48分だったそうです。フランスは2時間30分、スウェーデンは3時間20分。また、週に50時間以上働く割合は、日本は28%、フランスは6%、スウェーデンは2%です。
 企業の協力や働き方、生き方の見直しも、家庭教育にとても大きな影響があると思います。このことについても、ぜひご協力をお願いしたいと思います。

 子育てや教育は、損得で片付けようとするとさまざまな歪みが出てくるものです。多少効率が悪くてもゆったりと構え、穏やかに子どもに接していただいて、子どもたちの話に耳を傾ける。わたくしはそれが一番大事ではないかと思います。

 その子が幸せに人間らしく、人らしく生きる。未来を自分で開いていけるような、そんなおおもとの部分をつくってあげる。これが小学校や中学校、家庭での教育だと思います。そして、その礎をつくることが、わたくしたちが今、めざすべきことではないでしょうか。
 わたくしもわたくしなりの立場で一生懸命がんばりたいと思っています。保護者のみなさんや教育にかかわってみえる先生方、教育関係の行政のみなさん、あるいは働く仲間のみなさんも含めて、一緒に子どもたちを真ん中におき、子どもたちの健やかな成長のためにがんばっていきましょう。

意見交流会

保護者

 学校が勉強だけでなく、あらゆることを学ぶ場所であることは認識していますが、その上であえてお聞きします。親としては受験に適応できる学力を身につけてほしいと願うのも事実です。学習塾のようなテストに対応できる十分な力を備えることができるようにすることを学校教育の中で導入されるということをどのように思いますか。

齋藤さん

 塾は塾、学校は学校なので、それぞれ役割が違うと思います。1つ言えることは、塾はパーツの教育だということです。学校教育と塾とは、もともとめざすところが違うわけですから、別にどちらがよいとか悪いとかを論じても仕方がないと思います。それぞれがもち場を生かしてやっていけばよいと思います。

保護者

 先生方や子どもたちを見ていて、まったくゆとり教育になっていないと思います。むしろ本当にいっぱいいっぱいだと感じます。それを元に戻すことはできないのでしょうか。

教員

 さきほど、「ゆとりとふれあい」とありましたが、学習指導要領の改訂に伴う移行措置によって、学習内容が増加し、余裕もどんどんなくなってきている教育現場においては、どのようにゆとりを生みだしていくべきでしょうか。

愛教組教育部長

 子どもや学校、地域の実態に応じて教育課程を組み変えたり工夫したりすることにより、時間を生み出すことも1つの方法と考えます。学習内容が教科の枠をこえて扱えるのであれば、合科的に扱い、時間を生み出すことができるでしょう。また、知識・技能をしっかりと定着させるところ、じっくりと考えさせるところなど、学習内容によって取り組み方に軽重をつけることも有効でしょう。さらに、効率よくねらいに応じて学ぶことができるように教材の工夫をすることも大事です。わたくしたちが自主的で創造的な教育課程編成活動をすすめることも、子どもたちがゆとりをもってじっくりと学習に取り組むための1つの手だてになると考えます。

地域の方

 本来ならば、人を思いやる気持ちや感謝の気持ちなどは、地域の中で育てていくべきと思います。そのような中で、地域としては学校や子どもたちにどのようなことができるのでしょうか。

齋藤さん

 学校と家庭・保護者という段階での連携は比較的しやすいかもしれませんが、地域を含めた三者がどのように連携していくかとなると非常に難しいと思います。
 そこで、先ほども申しましたが、1つは地域ぐるみで取り組めることを見つけて、まずやってみることが大事ではないかと思います。さらに、地域の中で拠点になる場所や人も必要だと思います。1人でも2人でも、子どもたちのことや学校教育のことに関心をもっていただき、いろいろなところで応援していただくことが第一歩かと思います。

齋藤さん(まとめ)

 ゆとり教育の導入によって学力が低下した、子どもが勉強しなくなったとか、ゆとり教育になったから塾通いなどが増え逆にゆとりがなくなったとか、さまざまな見方や考え方ができるのですが、必ずしも直結しているとは思いません。もっと別のところで別の要因があるのではないでしょうか。
 社会全体の仕組み、保護者の方の働き方、核家族化の状況など、さらに多くの要因が複雑に絡み合う中で、時代を背景にして、家庭にも学校にも、子どもたちにもゆとりがなくなりつつあると思います。もっとダイナミックに社会的な背景や政治のあり方も含めて議論していく必要を感じました。
 それぞれの立場の者が尊重しあって子どもたちを育てていくのだという、根本のところにもう1回立ち返って、今後も力を合わせていきたいと思います。

カテゴリー:教育研究愛知県集会<特別集会>, 子どもたちの健やかな成長を    

21世紀をになう子どもたちのために - 育てよう いきいきと 自分らしく生きる力を -

2009/10/10

第56回 愛知母と女性教師の会

 県内各地から約270人の保護者と教員が集まり、子どもたちの健やかな成長と幸せを願い、「愛知母と女性教師の会」を開催しました。「両性の自立と平等教育」についての女性部提案と講演のあと、5つの分散会で「育てよう いきいきと 自分らしく生きる力を」をテーマに話し合いました。本年度も積極的に男性の参加を呼びかけ、参加者が増えたことにより、活発で充実した会となりました。

女性部提案「男女が自立して、ともに生きる力をどう育てるか」
-自分らしく生きることを考える実践を通して-

小学校5年生の実践
テーマ「互いのよさを認め合い、協力する中で、自分らしさを大切にできる子をめざして」

<めざす子ども像>

  • 自分や友だちの個性やよさを認め合うことができる子
  • 自分に自信をもち、自分らしさを発揮できる子

 一人ひとりに個性があることに気付いた子どもたちは、自分自身を改めて振り返っていろいろなことに気付いたり、もっと友達のことを知りたいという気持ちが出てきたりした。自分や友だちの個性を大切にしようとすることへの第一歩になったと思われる。また、自分の意見が否定されずに受け入れられるという安心感をもって話し合いに参加したことにより、友だちとの信頼感を強めたり、自分に自信をもつことにつながったりしたと考えられる。

参加者の声
  • 子どもたちの素直な意見が表れていたと思います。でもその中には、大人も忘れていたり、努力しなければいけなかったりする意見があり、考えさせられました。よく知っている友だちの違う面を見ることができる「私は私ゲーム」はおもしろいと思いました。(保護者)
  • 「お手伝い大作戦」など、継続して行う実践がよいと思いました。男子・女子と分けて考えてしまいがちな子どもたちにとって、性別ではなく、自分らしさや友だちの個性を認めることはよいと思いました。(教員)

講演の概要 「みんな違う顔、でも同じハート-自分らしく あなたらしく-」
講師 落語家 笑福亭松枝さん

1 字や言葉に潜む不平等

 このごろ、婦人代議士、婦人弁護士、婦人警官といった言葉は使いません。以前は、○○組合婦人部、○○協会婦人部というのがよくありました。今、婦人部というのはほとんどありません。女性部になっています。なぜ、「婦人」ではないのでしょうか。婦の字は、女偏に箒と書きます。掃除の掃も、手偏に箒と書きます。なぜ、女性ばかり掃除をしなければいけないのか、男性も箒を持ってください。それで「婦人」はやめようということになったのです。
 漢字はおもしろいです。女偏の漢字をあげてみてください。姉・妹・妙・嫁・好・嫌・如・妖・奴、妊娠・嫉妬は2文字とも女偏です。
 次は、男の付く漢字をあげてみてください。甥は男が付きますが、姪は女偏です。嫁に対しては婿ですが、婿は男偏ではなく女偏です。女偏の漢字は、80ほどあります。男の付く漢字は、ほとんどありません。なぜ、こんなに女偏の漢字が多くて、男が付く漢字が少ないのでしょうか。簡単です。漢字は男性が作ったからです。だから、好き・嫌い・嫉妬・妖しい、全部女偏が付いたのです。当時は男性が何をしても、別にどうということはないけれど、女性がいろいろなことをすると、ゴチャゴチャ言われたのです。
 女性だけの言葉というのがあります。例えば、初めて本を出したとき、「処女作ですね」と言われました。初めて船が航海することを処女航海、自分の生まれた国を母国、卒業した学校を母校、おかしいでしょう。それから、ご主人に死に別れた女性を、未亡人と言います。失礼ではないですか。未亡人と漢字で書いてみてください。あの家の奥さん、ご主人が亡くなって三年、まだ滅びていない。失礼でしょう。あるいは、妙薬・内助の功・乙女の恥じらい・老婆心、そういう女性に特定の役割を押し付けるような言葉には気をつけましょう。

2 「自分らしく」とは

 「自分らしく」ということを考えてみましょう。今、「自分らしく」生きている人間が多いから困っているのです。今は、「何をしているんだ」と言いたくなるような人が、「自分らしく」生きているということになっているのです。勘違いしているのです。「自分らしく」というのは、「自分」というものをはっきり理解した上でするものなのです。「自分」というものをバランスよく振り返ることができると、他の人を客観的に見ることができます。初めは「あいつは嫌な奴だなあ」「あいつはあんなことをしてドジな奴だなあ」など、他人の欠点・弱点だけが目につきます。しかし、振り返ると「自分もそういうところがあるなあ」「自分も仲間はずれになったり、いじめられたりしても仕方ない人間だなあ」というところから自分を理解し、そして人を理解し、人を許すということになるのではないでしょうか。社会全体では、大人よりも子どもの方が他人をよく見ることができる目をもっていると思います。

3 集まることの大切さ

 PTAを対象に講演をするとよく言われるのは、保護者会が空しいということです。役員さんしか集まってくれない。問題のある家庭の保護者に集まってほしいのに、集まってくるのは問題のない家庭の保護者。これでは何にもならないのではないか。保護者会は空しいものではないか。そんなことはないのです。集まることに意義があるのです。昔、権力者が、いつまでも権力を保持しよう、孫の代までこの権力を継続させようとして、支配している者たちに対して2つのことをしました。集会をさせないことと、教育を受けさせないことです。集会はそれだけ力があるのです。今は、大人が集まることが少ないのです。この学校はうまくいっているなというのは、はっきり分かります。一声かけただけで保護者が集まってきます。近所の人もどうぞ、と言ったら近所の人も集まってきます。集まるというのはすごい力なのです。無駄ではないのです。とにかく、人数が少なくても、何かあったら集まることが大事です。集まることはパワーです。あちらこちらの保護者会に行って、大勢集まってくれていると頼もしい、心強い気がします。
 わたくしも、孫が生まれたらかわいいと思うでしょう。しかし、その孫のことを思うと、今の世の中が心配で心配でたまらないのです。昔は物が乏しかったです。食べるのに精一杯でした。100年前に生まれた子ども、50年前に生まれた子ども、今生まれてくる子ども、その中で必ずしも今生まれてくる子どもが幸せではないような気がしませんか。本当に健全な教育や子育てを邪魔する物が多いです。大人が力を合わせて、日本の子どもたちのために、一生懸命やっていきたいと思います。

参加者の声
  • 「男女共同参画社会」とは、そんなに難しいことではなく、男女がともに理解し合い、許し合い、助け合える社会であり、そんな社会をめざしていけたらいいと思いました。(保護者)
  • 「自分らしく」は、気軽に使っている言葉です。子どもたちに「自分らしくやって」と言いながら、大人の勝手な理想像がその子らしさと思い込んでしまいます。その子らしさを見ることができる親でありたいと感じました。(保護者)
  • 自分らしく生きることと、自分勝手は違うと思いました。まず、ルールやマナーがあってこそだと思います。子どもたちへの指導でも活かしていきたいと思いました。(教員)
  • 楽しい落語でした。これからどんどん女の人たちが活躍できる場が広がって、気持ちよくいきいきと生きていける世の中になっていくと思います。(教員)

分散会
育てよう いきいきと 自分らしく生きる力を

 女性部提案や講演を受け、教員として、保護者として、21世紀をになう子どもたちのために何ができるかについて、5つの分散会に分かれて話し合いました。

  • 「いきいきと生きる」とは?
  • 「自分らしく生きる」とは?
  • 親として大人としてできることは?

参加者の声
  • 今、わたくしはPTA活動を楽しんでいます。人から必要とされ、自分を認めてくれているからです。今の自分の姿を見て、子どもも「自分らしさ」を感じることができるのではないかと思います。(保護者)
  • 地域の多くの大人で子どもを見て、声をかけたいです。PTAの会などで話し合って、大人たちが協力し合っていきたいと思います。(保護者)
  • 「自分らしく」というのは、わかってもらえる安心感がなければ出せません。一緒にいるグループの雰囲気づくりを大切にしていきたいと思います。(教員)

「これから私は!宣言」

 分散会での話し合いの後、意見交換をしながら得たことや思ったことを「これから私は!宣言」としてまとめました。 ここでいくつかを紹介します。

「これから私は!宣言」
  • 子どもに「あなたのいいところは、こんなところよ」と素直に伝えてあげたいと思います。喜びや自信を与えてあげることができる親でありたいです。(保護者)
  • 父親として、もう少し子どもと話し、子どもとかかわり、仕事よりも家族のことを考えて生きてみたいと思います。(保護者)
  • 多くの人たちとのかかわりやネットワークを大切にし、子どもたちをあたたかく見守ります。(教員)

集会アピール

 最後に、アピール採択委員により、集会アピールが読みあげられ、採択されました。 この集会アピール文を、11月19日、県教育長に提出しました。

集会アピール

 愛知の母親と女性教師は、「わが子・教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、子どもたちの明るい未来を願い、ともに歩んできました。そして半世紀にわたり、この「愛知母と女性教師の会」に集い、子どもたちの健やかな成長を願って話し合いを続けてきました。

 子どもたちは無限の可能性を秘めています。わたくしたち親と教師の願いは、子どもたちが未来に夢や希望をもち、瞳を輝かせて生きることです。しかし、残念なことに子どもたちを巻き込む事件や問題はあとを絶ちません。さらに、子どもたちだけでなく、心に悩みを抱え、不安な日々を送っている親や教師も少なくありません。

 子どもたちは目の前の大人の姿を見つめています。だからこそ、わたくしたち大人が、自分らしく輝きながら生きることが大切です。また、お互いのよさを生かしながら、支え合って生きる社会をつくっていくことも必要です。子どもたちの健やかな成長にむけて、母親と女性教師が、そしてすべての大人、地域が力を合わせ、子育てをしていきましょう。
 子どもたちが多くの人々とつながり合い、信頼し合い、ともに生きていくことができるよう、わたくしたち大人が手をとり合い、支えていこうではありませんか。

語り合いましょう
   子どもたちが生きる 未来の姿を

育んでいきましょう
   いきいきと 自分らしく生きる力を

築いていきましょう
   人と人とが手をつなぎ合い、お互いを認め合うことのできる社会を

 21世紀をになう子どもたちのために、人と人とが心を結び合い、ともに生きる社会を実現していくことをここに誓います。

2009年10月10日
第56回 愛知母と女性教師の会

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子どもの心とからだの健やかな成長をめざして - 教職員・家庭・地域との連携強化を通して -

2009/08/22

第28回 愛教組女性部養護教員研究集会

 県内養護教員と単組(支部)女性部長の参加のもと、愛教組女性部養護教員研究集会を開催しました。基調提案・意見交換を行った後、諸富祥彦さんからご講演いただきました。

基調提案

 本年度から導入された「健康診断実施に係る妊娠養護教員負担軽減措置」について、本年度の行使状況や課題をふまえ、引き続き関係機関に働きかけていきます。また、養護教員が子どもたち一人ひとりにきめ細かな対応をしていくためには、複数配置の拡大と既配置校の継続保障は重要なことから、その実現にむけ、引き続きねばり強く取り組んでいきます。
 今後も、養護教員として力量向上をめざして学習を深め、子どもたちの心と体の健やかな成長のためにがんばりましょう。

意見発表

  • 本年度新しく負担軽減措置ができ、本当によかったと思いました。わたくしが、切迫流産になったとき、保健主事が中心になって歯科検診などを代行してくださいましたが、申し訳ない気持ちでした。ぜひ、多くの方にこの制度を有効に活用してほしいです。
  • 4月中旬につわりがひどく体調を崩していたところ、校長から「妊娠養護教員の負担軽減措置制度を申し込んでみてはどうか」と提案されました。母体への負担が減ることに安堵をおぼえました。その後の産休・育休中も同じ方が講師をやってくださることになり、自分や子どもたち、学校のためにもこの制度を利用してよかったと実感しています。
  • 1日30人以上の来室者に対応しながら保健室が機能しているのは、複数配置だからこそです。養護教員に対して、よりきめ細かな執務が要求されている昨今、さらなる複数配置の拡大と正規教員による配置継続が必要です。

講演の概要 「養護教員だからこそできるチームで育てる子どもの心」
講師 明治大学教授 諸富祥彦さん

1 連携強化の会話の仕方

 ポジティブな言葉がよい連携をつくっていきます。関係を広げていくには、自分が聞きたいことを聞いたり、言いたいことを言ったりするのではなくて、相手の人が話したそうなことを質問していくことが、大きなポイントです。

2 チームワークにおける問題

 実は、チームワークの問題には、自分がどういうタイプなのか、そして周りの先生がどういうタイプなのかという相性の問題が背景にあることが多いのです。
 スクールカウンセラーの立場から言えるのは、養護教員との連携が命ということです。例えば、リストカットをしているとか、摂食障害・拒食症・過食症など、深刻な問題をかかえていそうな子どもを、養護教員がカウンセリングルームに連れて来てくれることがあります。5分くらい一緒に話をした後「じゃあ、あとは諸富先生とよろしくね」と言って笑顔で帰っていく先生は非常に連携しやすいです。逆に、カウンセラーと子どもの取り合いをするような先生は、非常に連携しにくいです。

3 カウンセリングマインド

 カウンセリングマインドとは、そばにいるとほっとできる働きといえます。少し力が抜けている感じ、安心感です。でも、この安心感を邪魔するのが、養護教員の忙しさです。ある養護教員に聞いたら、この10年で格段に書類の量が増えたとおっしゃっていました。そうなると、子どもたちのケアがあまりできなくなります。子どもたちと接する時間がとれません。これも養護教員の大きな悩みの一つです。いつも「忙しいオーラ」が出ていると、子どもたちは話しかけて来られなくなってしまいます。
 子どもと接する上でも、他の教員と接する上でも、やはり笑顔が必要だと思います。笑顔で子どもたちを迎えて、「どうしたの?」というように話しかける養護教員であってほしいと思います。これを一番実感したのは、子どもの保育園の送り迎えをしているときです。「お父さん、最近どうですか?」と、とにかく笑顔で語りかけてくれる保育園の先生に、何か子どものことで聞きたくなったり、相談したくなったりします。そのような先生が、他の先生ともうまく連携がとれるのだと思います。
 疲れていて、笑顔や「さわやかオーラ」を出せない日もあると思います。そんなときは、とりあえず明るいイメージのキャラクターに「変身」するのもよいと思います。

4 教育相談週間の持ち方

 子どもたちが相談する先生を選べる教育相談週間を、ぜひやっていただきたいと思います。悩みができたときに、「この先生だったら相談できるな」という関係づくり、リレーションづくりをしておくための時間、それが教育相談週間のもっている意味です。よもやま話でよいので10分くらい話をします。そうすると、いざというときに、「この先生なら」ということで、子どもは悩みが話せます。
 アンケートに先生全員の名前を書いておいて、「話をしてみたいな」と思う先生の名前を3人くらい選んでもらいます。特にこれをやってほしいのが、小学校です。小学校でこそ、教育相談週間は必要だと思っています。

5 校内での教育相談会・生徒指導部会のもち方

 非生産的な話し合いは、原因ばかりぶつける話し合いです。
 「原因はそこにあると思うのですが、とりあえず○○君のために、わたくしたちができることって、何があるのでしょうか?」と一言つぶやくと、急に前向きな話し合いになることがあります。カウンセリング心理学でいうと、ソリューション・フォーカスト・アプローチに立つ発想です。原因探しをやめて、できることから処方していきましょう。

6 弱音を吐ける職場づくり

 指導が困難な学校の校内研修に行った際、本当に楽しそうな雰囲気でした。「本当に辛くて、何度も辞表を用意しているのですが、先生どうしの雰囲気がよいので、何とかわたくしはもっているのですよ」とある先生が言われました。お互い弱音を吐ける職員室をぜひつくって、支え合っていってほしいと思います。

参加者の声
  • 講演は、全員が参加できる構成で、実践的でよかったです。たくさんの笑いの中に、連携の具体的なポイントを学ぶことができました。
  • ユーモアの中に核心があり、わかりやすく素敵なお話でした。一言一言が心にしみました。
  • 久しぶりにリラックスでき、心が開放されました。今後も、前向きに人とかかわっていこうという元気と勇気をいただきました。

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「モンスターペアレント」論を超えて -向き合う気持ちと共同性- (大阪大学大学院教授 小野田正利さん)

2009/05/12

~第26回教育改革拡大学習会より~

 第26回愛教組教育改革拡大学習会では、大阪大学大学院教授の小野田正利さんをお招きし、保護者と学校との正しい関係を築くことの必要性と、教育改革の方向性について学習を深めました。

保護者はモンスターではない

 2年ほど前から嫌な言葉が生まれました。「モンスターペアレント」。わたくしは「この言葉は絶対使ってはいけない」と一貫して言っています。「モンスター」とは、「化け物」という意味です。この言葉が急速に広まっていくことによって、全国各地で実に不必要な摩擦がいくつも起きています。まず、相手を「モンスター」だと考える姿勢は、態度に出ます。すると、まともに話ができません。それ以上に最大の問題は、教員の、保護者と向き合おうという気持ちが、しぼんでいってしまうということです。自分たちにも問題があったのに、そのことにまったく気づかなくなる。保護者の理不尽な要求のようであっても、実は教員のミスかもしれないし、今後の反省の糧にしなければいけないことかもしれないのに、そのことにまったく無反省になってしまう。それが一番怖いことなのです。

向き合う気持ちと共同性

 神戸のある中学校1年生の遠足でのことです。新幹線の新神戸駅に、8時半集合にしました。前の晩に子どもが、自宅で弱音を漏らしました。「わたしは8時 半に新神戸駅に行けるかしら」。これを聞いたときに、保護者がどういう行動をとるかが問題です。子どもの方を向くのか、学校の方を向くのかです。子どもの 方を向けば、「大丈夫。道に迷ったら人に聞けばいいの。親切そうな顔した人を選んでね」となります。そう言ってポンと肩を叩いて送り出せば、それを達成で きたときには、ほんのちょっぴりかもしれませんが、その子の自信へとつながっていきます。ところが、かわいそうだと思って学校の方を向くと、怒りの拳と なって、「どうして学校集合にしないの。安全は確保できるの。100%保障するの」となります。教員は、こういうふうに言われると、どうしてもその拳その ものを見てしまうことが多くなると思います。でもそれは間違いだと思います。一番重要な事柄は、どんな事実がこの拳を振り上げさせているか、拳とつながっ た根本に何があるか、ここを見て取ることができるかどうかということだと思います。それをぜひとも探してください。「うちの子どもが、電車に乗って一人で 新神戸駅に行けるかしら。学校の先生に聞いてみたい。相談してみたい」。そういう思いだって数%はあるはずなのです。しかし、どうしても学校に電話をする と、それが相談ではなく、怒りの拳になってしまう。それが今の時代なのだと思います。
 教育の目的は何かと問われたら、自立の自信をどう子どもにつけるかというところにあるだろうと思います。子どもを伸ばすことを考えませんか。ところどこ ろに教員と保護者がともに一致できる点があるはずだと思います。だとすると、ちょっと違った対応も可能になるかもしれません。
 教員は理屈で説明しようという傾向が強くあります。しかし、保護者には思いがあるのです。そこにはズレが生まれやすいです。それを自覚しておくだけで、 ずいぶん違った対応も可能になるのではないかと思います。やっぱり言うことから始まるのかも知れません。まず話しませんか。まず語りませんか。このことに 行きつくのだろうと思います。

教員に必要なこと

 生徒指導の問題も、いろいろあるかもしれませんが、明日は明日の風が吹きます。そう思って、よく寝て、すっきり起きて、学校に行って、誰かに会ったら 「おはようございます。みなさん元気ですか」と声をかけてください。子どもたちは、教員の姿を見ているのです。教員はモデルです。未来への希望の光なので す。教員にとって最も必要な資質は、はつらつとしていることだと思うのです。年相応のはつらつさを身につけていただきたいと思います。そして、定年まで元 気で。さらに、定年後も健康で。それを今日から胸に刻みながら、仕事を続けてほしいと思います。子どもたちは、教員が元気であることが、何より明日への活 力になります。その姿を見て、親は納得をするのです。悪循環の構図を好循環にするためのパイプは、教員がはつらつとしていることだと思います。

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各学校における教育課程編成への指針 -ゆたかな学びにむけて-

2009/03/01

各学校における教育課程編成への指針 -ゆたかな学びにむけて- PDF[9.1MB]

カテゴリー:新しい教育課程の創造を, 子どもを中心にすえた教育研究を    

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