子どもたちの健やかな成長を

21世紀をになう子どもたちのために - 育てよう いきいきと 自分らしく生きる力を -

2009/10/10

第56回 愛知母と女性教師の会

 県内各地から約270人の保護者と教員が集まり、子どもたちの健やかな成長と幸せを願い、「愛知母と女性教師の会」を開催しました。「両性の自立と平等教育」についての女性部提案と講演のあと、5つの分散会で「育てよう いきいきと 自分らしく生きる力を」をテーマに話し合いました。本年度も積極的に男性の参加を呼びかけ、参加者が増えたことにより、活発で充実した会となりました。

女性部提案「男女が自立して、ともに生きる力をどう育てるか」
-自分らしく生きることを考える実践を通して-

小学校5年生の実践
テーマ「互いのよさを認め合い、協力する中で、自分らしさを大切にできる子をめざして」

<めざす子ども像>

  • 自分や友だちの個性やよさを認め合うことができる子
  • 自分に自信をもち、自分らしさを発揮できる子

 一人ひとりに個性があることに気付いた子どもたちは、自分自身を改めて振り返っていろいろなことに気付いたり、もっと友達のことを知りたいという気持ちが出てきたりした。自分や友だちの個性を大切にしようとすることへの第一歩になったと思われる。また、自分の意見が否定されずに受け入れられるという安心感をもって話し合いに参加したことにより、友だちとの信頼感を強めたり、自分に自信をもつことにつながったりしたと考えられる。

参加者の声
  • 子どもたちの素直な意見が表れていたと思います。でもその中には、大人も忘れていたり、努力しなければいけなかったりする意見があり、考えさせられました。よく知っている友だちの違う面を見ることができる「私は私ゲーム」はおもしろいと思いました。(保護者)
  • 「お手伝い大作戦」など、継続して行う実践がよいと思いました。男子・女子と分けて考えてしまいがちな子どもたちにとって、性別ではなく、自分らしさや友だちの個性を認めることはよいと思いました。(教員)

講演の概要 「みんな違う顔、でも同じハート-自分らしく あなたらしく-」
講師 落語家 笑福亭松枝さん

1 字や言葉に潜む不平等

 このごろ、婦人代議士、婦人弁護士、婦人警官といった言葉は使いません。以前は、○○組合婦人部、○○協会婦人部というのがよくありました。今、婦人部というのはほとんどありません。女性部になっています。なぜ、「婦人」ではないのでしょうか。婦の字は、女偏に箒と書きます。掃除の掃も、手偏に箒と書きます。なぜ、女性ばかり掃除をしなければいけないのか、男性も箒を持ってください。それで「婦人」はやめようということになったのです。
 漢字はおもしろいです。女偏の漢字をあげてみてください。姉・妹・妙・嫁・好・嫌・如・妖・奴、妊娠・嫉妬は2文字とも女偏です。
 次は、男の付く漢字をあげてみてください。甥は男が付きますが、姪は女偏です。嫁に対しては婿ですが、婿は男偏ではなく女偏です。女偏の漢字は、80ほどあります。男の付く漢字は、ほとんどありません。なぜ、こんなに女偏の漢字が多くて、男が付く漢字が少ないのでしょうか。簡単です。漢字は男性が作ったからです。だから、好き・嫌い・嫉妬・妖しい、全部女偏が付いたのです。当時は男性が何をしても、別にどうということはないけれど、女性がいろいろなことをすると、ゴチャゴチャ言われたのです。
 女性だけの言葉というのがあります。例えば、初めて本を出したとき、「処女作ですね」と言われました。初めて船が航海することを処女航海、自分の生まれた国を母国、卒業した学校を母校、おかしいでしょう。それから、ご主人に死に別れた女性を、未亡人と言います。失礼ではないですか。未亡人と漢字で書いてみてください。あの家の奥さん、ご主人が亡くなって三年、まだ滅びていない。失礼でしょう。あるいは、妙薬・内助の功・乙女の恥じらい・老婆心、そういう女性に特定の役割を押し付けるような言葉には気をつけましょう。

2 「自分らしく」とは

 「自分らしく」ということを考えてみましょう。今、「自分らしく」生きている人間が多いから困っているのです。今は、「何をしているんだ」と言いたくなるような人が、「自分らしく」生きているということになっているのです。勘違いしているのです。「自分らしく」というのは、「自分」というものをはっきり理解した上でするものなのです。「自分」というものをバランスよく振り返ることができると、他の人を客観的に見ることができます。初めは「あいつは嫌な奴だなあ」「あいつはあんなことをしてドジな奴だなあ」など、他人の欠点・弱点だけが目につきます。しかし、振り返ると「自分もそういうところがあるなあ」「自分も仲間はずれになったり、いじめられたりしても仕方ない人間だなあ」というところから自分を理解し、そして人を理解し、人を許すということになるのではないでしょうか。社会全体では、大人よりも子どもの方が他人をよく見ることができる目をもっていると思います。

3 集まることの大切さ

 PTAを対象に講演をするとよく言われるのは、保護者会が空しいということです。役員さんしか集まってくれない。問題のある家庭の保護者に集まってほしいのに、集まってくるのは問題のない家庭の保護者。これでは何にもならないのではないか。保護者会は空しいものではないか。そんなことはないのです。集まることに意義があるのです。昔、権力者が、いつまでも権力を保持しよう、孫の代までこの権力を継続させようとして、支配している者たちに対して2つのことをしました。集会をさせないことと、教育を受けさせないことです。集会はそれだけ力があるのです。今は、大人が集まることが少ないのです。この学校はうまくいっているなというのは、はっきり分かります。一声かけただけで保護者が集まってきます。近所の人もどうぞ、と言ったら近所の人も集まってきます。集まるというのはすごい力なのです。無駄ではないのです。とにかく、人数が少なくても、何かあったら集まることが大事です。集まることはパワーです。あちらこちらの保護者会に行って、大勢集まってくれていると頼もしい、心強い気がします。
 わたくしも、孫が生まれたらかわいいと思うでしょう。しかし、その孫のことを思うと、今の世の中が心配で心配でたまらないのです。昔は物が乏しかったです。食べるのに精一杯でした。100年前に生まれた子ども、50年前に生まれた子ども、今生まれてくる子ども、その中で必ずしも今生まれてくる子どもが幸せではないような気がしませんか。本当に健全な教育や子育てを邪魔する物が多いです。大人が力を合わせて、日本の子どもたちのために、一生懸命やっていきたいと思います。

参加者の声
  • 「男女共同参画社会」とは、そんなに難しいことではなく、男女がともに理解し合い、許し合い、助け合える社会であり、そんな社会をめざしていけたらいいと思いました。(保護者)
  • 「自分らしく」は、気軽に使っている言葉です。子どもたちに「自分らしくやって」と言いながら、大人の勝手な理想像がその子らしさと思い込んでしまいます。その子らしさを見ることができる親でありたいと感じました。(保護者)
  • 自分らしく生きることと、自分勝手は違うと思いました。まず、ルールやマナーがあってこそだと思います。子どもたちへの指導でも活かしていきたいと思いました。(教員)
  • 楽しい落語でした。これからどんどん女の人たちが活躍できる場が広がって、気持ちよくいきいきと生きていける世の中になっていくと思います。(教員)

分散会
育てよう いきいきと 自分らしく生きる力を

 女性部提案や講演を受け、教員として、保護者として、21世紀をになう子どもたちのために何ができるかについて、5つの分散会に分かれて話し合いました。

  • 「いきいきと生きる」とは?
  • 「自分らしく生きる」とは?
  • 親として大人としてできることは?

参加者の声
  • 今、わたくしはPTA活動を楽しんでいます。人から必要とされ、自分を認めてくれているからです。今の自分の姿を見て、子どもも「自分らしさ」を感じることができるのではないかと思います。(保護者)
  • 地域の多くの大人で子どもを見て、声をかけたいです。PTAの会などで話し合って、大人たちが協力し合っていきたいと思います。(保護者)
  • 「自分らしく」というのは、わかってもらえる安心感がなければ出せません。一緒にいるグループの雰囲気づくりを大切にしていきたいと思います。(教員)

「これから私は!宣言」

 分散会での話し合いの後、意見交換をしながら得たことや思ったことを「これから私は!宣言」としてまとめました。 ここでいくつかを紹介します。

「これから私は!宣言」
  • 子どもに「あなたのいいところは、こんなところよ」と素直に伝えてあげたいと思います。喜びや自信を与えてあげることができる親でありたいです。(保護者)
  • 父親として、もう少し子どもと話し、子どもとかかわり、仕事よりも家族のことを考えて生きてみたいと思います。(保護者)
  • 多くの人たちとのかかわりやネットワークを大切にし、子どもたちをあたたかく見守ります。(教員)

集会アピール

 最後に、アピール採択委員により、集会アピールが読みあげられ、採択されました。 この集会アピール文を、11月19日、県教育長に提出しました。

集会アピール

 愛知の母親と女性教師は、「わが子・教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、子どもたちの明るい未来を願い、ともに歩んできました。そして半世紀にわたり、この「愛知母と女性教師の会」に集い、子どもたちの健やかな成長を願って話し合いを続けてきました。

 子どもたちは無限の可能性を秘めています。わたくしたち親と教師の願いは、子どもたちが未来に夢や希望をもち、瞳を輝かせて生きることです。しかし、残念なことに子どもたちを巻き込む事件や問題はあとを絶ちません。さらに、子どもたちだけでなく、心に悩みを抱え、不安な日々を送っている親や教師も少なくありません。

 子どもたちは目の前の大人の姿を見つめています。だからこそ、わたくしたち大人が、自分らしく輝きながら生きることが大切です。また、お互いのよさを生かしながら、支え合って生きる社会をつくっていくことも必要です。子どもたちの健やかな成長にむけて、母親と女性教師が、そしてすべての大人、地域が力を合わせ、子育てをしていきましょう。
 子どもたちが多くの人々とつながり合い、信頼し合い、ともに生きていくことができるよう、わたくしたち大人が手をとり合い、支えていこうではありませんか。

語り合いましょう
   子どもたちが生きる 未来の姿を

育んでいきましょう
   いきいきと 自分らしく生きる力を

築いていきましょう
   人と人とが手をつなぎ合い、お互いを認め合うことのできる社会を

 21世紀をになう子どもたちのために、人と人とが心を結び合い、ともに生きる社会を実現していくことをここに誓います。

2009年10月10日
第56回 愛知母と女性教師の会

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