子どもたちの健やかな成長を

子どもの心とからだの健やかな成長をめざして- 子どもの心を理解し、成長を促すよりよい支援のあり方 -

2016/11/15

第35回 愛教組女性部養護教員研究集会

 愛教組は、県内養護教員と単組(支部)の女性部長の参加のもと、愛教組女性部養護教員研究集会を開催しました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-子どもの心を理解し、成長を促すよりよい支援のあり方-」をテーマに基調提案・意見発表・講演会を行い、学習を深めました。

内容

 

基調提案:「養護教員をとりまく情勢と取り組みについて」

 

講演会
【演題】「子どもの心に本物の自信を!-心の心臓部としての保健室-」
【講師】臨床心理士 山口 力さん

基調提案「養護教員をとりまく情勢と取り組みについて」

 心の問題をはじめ、健康問題が多様化し、よりきめ細かな対応が求められている。複数配置校では、養護教員が協力して執務に当たることで、子どもに対応する時間が確保され、他の教職員や保護者とも連携した対応ができている。養護教員が一人ひとりの子どもにきめ細かな対応をしたり、健康教育を充実させたりしていくためにも、複数配置の拡大と養護教員にかかわる制度の拡充にむけ、今後もねばり強く取り組んでいきたい。

 

 講演会
【演題】「子どもの心に本物の自信を! -心の心臓部としての保健室-」
【講師】臨床心理士 山口 力さん

臨床心理士山口力さん

 

学校全体の心の健康にむけて

子どもたちの相談活動にかかわる上で気になるのは「専門家によるケアの必要度は高いが、相談意欲は低い子ども」である。そのような子どもたちは、「人が信じられない」「相談すると迷惑をかける」「悩んでいる弱い子だと思われたくない」などと思っている場合がある。今の子どもたちは自分の存在自体に自信をもてない子が多い。しかし、本当は自分を見てほしい、話を聴いてほしいと思っている。「あなたは必要な存在であり、相談すること自体は恥かしいことでも迷惑がかかることでもない」ということをいかに伝えていくかが大事である。そのための第一歩としてまず必要なことは、子どもたちの話をきちんと最後まで聴くことである。

 

今の子どもたちはどうして自信がないのか

 

長所

短所

A君

9個

1個

B君

1個

9個

 

 

 

 

さて、表に示したA君とB君とでは、どちらが自信があるのだろう。一見するとA君の方が自信がある子のように見えるが、人間の自信とはそうはいかない。A君がたった一個の短所を見ていて、B君がたった一個の長所を見ていたらどうだろうか。この場合、自信があるのはB君なのである。意識がどこにあるかでその人の自信のあるなしは決まる。今の子どもたちは自分の長所よりも短所やできない所を見ているから自信がなくなってしまう。わたくしたち親や教員が、子どもたちの長所や得意な所に気付かせていくことが大切である。

また、できるかできないかといった結果にとらわれず、とにかくただ一生懸命やればよいのに、どうしても結果が気になってしまう子もいる。それはわたくしたち大人のかかわり方によるところが大きい。他の子と比較して評価するのではなく、その子のよさやもち味を見ていくことが大切である。そして、今できることを一生懸命やる、それが結果ではなく「プロセスで生きる」という生き方である。本当の自信とは、何かがたくさんできるというような量(数)には関係ない。本当の自信とは結果ではなく、一生懸命というプロセスの中で育まれるものである。

 

レジリエンスがある人

「ありがとう」には二種類ある。一つ目は自分の外にあるものが入ってきたときに感じる「ありがとう」。例えば、何かをもらったり試験に合格したりするなど、外から得られるものに対する「ありがとう」。二つ目は自分の中にすでにあるものに対する「ありがとう」。例えば、着ている服や住んでいる家、また、人とのつながりなど、今自分自身の身の周りにすでにあるものに対する「ありがとう」。つまり、今ある当たり前に対する「ありがとう」である。この今あるものに対して感謝できる人は、自分にないものを見るのではなく、自分にあるものを見ているから、今の自分自身に満足している。自分に満足している人は、人を羨んだり、嫉妬したり、人の足を引っ張ったりするようなことはしない。だから、感謝ができる人は、実はレジリエンス(しなやかで折れない心)をもった人である。学校教育では、この今あるものに対する無条件の感謝を教えていくことが大切である。今あるものに対する感謝を教えることは、子どもの本物の自信を形成することであり、心の健康にとって最も大切なことである。

 

心の心臓部としての保健室

保健室は「心の心臓部」だと思う。心臓は体全体へ血液を送る重要な器官である。学校では、血液は情報であり、心の心臓部である保健室から学校全体へ情報がきちんと伝達されているかどうかが重要である。そして、保護者や地域とのつながりがしっかりとれているかどうかも大切である。血液がよく循環している学校は、雰囲気がよくなり、活気にあふれ、地域からも信頼されるようになる。

さらに、人が生きていくには酸素が不可欠である。酸素がなければどんな人も生きていけないように、愛がなければどんな子どもも自信がなくなり、自分を否定してしまう。だからこそ、保健室からもしっかりと温かい愛(酸素)を届けることが大切である。

そして、何より保健室の先生の笑顔が大切である。子どもが親に対して一番に望んでいること、それは、元気のない顔や不機嫌な顔で家にいるのではなく、温かい表情で笑っていてくれることである。これと同様に、保健室の先生も、やさしく穏やかな表情で一緒にいてくれたり、対応してくれたりすることで、子どもは安心し、それが子どもの自信にもつながっていく。単なる笑った笑顔ではなく、愛のある愛顔(えがお)。養護教員のみなさんがそういった顔で保健室にいることで、多くの子どもたちが温かい気持ちになり、心が育まれ、「ありがとう」の気持ちを大切にしながら生きていける。

 

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