みんなで教育改革を

地域と学校 ~ 守るべき公教育とは何か ~   (明星大学教育学部教授 樋口 修資先生)

2017/05/09

第34回教育改革拡大学習会

 第34回教育改革拡大学習会では、明星大学教育学部教授の樋口修資先生にご講演をいただきました。地域と学校が連携した教育課程編成にむけて、わたくしたちはどうあるべきかご示唆いただき、今後の教育改革の方向性などについて学習を深めました。

 講師 明星大学教育学部教授 樋口 修資先生 

       講師:明星大学教育学部教授  樋口 修資先生

 

地域と学校に関する課題

 市町村合併や児童生徒数の減少などにより、「学校統廃合」がすすんでいる。公立小中学校は、市町村の判断と責任のもとで設置されるものであり、国が小規模学校の統廃合を財政措置も含め政策誘導することは妥当ではない。あくまでも、子どもたちの教育条件を改善するという観点で、学校統廃合を含めた教育のあり方が検討されるべきである。

  「学校選択制」は、学校間格差と序列化を生み出すとともに、学校と地域との結びつきを弱め、地域に根ざした学校づくりを困難にするなど課題が多い。今日、地域に開かれ、地域に根ざし、地域とともにある公立学校教育の推進が求められている。そのためには、学校と地域が連携した教育活動の展開をはかるとともに、学校運営への地域の参画と責任を強化することが重要である。

  「義務教育学校」について、小中連携の教育の必要性は認められるものの、各学校種の機能と役割を減殺させる恐れがある。現行の小中学校制度を基礎において、連携した小中一貫教育をすすめるべきである。

 

守るべき公教育とは

  「教育を受ける権利」は、国民の生存権の文化的側面にかかわる権利である。地域や家庭の経済力の格差によることなく、全国いかなる地域にあっても、良質な公教育を国民の一人ひとりが等しく享受できるように公教育制度を運営していくことが、国・地方公共団体の共同の責任である。よって、公教育を安易に民間に委託したり、「平等で公正」な公教育に「競争と効率」をもち込み、学校間・地域間格差を招くような「改革論」を推進したりすることは、国・地方公共団体の責任放棄ともいえる。

 公教育の根幹をなす義務教育制度は、「地域とともにある学校」づくりをすすめることにより、効果的かつ適正な運営が担保されるべきである。公立義務教育諸学校は、地域に根ざし、地域に開かれ、地域に信頼される学校づくりを推しすすめることが肝要である。

 社会・家庭の格差と貧困が子どもたちの教育格差につながることがなく、子どもたちが等しく安心して学校生活を送ることができるよう、そして、公教育がより豊かな学びの場となるよう、教育条件整備のための「教育投資」が不可欠である。

 

「地域社会に開かれた教育課程」の実現を!

 学習指導要領は、全国的な教育の機会均等と水準の確保のために、すべての子どもたちに共通に履修させるべき内容の最低基準である。各学校は、それに加えて、子どもの発達段階や特性、地域や学校の実態に応じて、適切な教育課程をつくる。しかし、国は、新しい学習指導要領に、学習方法や評価のあり方、「○○教育」といわれるものを次々に盛り込んできており、このままでは学習指導要領の最低基準性が壊れてしまう恐れがある。学習指導要領の総則の冒頭に、各学校においては「適切な教育課程を編成するもの」と示されているように、各学校の創意工夫や裁量を、もっと尊重すべきである。

 地域社会に開かれた教育課程の実現をはかるため、社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、学校教育を通してよりよい社会を創るという目標をもち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくことが重要である。

 教育課程の実施にあたっては、地域の人的・物的資源を活用したり、社会教育との連携をはかったりすることで、学校教育を学校内に閉じることなく、めざすべきところを社会と共有・連携しながら実現することが重要である。

 

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