子どもを中心にすえた教育研究を

第69次教育研究愛知県集会

2019/10/27

  10月26日、保護者と教員、働く仲間、約1600人の参加のもと、第69次教育研究愛知県集会が開催されました。
  全体会の後には、教育研究活動の目的や変遷、実践報告について概要説明が行われました。
  また、26の分科会では、子どもたちを中心にすえた実践報告と活発な討議が行われました。

 

 

基調報告より

分科会

1.語教育文学その他作文その他)
2.
外国語教育
3.
社会科教育小学校中学校
4.数学教育算数数学

5.理科教育物理・化学生物・地学
6.生活科教育

7.美術教
8.音楽教育
9.技術教育
10.家庭科教育
11.保健体育体育保健
12.自治的諸活動と生活指導小学校中学校
13.能力・発達・学習と評価
14.特別支援教育
15.進路指導
16.教育条件整備
17.過密・過疎、へき地の教育
18.情報化社会の教育
19.読書・学校図書館

20.合学習

 

基調報告より 

 これまでの68次にわたる教育研究において、わたくしたちは夢と希望あふれる教育の創造をめざし、子どもたちを中心にすえ、それぞれの学校・地域の特色を生かした、自主的・主体的な教育研究活動を着実に積み重ねてきました。また、保護者への意識調査を実施し、今日的な教育課題を明らかにするとともに、各地域で教育対話集会などを行い、保護者や地域の方々と意見交換をする中で、子どもたちの「生きる力」を育む取り組みについての合意形成をはかってきました。そして、各学校では子どもたちの健やかな成長を願い、日々教育活動に取り組んできました。 

 さて、現在、「教育再生実行会議」から出された過去の提言を受け、教育改革が推しすすめられています。学校現場では、「特別の教科 道徳」や「外国語教育」「プログラミング教育」などへの対応が、今まさにすすめられています。子どもの実態や学校現場の意見をふまえた十分な議論がされることのない、中央からの一方的かつ拙速な教育改革は、子どもたちや学校現場に大きな混乱をもたらしています。また、学習内容や授業時数の増加により、子どもたちのゆとりが奪われるばかりか、子どもたち一人ひとりと向き合う時間を確保することも難しくなり、ゆきとどいた教育が十分に行えなくなることが危惧されます。子どもたちに必要な力は、自ら課題を見つけ、主体的に判断し、行動できる「生きる力」であり、それは、ゆとりとふれあいを保障する教育課程の中で育んでいくべきものであると考えます。 

 わたくしたちは、あくまでも学習指導要領を大綱的基準としてとらえ、未来を担うすべての子どもたちのために夢と希望あふれる教育を創造する取り組みを継続し、学校現場からの教育改革を推進していかなければなりません。そのためにも、基礎・基本の確実な定着はもちろんのこと、子どもたち一人ひとりが学ぶ意欲をもち、自らすすんで取り組む、より質の高い学びを大切にしていかなければなりません。また、人・自然・文化などとかかわり合い、地域に根ざした体験活動を中心にした学習を構築し、学校・家庭・地域の連携をよりいっそう強化し、協働して、地域ぐるみの教育を推しすすめていかなければなりません。 

 今次の教育研究活動においても、ゆとりとふれあいの中で「わかる授業・楽しい学校」の実現をめざし、「学びの質をより追究するとともに、子どもたち一人ひとりの意欲を大切にし、学ぶ喜び・わかる楽しさを保障する教育課程編成活動をすすめる」「学校・地域の特色を生かし、家庭や地域社会と協働をはかりながら、人・自然・文化などとのかかわりを大切にした創意あふれる教育課程編成活動をすすめる」の2点を研究推進の重点として提起しました。わたくしたちがすすめる教育改革は、日々の教育実践を積み重ね、その中で成長していく子どもたちの姿で示すべきであると考えます。各分科会においては、実践研究の報告をもとに、活発な議論を展開するとともに、その成果を各教組・分会に持ち帰り、還流をはかっていただくことを大いに期待します。 

 また、本日の全体会の後には、各分科会会場で行われている研究発表や討議の様子をみなさま方に参観していただきたいと思います。愛知県内の優れた教育研究にふれていただくことで、本日ご参集のみなさまとよりよい教育についてともに考え、共通理解をはかる場にしたいと考えています。 

 最後になりましたが、この教育研究愛知県集会が愛知の教育のさらなる推進のため、そして何よりも目の前の子どもたちの健やかな成長のために、実り多いものとなることを祈念し、本集会開会にあたっての基調報告といたします。

 

分科会    

国語教育(文学その他)

 説明的文章6本と、文学的文章16本のリポートが報告された。目の前の子どもたちの実態を見つめた価値ある実践が多く、どのように読む力をつけるべきかについて、報告されたリポートをもとに討論が展開された。 

国語教育(作文その他)

 作文(綴り方)の教育9本と、言語の教育3本、音声表現の教育10本のリポートが報告された。子どもたちの実態を見つめ、どのような子どもを育てるのか、文字言語・音声言語のよさを生かして、どのような力を育てていくのかについて討論が展開された。

外国語教育 

 「子どもの意欲を高める授業のあり方」「子どもの思考力・判断力・表現力を高める授業のあり方」「子どもの学びをつなげる授業のあり方」の3つを討論の柱に、小グループによる発表と討論が行われた。その後、各グループで設定された「全体討論への問題提起」をもとに、全体での討論と意見共有が行われた。
 3つの小グループでは、新学習指導要領の実施を見据えた中学校の実践や、Can-doリストを設定し、具体的な到達度目標を明らかにして生徒の力を育てる小学校の実践などが報告された。子どもたちがお互いにかかわり合いながら、主体的に学習活動に取り組むための手だてが数多く報告され、活発な討論が行われた。 

社会科教育(小学校)

 地域素材の教材化や、他者とかかわる学習を取り入れることによって、社会的事象を自分事として的確にとらえ、よりよい社会の実現に向けた社会参画力を育む実践が報告された。討論では、根拠をもとにした話し合い活動を通して育てたい力や、社会参画する力を育成するために必要な社会認識について熱心に話し合われた。

社会科教育(中学校)

 20本のリポートが報告され、質疑や討論が活発に展開された。
 地域ごとのよさや課題を生かし、子どもたちに自分事として考えさせる実践や、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、思考ツールを活用しながら学びを深める実践などが多く報告された。 

数学教育(算数)

 「学び合う力の育成」「主体的な学び」「わかる・できる指導の工夫」「思考力・判断力・表現力の育成」の4つの柱立てで、実践の報告が行われた。
 学習形態を工夫し、子どもたちが学び合う姿をめざした実践、子どもたちが主体的にかかわるように教材を工夫した実践、わかる喜び・できる楽しさを実感させるための手だてを工夫した実践などが報告された。どの報告も子どもを中心にすえ、子どもの力をのばしたいというねらいを感じるものであった。

 数学教育(数学)

 「主体的・対話的な学び」「思考力・判断力・表現力の育成」「学び合う力の育成」の3つの柱立てで、実践の報告や討論が行われた。数学的活動を通して、子どもの自主性を引き出した実践をはじめ、自分の考えを深めることや、表現する力を高める子どもの育成をねらいとした実践、グループ学習やペア学習などの学習形態を工夫した実践など、多岐にわたる実践が報告された。 

理科教育(物理・化学)

 4つの内容領域の22本のリポートにもとづき、3観点のうち特に「自然の事物・現象を、量的・関係的な視点や質的・実体的な視点でとらえ、比較したり関係づけたりするなど科学的に探究する方法を用いて、多面的に考えさせる指導方法」と「子どもの理科的な資質・能力の把握や育成に役立てる評価の利用」に重点をおいた討論が展開され、活発な意見交換が行われた。

理科教育(生物・地学)

 遺伝子操作モデルを活用し、子どもの思考を深めた実践や、ワークシートを工夫し、子どもが主体的に実験に取り組めるようにした実践、実物を教材として取り入れ、自然を身近に感じさせる実践などが報告された。
 討論では、「身近な自然や生命の大切さを取り入れた単元構成の充実」や、「地学的な事物・現象を、時間的・空間的な視点でとらえ、多面的に考えさせる指導方法」の2つの観点を中心とし、活発な討論が展開された。 

生活科教育

 幼・保・小連携の充実をめざした実践、学校探検を通して、身近な人とのかかわりを深めた実践、栽培活動を通して、植物への思いや願いをもち、思考を深めた実践、町探検を通して地域の自然や人とのかかわりを深めた実践、身近な自然を生かした遊びやおもちゃづくりを通して、自然や人とのかかわりを深めたり、気付きの質を高めたりした実践、昔遊びを通して人とのかかわりを深めた実践など、地域の自然や身近な人々などを生かして、子どもたちが主体的に学習する実践が報告された。
 全体的な特徴として、積極的に対象とかかわり、子どもたちの思いや願いの実現をはかった実践や、仲間や身近な人々など他者とのかかわりを重視し、伝え合いや交流活動など対話的な活動を中心に位置づけた実践が多みられた。 

美術教育

 「美術教育を通して子どもたちに伝えたいこと」をテーマに実践報告や討論がすすめられた。
 総括討論では、目の前の子どもたちが抱えている悩みと、美術教育だからこそ育てることができる力について話し合うことで、本年度のテーマを深めることができた。制作の中でつまづきを感じている子どもたちの実態をよく観察して、問題解決に導く実践が報告された。また、新学習指導要領にもある「造形的な見方・考え方を働かせる」場面を題材の中でどのように位置づけるのか考えることができた。 

音楽教育

 仲間と主体的、対話的にかかわり合いながら表現の工夫をする実践が多く報告された。工夫を凝らした手だてによって変容していく子どもたちの様子がよくわかるものであった。子どもたちの実態をふまえ、めざす子ども像を明確にし、わかる楽しさ、できる喜びなどの経験を積み重ねていけるよう、さまざまな工夫をしていくことが大切であると確認された。
 討論では、「9年間の見通しをもった学習活動や指導の工夫」「他教科・領域、地域の特色と関連させた音楽教育のあり方」をテーマに話し合われた。各発達段階に応じた子どもたちに身につけさせたい力や、そのための手だてを工夫することの重要性が話し合われた。また、他教科と関連させた授業や、地域の祭りとタイアップした和太鼓や雅楽演奏を学ぶ授業などについて報告された。

技術教育

 子どもどうしの対話を生み出し、他者の考えから学び合う実践が多く報告された。材料と加工では、設計の見方・考え方を身につけるために、PDCAサイクルを繰り返した実践や、実際に販売されている製品から学ぶ実践が報告された。また、子どもどうしの対話の中から課題を解決しようとする実践が多く報告された。生物育成では、オリジナル堆肥づくりを通して課題を多面的にとらえる実践や、考えを広げていくワークシートを活用する実践が報告された。エネルギー変換では、基礎知識を活用する力を育成するために、歯車教材を用いた実践や多様な実物教材を用いた実践、ICT機器を活用した実践が報告された。情報では、ビジュアルプログラミング言語を用いた問題解決的な学習を繰り返した実践が報告された。 

家庭科教育

 「生活を追究する(住生活・消費生活)」「生活を追究する(食生活)」「現代的な生活課題に取り組む」「生活を追究する(衣生活)」「家庭や地域、人とのつながり」の5つの柱立てで、実践の報告が行われた。子どもの生活の中から課題を見つけ、学びを深めていく実践が多く報告された。
 総括討論では、「これからの家庭科教育~他教科・他領域とのかかわりから~」について討論が行われた。 

保健体育(体育)

 「体育でどのような子どもを育てるか、自ら考え行動する子どもをどう育てるか」を大テーマに、次の2点を研究主題として、発表・討論が行われた。
 (1)かかわり合いを大切にした授業づくり
 (2)学年に応じた体力向上と技能習得
 どのリポートも、仲間とのかかわり方や学年に応じた体力の向上や技能の習得に関して、さまざまな工夫のある実践が報告された。
 討論では、仲間とかかわり合うために有効な手だてや、子どもの発達段階に応じてどのような技能を習得させるべきかについて活発な意見交換がなされた。また、技能習得にむけた振り返りの大切さについて意見が出された。 

保健体育(保健)

 「子どもが生活の主体となるための保健教育」をテーマに、さまざまな健康課題に対応するため、教材・教具を工夫した実践、子どもの主体的な活動を中心とした実践、学校内・外との連携を深めた実践などが報告された。報告を通して、健康に対する意識の高まりや、健康課題の解決にむけた実践力が着実に育っている様子を感じることができた。 

自治的諸活動と生活指導(小学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマとして、活発に討論された。
 子どもたちがよりよい人間関係を築くために、学級や学年、異学年交流を通して活動した実践が多く報告された。また、子どもたちが自分自身を見つめ、自ら課題を見つけて取り組むことで、達成感や満足感を味わい、豊かな人間性を身につけた実践も報告された。さらに、学校・家庭・地域が連携して一人ひとりの子どもを支援した実践なども報告された。
 これらの実践報告をもとに、子どもたちの活動のあり方や意義、子どもたちの実態のとらえ方、それらをふまえた教員の支援のあり方について熱心な討論が展開された。 

自治的諸活動と生活指導(中学校)

 「たくましく生きる子どもを育てよう」をテーマに、活発に討論された。
 子どものやる気を引き出すために自己存在感を大切にした実践や、学校行事を生かしながら個と集団の力を高める活動、家庭・地域と連携した活動を通して、子どもの成長をめざした実践が報告された。
 これらの実践報告をもとに、子どもたちの実態をふまえた支援のあり方について議論が深められた。  

能力・発達・学習と評価

 話し合いやかかわり合いの場において意欲的に授業に参加できる工夫を取り入れたり、視覚的支援を活用したりしながら思考の揺さぶりを通して深い学びにつなげていく実践や、道徳の授業で教材・教具を工夫したり、指名の仕方によってどのような効果があるのか検証をしたりした実践、発問を精選し、主発問のみに絞った実践などが報告された。
  また、主体的な学びを実現するためにICT機器を活用したプログラミング教育の実践や、導入段階に提示する資料を工夫し、子どもたちの関心を高める実践、積極的に人とかかわり、自分の思いを伝え合おうとするための手だてを工夫した外国語活動の実践などが報告された。さらに、小学2年生の算数科「長さ」の単元において、思考スキルを使って、生きて働く技能を身につける実践や、実際の社会問題について考えさせることで多面的・多角的に社会事象をとらえ、自分の考えをより深めていく実践が報告された。

特別支援教育

 「豊かに生きるための力を育む」というテーマのもと、16本のリポートが報告された。
 子どもの教育的ニーズを的確に把握し、学習意欲を高めるような学習活動や教材・教具の工夫をした実践、人とかかわる力やコミュニケーション能力を高めるための実践、子どもたち一人ひとりの発達の状況に応じた自立活動の工夫をした実践、キャリア教育と関連した実践などが報告された。

進路指導

 基礎的・汎用的能力の育成に重点をおいた進路指導の実践が報告された。
 総合的な学習、特別活動の実践、さらには宿泊行事を活用するなど、さまざまな教育活動を通した実践が報告された。また、職場体験学習や職業講話、保育所訪問や高齢者福祉施設のボランティア活動など、地域と連携した取り組みが報告された。

教育条件整備

 「子どもの学習権の保障のために」を主題に、ICT教育にかかわる教育条件整備についての実践が報告された。
 ICT教育を行う上で、どの地区でも共通して課題となるのは、ハード面とソフト面の整備である。ICT機器の必要性を訴え、環境を整えていくとともに、教員がICTの活用力を高めていかなくてはならない。
 それらをふまえ、ICT機器が教員の業務を効率化したり、子どもの学習意欲を高めたりする有用性や、実際にICTの活用をする上でのICT支援員の必要性などについて報告された。

過密・過疎、へき地の教育

 どの学校の報告も、身につけさせたい力を明確にしているという点、小規模校での実践である点、地域の特性をどのように生かしていくかという点が取り上げられていた。
 小規模校では、少人数のため個別支援がしやすいという利点がある一方で、多くの人とかかわる経験が乏しく、多様な考え方にふれる機会が少ない傾向にある。また、気心の知れた仲間と過ごす時間が長いため、大人数の集団での活動になったときに不慣れな部分がみられることもある。自分の考えを明確にもち、他者と伝え合う活動を通して、自分を表現する力を高める実践が報告された。また、地域素材や人材を生かすことで、ふるさとに愛着をもつ実践が報告された。

情報化社会の教育

 10本のリポートのうち、7本がプログラミング教育に関するものになっており、学年に応じた実践やアンプラグドの方法を用いた実践が紹介された。その他にも、ICT機器をどのように活用するかについての実践や今後の情報化社会を見据えた情報モラルについての実践、ネット上のコミュニケーションに注目した情報モラルの実践などが報告された。

読書・学校図書館

 子どもたちが自ら本を手に取ることや情報を本や新聞から得ること、また、得た情報を目的意識をもって相手に伝えることをめざした実践が報告された。
 学校司書との連携を取る、成果物の掲示をして環境を整える、子どもどうしのつながりの中から本のよさに気付かせるという手だてによる実践が多く報告された。
 討論では、図書資料を使用した他教科とのかかわりのもたせ方や学校司書との連携の仕方、新聞の活用方法、蔵書の種類についてなど、活発な意見交換がなされた。

総合学習

 身近な事象や今日的課題をテーマとして取り上げ、子どもの探究的・協働的に学ぶ姿を期待した実践が多く報告された。課題をより自分事としてとらえるための探究課題との出会わせ方や地域素材やゲストティーチャーの効果的な活用の仕方、課題をもち、探究し続けることができるカリキュラムの工夫が紹介された。

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