子どもたちの健やかな成長を

子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-ひといちばい敏感な子(HSC)の理解と支援について-

2021/08/21

第40回 愛教組連合養護教員研究集会

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、愛教組連合養護教員研究集会をWEBにて開催しました。「子どもの心とからだの健やかな成長をめざして-ひといちばい敏感な子(HSC)の理解と支援について-」をテーマに講演を行い、学習を深めました。

 講演会
【演題】「ひといちばい敏感な子(HSC)の理解と支援について」
【講師】真生会富山病院心療内科部長  明橋 大二さん

HSCは、どのような子どもなのか

 アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏がHSC(Highly Sensitive Child=ひといちばい敏感な子)という概念を提唱した。HSCとは、病気や障がいではなく、もって生まれた気質が「ひといちばい敏感」な子どもたちである。約5人に1人の割合でみられ、人種で差はなく、男女の比率も同じである。また、発達障がいとは異なる。感覚的に過敏なところは似ているが、人の気持ちを汲むことが得意というところに違いがある。

 

HSCの4つの特徴

 HSCは「DOES」という4つの特徴があり、HSCの子どもたちは、次の4つの特徴すべてがそろっているといわれている。

・ Ⅾ(Depth)「物事を深く考える」
 慎重派のため、よく考えて行動するので、時間がかかることがある。また、人の気持ちや空気を読む能力があり、物事の目に見えない裏や背景を察知する力がある。

・ O(Over Stimulation)「過剰に刺激を受けやすい」
 他の子どもたちと同じ刺激でも、過剰に刺激を受けやすいため、刺激過剰で混乱を引き起こすことがある。これは、辛いことだけでなく、楽しいことでも起こる。

・ E(Empathy Emotion)「共感力が高く、感情反応が強い」
 例えば、叱られている子どもを見て、まるで自分が叱られている気持ちや辛い気持ちになるなど、鏡のように受け取ってしまう。一説によると、HSCの子どもたちは、ミラーニューロンという脳の神経線維の活動が、周りの子どもたちより活発だとされる。そのことが共感力の高さに関係しているのではないかといわれている。

・ S(Subtlety))「ささいな刺激を感知する」
 物の位置が変わるなど、小さな変化にすぐに気がつくことができる。災害の予兆などを感じ取ったりするときがある。また、体内の刺激にも敏感なため、体の痛みで不安になることもある。

 

HSCには刺激を求めるタイプの子どももいる

 HSCの中にも、おとなしい子どもたちと活動的な子どもたちがいる。刺激を求めるタイプの子どもたちをHSS(High‐Sensation Seeking)という。このHSSは、HSCとは独立した別の特性である。
 HSSかつHSCという子どもたちは、石橋を叩いて渡るタイプである。一見、活発で敏感そうに見えない子どもが意外と敏感だったというのは、HSSでHSCという場合が多い。周りからは前向きに活動しているように見えるが、実は傷ついていることがある。その上、傷ついていることをうまく言葉にできず、かんしゃくを起こしたり暴れたりすることがあるため、傷ついているのかもしれないと配慮して事情を聞くことが大切である。

 

HSCの育て方

 HSCは生まれつきのものなので、保護者の育て方は原因ではない。例えば、保護者が過保護に育てたから、臆病な子どもになったわけではなく、HSCという特性があったから、保護者が子どものペースを尊重した結果、慎重な子どもに育ったということである。「親の育て方が原因」と誤解しないことが大切である。
 また、HSCは自己肯定感を育むことが重要である。自己肯定感というのは、「自分は生きている価値がある」「必要な存在」「私は私でいいのだ」という気持ちのことをいう。勉強もしつけも大事であるが、最も大切なことは、心の土台となる「自己肯定感」を育てることである。「自己肯定感」を育てるのは、いくつになってもやり直しができる。しかし、HSCは、「しつけの影響を受けやすい」「自分に厳しい」「手のかからないよい子どもになりやすい」「集団生活が苦手」などの理由から自己肯定感が下がりやすい傾向にある。

 

自己肯定感を育てる6つの方法

① 子どもを信じる
 HSCはとても敏感に察知する子どもたちである。子どもたちが言ったことは、本当なのだと信じる。

② 共感する
 子どもたちの気持ちに寄り添い理解する。例えば、子どもたちが辛い思いをしたときには、子どもたちの辛さに共感の言葉を伝える。

③ スモールステップを設定する
 例えば100を10ずつに分けて、10できたら褒め、20できたらさらに褒める。スモールステップに分けることでたくさん褒めることができる。そうすることで、子どもたちのモチベーションが上がり、目標を達成できる。

④ 心の安全基地をつくる
 逃げ場所をつくっておく。HSCは退路を断たれると不安になるため、逃げ場所を用意することで、安心して実力を発揮できる。

⑤ その子のペースを尊重する
 大人と子どもたちが、二人三脚で寄り添うことが大事である。大人が子どもたちの歩幅、スピードに合わせるとうまくいく。子どもたちが行動するまで我慢し、子どもたちが自ら足を上げて動き出したら、コミュニケーションがスムーズにとれる。

⑥ 少し背中を押してみる
 大人から見てこれは絶対できると思うときは、少し背中を押す。できたらその子どもの大きな自信になる。しかし、無理強いはしない。また、支援者は、保護者を褒め、労うことも大事な仕事の一つとなる。保護者の自己肯定感を高めることも重要である。

 

すべての子どもたちへ

 HSCに必要な支援は、すべての子どもたちにとっても必要な支援である。みんなが辛いと感じていることを、ひといちばい敏感な感性によって教えてくれるのがHSCの子どもたちである。HSCへの配慮は、実はすべてが子どもたちの暮らしやすい学校づくりにつながっている。多様な子どもたちへの配慮は、すべての子どもたちを大事にすることとなり、誰もが生きやすい世の中につながる。

 

 

 

 

 

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