みんなで教育改革を

未来に生きる学力 -PISA型読解力が日本に及ぼした影響、点数学力から豊かな学力へ- (都留文科大学副学長 福田誠治さん)

2012/05/08

第29回教育改革拡大学習会

 第29回教育改革拡大学習会では、都留文科大学副学長の福田誠治先生にご講演をいただきました。いつの時代でも、子どもたちをとりまく現状をしっかりととらえ、これからの時代を担う子どもたちにどのような力を身につけさせるのかを考えていくことが必要です。今後わたくしたちが取り組むべき教育改革運動の方向性について学習を深めました。


講師:都留文科大学副学長 福田誠治さん

日本における学力論のこれまで

 1960年代から産業界を中心に知識偏重・詰め込み教育の問題点が指摘されるようになった。「知識があってもその活用の仕方がわからないようでは、これからの時代は困る」ということである。1985年の臨教審第一次答申では「これからの学校教育においては、基礎・基本の上に、創造性や論理的思考力、想像力などの考える力、表現力の育成を重視すべきである」と述べられている。このような考え方は、当時の文科省にも受け止められ「新しい学力」という概念が生まれてきた。いわゆる知識偏重・詰め込み教育ではない「ゆとり教育」である。そして2002年の総合学習や学校五日制を含んだ学習指導要領をもって「ゆとり教育」の仕上げとなるはずだった。しかし、1999年から、何をもって低学力なのかという根拠がない中で学力低下論が起きて「新しい学力」を育てるためにすすめてきた「ゆとり教育」への風当たりが強くなることとなった。

国際学力調査が明らかにした日本の学び

 OECDは「日本の子どもは、さまざまな科学分野においてすばらしい基礎知識を備えているが、知識を応用して課題を解決することはやや苦手なようである。また、勉強が好きではないという子どもの割合も多い」と指摘している。例えば、「落書き」について「落書きをしてはいけない」「広告が許されるなら落書きも許されるのではないか」という二つの意見を比べ、自分の考えを書くPISAの有名な問題で、日本の子どもの無回答の割合は、他国に比べて極めて高い。正答がわからないときは答えないという子どもの割合が多いことが、日本の教育が抱える課題である。

フィンランドの教育とは

 フィンランドでは「子どもたちは一人ひとり個性があり、学級もそれぞれ個性がある」という考えにもとづき、子どもや学級の実態に合わせた授業をしている。ゆえに、教科書にないことを教える場面もある。子どもたちは、友だちとの相対的な関係の中で自分の成績を位置づけるのではなく、成績の目標を自分の到達度で設定している。
 また、学校は学び方を学ぶ、知識のつくり方を学ぶ場所であるという考え方が根付いている。知識は一人ひとり違ってよい。その知識の量で競争する必要はない。それよりも、わからない問題があったときには、どうやって調べればわかるのかを知っていることの方が重要だと考えられている。

これからの教育への指針

 学力の問題は、社会全体で取り組んでいくべき課題である。日本の学びは、教科に孤立しがちで、人生との結びつきが小さいため、子どもたちは意欲的に学んでいない。また、テストのための勉強をすれば、テストが終われば忘れてしまうなど、学ぶ目的を間違えてとらえている子どもも多い。大切なのは、一人ひとりの子どもたちが社会で生きていく力を身につけることである。子どもたちに「自分のために学ぶ」ということを認識させるために、わたくしたち教員は学ぶ意欲を高めるための授業研究が必要である。

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